(47) 竹島問題は国際司法裁判所に提訴すべき

元自衛官 宇佐静男

 韓国の朴槿惠大統領は就任以来、米国を皮切りに中国や欧州歴訪を行った。極めて異例であったのは、隣国日本を訪問しなかったこと、そして行く先々で日本を批判するという「告げ口外交」を展開したことだ。
 昨年 5 月、初訪米でのオバマ大統領との会談では「日本は正しい歴史認識を持つべきだ」と“直訴した。”9 月末に訪韓したヘーゲル米国防長官との会談でも、重要な外交課題とは関係のない日本批判に終始し、長官を苛立たせた。
 11 月にはブリュッセルで開かれた欧州連合(EU)との首脳会議で、従軍慰安婦問題などをめぐり日本批判を展開した。フランス紙「フィガロ」や、英国BBC のインタビューでも「日韓は未来志向の関係に向けて成長すべきだが、従軍慰安婦やその他の問題では、過去を向いた指導者もいる」とし、「たとえ日韓首脳が会談しても関係改善につながらなければ、日韓国民は落胆し、逆効果だ」と日本非難に終始した。
 同じく 11 月に訪韓したロシアのプーチン大統領との会談でも、「歴史に逆行する言動が障害となり、北東アジア地域の協力が実現されていない」と日本批判が入った共同声明を発表している。
 韓国の「告げ口外交」は今に始まったことではない。盧武鉉元大統領も在任中、米国大統領や国務長官、国防長官との会談で日本批判を展開し、米側の顰蹙を買っている。
 韓国の歴代大統領は、任期後半になると支持率が下がり、「反日」を利用して支持率を上げようとしてきた。李明博前大統領もそのことは認め、訪韓した野田首相に「私はそういうことはしたくない」と発言している。
 だが彼も任期後半になって支持率が落ち、同じ手口を使う羽目になる。首脳会談で「慰安婦問題」を非難するだけでなく、歴代大統領として初めて竹島に上陸し、天皇陛下に謝罪を要求した。朴槿惠大統領は就任するや早々に「反日カード」を切ってしまったわけだ。
 日韓関係の歴史は、韓国が歴史問題に対し一方的に激昂するのに対し、日本が必要以上の謝罪と思いやりを示してその場を凌いできた。
 いわゆる「従軍慰安婦問題」はその典型である。昨年 2 月号の本誌に拙稿「父祖に対する濡れ衣は取り払わねばならない」を書いたので細部は省略するが、「これさえ認めれば、あとはもう問題にしない」という言葉を信じた日本政府が、ずさんな調査で強制性を認め、「河野談話」を出すという大失策を犯した。
 平成 10 年には小渕恵三首相が「痛切な反省と心からのお詫び」を盛り込んだ日韓共同宣言に署名した。日韓併合 100 年にあたって、菅首相は不協和音を生じる日韓関係の修復に向け、日本の植民地支配について謝罪した。野田首相は訪韓時、返す必要もない朝鮮半島の古文書「朝鮮王朝儀軌」を持参して思いやりを示したがお礼の一言もなかった。関係は修復どころか韓国を益々増長させた。謝罪し思いやりを示すたびに、日本非難は終わるどころか、ますますエスカレートの一途をたどったのだ。
 盗んだ仏像の返還拒否、日本企業に対する日韓基本条約破りの判決、米国での慰安婦像設置の反日活動、靖国神社放火未遂、東京五輪開催妨害のための日本水産物禁輸宣言等々、理不尽な行動が続いている。
 必要以上の謝罪や思いやりなど、関係改善に役立つどころか、全く効果はない。それが無駄なことは、朴槿惠大統領が「被害者と加害者の関係は千年変わらない」と明言したことでもわかる。
 竹島問題は主権に係わる国家の重大事であるにも係わらず、これまで日本は思いやりを示して遠慮がちに対応してきた。だが韓国は日本の配慮に付け込んで、警備隊員を常駐させるなど実効支配を強化してきた。思いやりや遠慮が全く役に立たないことが分かった今、日本は主張すべきことは毅然と主張するという姿勢に転換すべきである。
 竹島は明らかに日本固有の領土であり、不法占拠されている状態にある。これまで事なかれ主義で対応してきたため、竹島問題を知らない日本の子供たちも多くなっている。
 竹島は隠岐諸島の北西約 160 キロにある群島であり、島根県隠岐の島町に属する。東島、西島の二島と数十の岩礁からなり、総面積は日比谷公園とほぼ同じである。
 日本は江戸時代初期から明治時代まで、アワビやアシカ漁の漁業基地として利用されてきた。寄港地としても利用され、明治政府は明治 38 年の閣議で「竹島」の名称を正式に決定している。
 昭和 28 年 4 月、日本はサンフランシスコ平和条約で独立を再び回復した。同条約では朝鮮独立を承認し、日本が放棄すべき地域を「済州島、巨文島、鬱陵島」とした。だがこれには「竹島」は含まれていない。
