(36) 日本人よ、誇りを取り戻せ

元自衛官 宇佐静男

 2011 年以降、欧州の財政問題が世界経済にも深刻な影響を与えている。ユーロ圏の財政状況はギリシャが最も厳しいが、スペインも財政破綻寸前にある。  16 世紀から 17 世紀にかけて「太陽の沈まぬ帝国」(スペイン帝国)を作り上げたスペインがなぜここまで落ちぶれたのか。  スペインは 1521 年から 1532 年の間にアステカ文明、マヤ文明、インカ文明を滅ぼし、アメリカ大陸の大半をスペインの植民地とした。1580 年にはポルトガルを併合、ブラジルやアフリカ、インド洋に広がる植民地を獲得し、黄金時代を築いた。だが、19 世紀後半には、植民地を失い没落の道を歩む。没落は今なお続き、今日の財政破綻寸前に至る。  スペイン没落の最大原因は、国民が自国の誇りを失ったことだといわれる。スペインでは、かつて子供達に対し、自国はアステカ、インカ、マヤの三つの文明を滅ぼした悪い国だと自虐教育を続けた。その結果、スペインの子供達は自国に誇りを持てなくなった。彼らが大人になり、誇りの喪失は国全体に蔓延した。  自国に誇りをもてなくなった国は衰退の道を歩む。スペインが典型例ということで「イスパノフォビア」という言葉があるくらいだ。  スペインの没落は他人事ではない。「失われた 20 年」「決められない政治」が続く日本の衰退も「誇りの喪失」、つまり「イスパノフォビア」が原因といわれる。日本人は日本に対し誇りを持てなくなった。日本を悪し様に罵ることが知識人であるかのような風潮がその証左だ。  祝日に日本国旗を門前に掲げる家はほとんど見られなくなった。日本固有の領土である北方領土、竹島が不法に占拠されても、また尖閣列島が奪われそうになっても他人事である。「日本領土は日本人だけのものではない」と平然と口走る首相が出てくる始末である。  戦後、GHQ による巧妙な占領政策がその元凶である。大東亜戦争で日本人の優秀さ、恐ろしさに震え上がった米国は、戦後統治として「二度と立ち上がれない」日本の建設を目標とした。  東京裁判を皮切りに「日本悪玉史観」を普及させ、日本人が自国に対し誇りを持てないよう「イスパノフォビア」洗脳を徹底した。この政策に不都合な歴史書は焚書され、教科書は黒く塗られた。代わりに南京大虐殺や従軍慰安婦など、誇りの喪失に役立つ歴史が捏造された。  学校教育では「日本悪玉史観」が徹底された。学校で使用する歴史教科書は、今なお驚くほど自虐的である。国家や権威、権力は悪と教え込まれた。  セオドア・ルーズベルトが「徳本」(”The book of virtue”)として絶賛し、世界中でベストセラーとなった「教育勅語」は廃止された。 「国家」「公」より「個」「私」を優先し、国家と歴史、民族と文化を貶め、国家、国旗を拒否し、揚げ句の果ては祖先、両親への敬慕、子弟間の礼節まで含めたあらゆる伝統的価値観に背を向けさせた。 「イスパノフォビア」を刷り込まれた人達が現在、日本の政界、財界、官界といった国家の中枢で指導者になりつつある。自国に誇りを持てず、健全な国家観も持たず、愛国心も希薄な指導者の下で、国家が繁栄したためしはない。  安部政権下で教育基本法は改定された。だが、教育現場では日教組による自虐教育は依然続けられている。「イスパノフォビア」が再生産されているのだ。  教育改革が喫緊の課題であることは論を待たない。だが、家庭教育も反省しなければならない。家庭において、親から子へ、日本の良さ、素晴らしさをし っかり伝えているだろうか。教育勅語にある徳目を、機会ある毎、子供たちに教えているだろうか。先ずは親が子供に誇りを持たせなければならない。  かつて日本を訪れたほとんどの外国人は、日本の素晴らしさに感嘆の声を上げた。親はこういった日本の素晴らしさを我が子に伝えていかねばならない。  イギリスの詩人エドウィン・アーノルドは日本の印象をこう語っている。 「日本には、礼節によって生活を楽しいものにするという普遍的な社会契約が存在する」 「地上で天国あるいは極楽に最も近づいている国だ。その景色は妖精のように優美で、その美術は絶妙であり、その神のように優しい性質はさらに美しく、その魅力的な態度、その礼儀正しさは、謙譲ではあるが卑屈に堕することなく、精巧であるが飾ることもない。これこそ日本を、人生を生甲斐あらしめるほとんどすべてのことにおいて、あらゆる他国より一段と高い地位に置くものである」  礼節の国、美しい国土、謙譲で飾ることない性質等、我々は気がついていないが、いずれも日本人の誇りとすべきことである。  