海軍爺さんの 「これでいいのか?日本!!」
第17回 ハイテクとローテク ('09.12.25.)

海軍爺さん

 現在科学技術の進歩は目を見張るばかりである。勿論武器、兵器の進歩も全く同じである。俺が海軍時代でも、時々艦艇は大改造しつつ進歩して来たが、現在に比べると、そのスピードは緩やかであったが、兵器も、機器も、機関も、十分に時間をかけて練熟することが出来た。さらに各部署には掌長が居て、担当の武器なり、機器なりを熟知していて、いかなる故障も不具合も即座に処理する達人揃いであった。戦艦の射手は大事な目を守るために、新聞や本は読まず、目に悪いものは食べずに頑張っていた。幹部も同じで、名砲術長、名水雷長、名航海長と称される先輩方が艦隊の実力向上に貢献された。
  最近生起している諸事故を見ると、次の諸点が心配だ。
   ○経歴管理上の配員ミスか?
   ○部隊編成に欠陥があるのか?
   ○術科教育の不徹底か?
   ○幹部や曹士個人の素質の欠如か?
   ○これらの不具合が複合した結果なのか?
 最近SF司令官経験者のM君と話した際色々と貴重な示唆を受けた。
 防大採用試験の身体検査では視力0.1でOKだそうである、これには驚いた。俺達の頃は1.0以上で大半の合格者は2.0であった。もちろん俺も2.0以上で、現在も眼鏡なしである。0.1の当直士官などは夜間航海の際など、双眼鏡を使うよりレーダーに頼りすぎているのではあるまいか? 夜間など大事な場面では、必ず自分の目で確かめるのが船乗りの常識ではある。これらの対策として、先ず第一に視力の弱い者が使える双眼鏡を開発すべきであろう。接触事故で修理に45億とか9億とかを支出することを考えれば、光学兵器会社にその何分の一かを渡せば必ず開発できると思うし、この際コンパスなども一挙に解決したらよいだろう。
 空白のジェットパイロットで視力の弱い者には特別の眼鏡を使わせていると聞く。
 次に人事管理上そろそろその道の達人を作る事にしたらどうだろう。幹部全員が将や将補になれる訳ではないので、特技を発揮できそうな人材を選定してその道の専門家に育成すべきではないだろうか? そうすれば基礎的なローテクを充分修得した上で、最新のハイテクを活用できる人材が育つと思うが。今のままでは、充分なローテクの修得も不充分のまま、ハイテクを任され、それが中途半端であれば、砂上に楼閣を築くようなものではないか? 自分の実例を挙げるのは恐縮だが陸奥の甲板士官から駆逐艦雷の航海長になった際、航海計画等は陸奥の航海士の時やっていたので、心配なく処理できたが、水雷戦隊の襲撃訓練で暗夜最大戦速38ノットに増速すると艦尾波が大きくなり前艦から次第に離れて行く、1つの波を越さなければ常距離を維持できない。俺の頭より艦の方が進みすぎて四苦八苦していると、艦長が「航海長、一寸俺が貰うよ」と言って、変針とか回頭を利用して、アット言う間に定位置につけてくれた。中尉と少佐の技倆、経験の差をイヤと言う程見せつけられ、完全にシャッポを脱いだ。以後頭より艦が先に進むことがなくなり、心配が消えて少しずつ技倆が向上して行った。
 関門海峡のように船舶の往来が多く潮の流れの激しい狭水道では、石炭艦でも、重油艦でも、ガスタービン艦であっても、充分用心しつつ、12ノット程度で用心しつつ航行するのが船乗りの常識であろう。新鋭艦であろうと、機器が進歩してもその原則は変わらないと思うが。最近艦は大型化し、予算も人員も制約されている現状では、教育訓練も大変だろう、しかし大事な艦艇を任されている艦長艇長の心労も察するに余りある。過去に操艦の名人とまでは行かなくても、OBに達人はいるだろう。それらの人材を正式に嘱託として採用し、各FTG1 に配置してはどうだろう。
 部隊編成の変化に伴って、地方隊のDE2 隊が総てEF3 に編入されているが、その効果は充分に出ていると思う。国防を次第に縮小して行こうと言う政府(自民、民主とも)の過った方針から見れば望ましいことであろうが、隊員の練成の見地から考えると、地方隊に配属されて、ミッチリ船乗りとしての基本を叩き込む教育訓練をした方が老婆心ながら良いと思うが。自民党(左民党)の末期ごろから年度予算は減少し、人員も漸減する一方で、任務付与だけは増加して、心ならずも部隊編成の考え方も歪になっていったのではあるまいか? 特に気になるのは、近頃権利義務の考え方が先行し、自己の責任分野だけはやるが、それ以外のことには無関心で、有機的な協同動作なり、協力行為なりがおろそかになりつつあるのではないかと心配だ。得体の知れない支那は毎年防衛費が2桁の伸びを示しているのに、日本のこのザマは何だろう。小沢や鳩山の民主党は一日も早く中共の軍門に降り、属国になりたいのであろうか? その兆候として、印度洋での給油活動を1月15日でやめて、あと支那にやって貰うよう段取りを考えているのではないかと疑いたくなる。大事な日本の油のシーレンはどうなる!
 出来る事ならもう一度現役に戻ってやり直したい。

(編集部注)
1 Fleet Training Group:海上訓練指導隊。主として自衛艦の訓練指導を任務とする部隊の名称(略号)。
2 Destroyer Escort:海自護衛艦の艦種(略号)の1つで主として沿岸海域で行動する。
3 Fleet Escort Force(護衛艦隊)の組織略号。自衛艦隊の中核となる水上艦の艦隊で、主として護衛艦で編成される海自部隊の名称。

(第17回了)