海軍爺さんの 「これでいいのか?日本!!」
第29回 廣瀬中佐のロシアでの住居 ('11.03.03.)

海軍爺さん

 俺は子供の頃から廣瀬中佐を崇敬し、少しでもあやかりたい気持ちがあり今日まで努力してきたが、どうしてもその足元にも及ばなかった。せめてロシア駐在武官だった時のサンクトペテルブルグの住居でも探したいと思い島田謹二氏の本にある住所を尋ねるべく数年前サンクトに行ったが時間の余裕がなく多分数百メートル位近くまで行ったと思うが引き返した。改めて昨年「バルト3国とサンクトペテルブルグの旅」に参加して探すことにした。
 今度は時間の余裕があったので、先ず、日本の総領事館に行き、充分調査してから現地に向かう事にした。日の丸が出ている運河に面した総領事館の玄関に行き、2人立っていたロシア人の守衛に言っても通じない。中に入ろうとすると止めるし処置なしである。睨み合っていたら1人の守衛が道路を指差すので、その方に歩き出し、建物の切れ目の所で振り返ったら、右を指差していた。やっとこの建物の裏側に受付があるのかなーと感じて廻ると受付があった。受付のロシア人の女性は日本語が解ったので、身分を明かし総領事に会いたいと言うと、「只今総領事は不在ですので領事がお会いします」と言い若い領事が出て来た。訪問の目的を言い、住所の確認をお願いした。数十分待った頃、領事が「住所等に詳しい古いロシア人の事務官に調べさせたところ、百年前の町名は変更になったが、建物は昔のままだそうです」と言って現地までの略図を渡したくれた。この件では感謝したが守衛の件では問題だと思い、若い領事に「もし俺が総領事だったら、着任直後に総領事館の見取り図に『御用のある方は、この図の点線をたどって裏の受け付けにお廻り下さい』と書いて、日の丸目当てに来る人に守衛が渡すようにしたらどうか? 用のある人しか来ない筈だからもっと親切にしたらどうか!」と言うと、わかりましたとは言ったが果たして実行しているかどうか?
 住所の方は渡された略図を辿り運河沿いに歩いて到達したが、5階建ての大きな建物で近くに誰もいないし、尋ねようもない。困っていると自転車に乗った青年が英語で“May l help you ”と言うので理由を説明したら、親身になってあちこち探してくれたが人がいなかった。やっと電話を探し、96番地5号室に電話を入れてくれたが不在であった。その青年は「わざわざ日本から百年以上前の住所を探しておられるのに感心して、現在の住人に話して室内を見て貰う積りでした」とのことで、その誠意に感謝した。あと外観を数葉撮った。百年以上前に、運河に面した環境の良い所に住んでロシアでの生活を充分に中佐がエンジョイされたかと思うと何となく微笑ましくなった。

(第29回了)