イギリスの著名な歴史家アーノルド・トインビーは伊勢神宮に参拝した時、こう語った。 「この聖なる地域(伊勢神宮)で、私は全ての宗教の根源的な統一を感じた」  神話から現代へ脈々と繋がる「聖なる地域」を持つこと自体、日本は世に稀有なる国家である。  1856 年、初代総領事タウンゼント・ハリスに雇われて来日し、ハリスの秘書兼通訳を務めたヘンリー・ヒュースケンはこう語っている。 「この国の人々の質撲な習俗とともに、その飾りけの無さを私は賛美する。この国土の豊かさを見、いたるところに満ちている子供たちの愉しい笑い声を聞き、そしてどこにも悲惨なものを見出すことができなかった。おお、神よ、この幸福な情景がいまや終わりを迎えようとしており、西洋の人々が彼らの重大な悪徳を持ちこもうとしているように思えてならない」  米国が日本を無理やり開国させることにより、日本の素晴らしさが喪失するのではないかと彼は真剣に危惧していた。  江戸時代の生活を研究した米国の女性学者スーザン・ハンレイはこう書き残している。 「1850 年に、もし地球上のどこかに住居を決めなければいけないとしたら、私が勤労階級に生まれていたならば日本に住みたい。貴族であったならばイギリスに住みたい」  大多数の勤労階級にとっては、日本が世界一住みたい国だった。  昔の日本だけではない。実は今でも日本は世界が羨む素晴らしい国なのだ。  日本は世界で最も治安の良い国である。日本の犯罪発生率は 1.336 であり、米国 3.466、独国 7.383、仏国 5.634 など主要国と比べても断トツで少ない。  WTO(世界保健機関)が評価する世界各国の「健康達成度」でも日本は総合ランキング 1 位である。平均寿命、健康寿命、乳児死亡率など全ての面で1位。国民全員が等しく医療にかかれ、負担も少ない。間違いなく日本の医療制度は世界一である。  一時期、日本でも「格差社会」という言葉が流行った。だが、2007 年に IMFが「ジニ係数」(格差の度合いを測る係数)を公表したところ、主要国と比較してもフランスについで低い数値、つまり二番目に格差の少ない国であった。  この数値が公表されるや、マスメディアも「格差社会」という報道を止めてしまった。日本は世界的にも格差の少ない平等な社会なのだ。  英国の BBC は毎年、「世界によい影響を与えた国、悪い影響を与えた国」というアンケートを世界中で実施している。2011 年の結果では「世界によい影響を与えた国」で日本は「良い影響」が 57%、「悪い影響」が 20%、世界で5位の好位置につけている。肝心の日本人が 39%しか「良い影響」と自覚していない。日本自身が日本の良さを喪失している。  日本の漫画、J ポップ、映画なども世界の若者には人気の的である。町並みは清潔で、治安も良い。少し歩けばコンビニもスーパーもある。商店には商品が何でも揃っている。料理ひとつとっても、世界中の料理が東京で食べることができる。味はどこでも一流だ。  安全、快適で暮らしやすさを満喫できる日本、世界中の人が憧れ、羨む国である。もっと胸を張り、誇りを持ってしかるべき素晴らしい国なのだ。先人達は、我が身を省みず、死に物狂いで素晴らしい日本を残してくれた。祖国に残した父母や恋人を思い、あるいは自分の死後に遺される妻や子の幸せを祈り、平和で豊かな祖国の実現を願いつつ祖国のために戦ってくれた。  どこの国でも祖国のために命を捧げた人に対しては、感謝の念をこめ、最大限の儀礼を尽くすものだ。それが戦後、「イスパノフォビア」政策によって、戦闘で散華した者は犬死と嘲られ、生還した者は人殺しのごとく難詰された。未だに総理大臣が靖国神社参拝を躊躇するような状態だ。「イスパノフォビア」政策は日本人の誇りをズタズタに引き裂いた。  日本の再生には、先ず日本人一人ひとりが誇りを取り戻すことだ。実際に日本は誇りを持つにふさわしい素晴らしい国である。自虐的にならず日本のありのままの姿を外国人のように素直に見ればいい。  アインシュタイン博士は語っている。 「近代日本の発展ほど、世界を驚かせたものはない。一系の天皇を戴いていることが、今の日本をあらしめたのである。私はこのような尊い国が世界の一カ所ぐらいなくてはならないと考えていた。世界の文化はアジアに始まって、アジアに帰ってくる。それはアジアの高峰日本に立ち戻らねばならない。吾々は神に感謝する。吾々に日本という尊い国を創っておいてくれたことを」  日本人よ、誇りを取り戻そうではないか。

宗教法人念法眞教機関紙「鶯乃声」 2013年1月号より転載