 条約の事前交渉で、韓国政府は、「竹島」も放棄地に含むよう米政府に働きかけたが、米政府は「朝鮮の一部として取り扱われたことがない」「朝鮮によって領有権の主張がなされたとはみなされない」として明確にこれを退けている。
 ラスク書簡でも、竹島については明治 38 年以降島根県の管轄下にあり、韓国からの領土権の主張は過去になされていないと回答している。
(ラスク書簡とは、サンフランシスコ講和条約を起草中の米政府へ韓国が寄せた要望書に対し、米国が最終決定として回答した文書)
 ラスク書簡の 5 か月後、講和条約発効前の昭和 27 年 1 月、韓国の李承晩大統領が突然「李承晩ライン」を一方的に設定し、竹島を韓国領に取り込む暴挙に出た。以降、ラインを越えた 111 隻の日本漁船を拿捕し、1537 名の漁船乗務員が抑留されている。
昭和 29 年、アイゼンハワー米大統領特命大使として訪日したヴァン・フリートは、竹島問題に対し次のような特命報告書を提出している。
「日本との平和条約が起草されていたとき、韓国は独島の領有を主張したが、米国は同島が日本の主権下に残り、日本が放棄する島の中に含まれないと結論づけた。米国は内密に韓国に対し、同島は日本領だとする米国の認識を通知しているが、韓国はそれを公表していない。米国は同島が日本の領土であると考えているが、紛争に干渉することは拒んでいる。我々の立場は紛争が適切に国際司法裁判所(ICJ)に付託されることであり、非公式に韓国に伝達している」
 米国は竹島問題について国際司法裁判所(ICJ)による解決を望んだ。だが、当の日本が日韓関係に及ぼす影響に配慮し及び腰であったのだ。
 昨今の韓国側の動向を見ると、我々の配慮や思いやりは役に立たないどころか、全く逆効果であることが明らかにになった。何をやっても「被害者と加害者の関係は千年変わらない」のであり、反日は激化するのである。
 これはある意味、好機ととらえるべきである。ピンチはチャンスである。再び ICJ に提訴すべき時なのだ。
 これまで2度、日本は ICJ への付託を検討した。昭和 29 年には韓国に口上書で共同付託を提案した。昭和 37 年には日韓外相会談で取り上げた。だが、韓国はいずれも共同付託を拒否している。ICJ で裁判を始めるには係争の両国が共同で付託するか、単独で付託する場合、被告の国が付託を同意することが必要である。韓国が付託に同意する可能性は少ない。だが、韓国に対し強く訴えることにより、国際社会に対して日本が両国の問題を堂々と公正に解決しようとする姿をアピールできる。また何より既成事実が強化されないよう、時効を中断させるメリットは大きい。
 これをやれば、尖閣の領有権問題で日本が不利になるという声もあるが誤りである。尖閣については、中国は領土係争問題があることを日本に認めろと主張しており、日本は問題の存在そのものを認めないという立場である。この立場は譲れないが、中国がもし ICJ に提訴すれば、堂々と応訴すると宣言すればいい。
 中国は現在、領海侵犯や領空侵犯など姑息な手段で日本の実効支配を覆そうとしている。そんな姑息なことは止め、自分の言い分を認めさせたいなら、ICJに提起したらどうかと訴えることで、更に強い立場に立つことができる。国際社会に対して日本の公明正大さをアピールできるし、竹島とのダブルスタンダードは生じない。竹島、尖閣共、こちらに理があるので、ICJ でも勝訴は間違いない。 これまで日本は竹島問題で国際司法裁判所への提訴を遠慮がちに見送ってきた。その度に韓国世論が激昂して、日韓関係が悪化したからだ。もうこれ以上の悪化はない。ICJ へ単独提訴に踏み切り、応訴しない韓国を国際社会の中で追い込めばいい。ピンチはチャンスなのだ。
 韓国へは、必要以上の謝罪や思いやりは百害あって一利なく、全く無駄である。日本はこちらが思いやりを示せば相手も分かってくれるといった甘い幻想から覚醒しなければならない。
 福沢諭吉はかつて、朝鮮民族の事を思い、何とか助けようと誠心誠意努力した。だがその都度裏切られ、最後には目が覚めた。彼は「脱亜論」に書いている。「我は心に於いて亜細亜東方の悪友を謝絶するものなり」と。
 我々のベクトルは太平洋に向かうべきだ。歴史的にも朝鮮半島に係ってろくなことはなかった。朝鮮半島への対応は、感情抜きの国益中心主義で臨むべきだ。筑波大学の古田教授が言われるように「教えず、助けず、係らず」を基本にすべきだろう。
 もうすぐ島根県が条例で定めた「竹島の日」(2 月 22 日)がやって来る。日本はこれまでの忍従の姿勢から、反転攻勢へ転換する時期なのだ。

宗教法人念法眞教機関紙「鶯乃声」 2014年1月号より転載