第九十九話 戦争責任について

山下 輝男


 メモランダムの一応の結節である百話では、戦争責任について考えたい。二巻の書籍の内容を紹介しよう。読売新聞社は、戦後60年の節目に当たり、渡辺恒雄主筆の提唱で「戦争責任検証委員会」を立ち上げて、日本はなぜ無謀な戦争に突入し、多大な犠牲を生まなければならなかったのか。日本人自らの手で責任のありか等を一年かけて検証した。戦争の資料、文献を渉猟し、当時の政治・外交史、戦史に詳しい専門家の諸氏からの教示、インタビューを総括して、「検証 戦争責任」として取りまとめ紙上で発表し、中央公論社から2006年7月刊行された 本「検証」は内外から大きな反響をよんだし、参考になる点が多々ある。


 先ず、その骨子を紹介しよう。「検証 戦争責任Ⅱ」の6章が、「昭和戦争の責任を総括する」と題され、第7章は「昭和戦争責任検証最終報告」となっている。この両章の項目を紹介する。尚、読売の名付けた昭和戦争とは、1931(S6)年の満州事変から1945(S20)年の終戦までの戦争全体を指し、戦争は、昭和の初期から全体の四分の一を占め、既に歴史の領域にもなっているので「昭和戦争」と呼ぶことにしたという。
『第6章 「昭和戦争」の責任を総括する
・満州事変 戦火の扉開いた石原、板垣  ・日中戦争 近衛、広田無策で泥沼突入
・三国同盟・南進 松岡、大島外交ミスリード・日米開戦 東条「避戦の芽」葬り去る
・戦争継続 連戦連敗を“無視”した東条、小磯 ・特攻・玉砕「死」を強いた大西、牟田口 ・本土決戦 阿南、梅津徹底抗戦に固執 ・原爆・ソ連参戦 東郷“和平”で時間を空費
 第7章 「昭和戦争」責任検証最終報告
・天皇、立憲制の枠遵守 ・東条首相に最大の責任 国際感覚欠き開戦
・近衛、軍部独走を許す ・広田、松岡、杉山、永野、小磯 指導層相次ぎ判断誤る
・暴走・軍官僚にも責任 政治に介入、国策ゆがめる ・和平の努力も存在 木戸、鈴木(貫)、東郷、米内ら ・米ソの戦争責任 ・検証「東京裁判」と一線を画す』


○ 土門周平氏の「参謀の戦争」あとがき「まとめにかえて」では ① 国家運営の準縄とも云うべき明治憲法的政治秩序が既に時代遅れ ② 日本に真のリーダーは不在 ③ 東条内閣発足以降は、最早抜き差しならぬ状況であった。と含蓄あることを述べている。
○ 中村粲氏の大著「大東亜戦争への道」では「大東亜戦争は結局自存自衛のための戦いだった。」と断じ、自虐史観を明確に否定している。小生も同様の認識であり、敗戦の責任を問うことはあっても、開戦の責任を問えるものだろうかと思わざるを得ない。
○ 支那事変を解決し得ずに日米(英蘭)に挑まざるを得なかった主たる責任は陸軍、身内の庇いあい
○ マスコミや政治家や官僚の責任も大である。軍の責任を免責する積りはないが・・
○ 100話まで書くと、日本的体質が随所に顔を出しているように思える。指導層までもその呪縛から逃れ得なかったように思える。大戦略構想力、国際性、リーダーシップ、科学的合理的精神、独善、精神主義偏重、不徹底な議論、政治家の軍事に対する無理解・偏見
○ 陸軍だけが悪者になっているが、果たしてそう言い切れるのか?冷静な分析が必要だ。大きな責任があるのを認めるのは吝かではないが・・余りにも一面的一方的過ぎないか?東条=ヒットラー的な論は明らかに可笑しい。
○ 東京裁判史観(自虐史観)とは違う観点からの戦争責任を考察することは今の日本にとって必須である。

(第九十九話 了)