海軍爺さんの 「これでいいのか?日本!!」
第43回 当直将校 ('11.10.31.)

海軍爺さん

 「凌ぐ波濤」を書いた作家が次に又海軍のことを書きたいので昔のことを思い出して下さいと言われたが、終戦後に全部焼却して何も残っていないので、お粗末な頭で何とか思い出そうと四苦八苦しているところである。不思議なもので苦労していると時々断片的に夢に出てくることがある。余り夢は見ない方だが、ヒョット出た夢について考えていると次々に思い出すことがある。今回思い出したのは開戦前駆逐艦雷の航海長の時である。戦雲急を告げ水雷戦隊の夜襲攻撃訓練を太平洋上で連日連夜実施していた。訓練に次ぐ訓練で余り丈夫でなかった砲術長が高熱で倒れた。軍医の診断で結核と分かり自室に隔離されてしまった。そうなると当直将校は先任将校の水雷長と中尉ホヤホヤの俺だけである。2直でやるのはいくら若くても辛い、毎日早朝、薄暮の訓練、深夜の襲撃訓練、更に朝と夕の天測で艦位を確認しなければならない。1日24時間中16~18時間艦橋に立ちッパナシである。3直のときは2時間交代であったが、2直になってから3時間交代になった。ある深夜訓練が終り訓練魚雷を揚収して一段落し、当直を終り、自室に帰りそのまま倒れるように寝た。当直の時間が近づいたので取次が起こしに来たそうだが、俺は全く死んだように寝ていて全く反応なし。困った取次が艦長に「航海長を起しに行きましたが全然起きません。体を強くゆすっても、大声を出してもダメでした。息はしています」と届けたところ、「わかった大艦陸奥から来て、まだ小艦にはなれていないのだろう。俺が当直をやるからそのまま寝かせておけ」と言われて寝ていたらしい。6時間位たって、ハット目が覚めて、艦橋に上がったところ、水雷長が「貴様が死んだように寝ていたので、艦長が当直将校をやられたゾ」と言われた。艦長の所に行き「誠に申し訳ありませんでした。今後注意します。有難うございました」と言ったところ、「若い頃は良くやるもんだよ。次第に要領が分かってくるから頑張れ!」と言われ最敬礼をした。厳しく優しい男の友情を泌々と感じ、1日も早く眞の船乗りにならなければと痛感した。小さな艦の纏まりの良さを体感し、開戦ともなれば、一身を艦に、海軍に、国家に捧げようと強く決心した。

(第43回了)