対応能力の弱体化を露呈しはじめた自衛隊

元陸上自衛官 現星槎大学非常勤講師 森 清勇

冷戦崩壊後の日本周辺の情勢変化に対応して、自衛隊は北方重視の配置から西方重視への転換を図ってきた。しかし、予算の削減で隊員や装備の削減が続き、近代化のための研究開発などへの投資も抑制され、現実の戦力ばかりでなく明日への備えも危険水域に近づいていることは指摘されてきた。
 警察は事件や事案が起き、対応に不備があるとすぐに増員に結びつく。平成に入ってから毎年増え、過去15年間で29879人の増員が行われてきた。他方、自衛隊は同年比較で14104人の減員である。昭和63年が予算・人員ともピークで、任務が増大し、海外派遣も頻繁になってきた現在は定員で25498人、現員でも18655人の減員となっている。

 自衛隊は想定される最大の脅威等に対処するために存在するわけで、予算要求時点で現実的な脅威が顕現しているわけではない。財務官僚など予算査定にあたる人士は、前年も削減したがちゃんと対応しているではないか、どこに欠陥があるというのか、況してや戦車などの機能が向上したら、その分隊員を減らしていいではないかという論理になってしまう。
 相手も近代化して戦力がアップしていると言っても、現実に相手が見えるわけでもないので、なかなか理解してくれず、ばっさり切ってしまう。東日本大震災でも、自衛隊は持てる範囲で災害派遣で活動し、国民からは「さすがに自衛隊さん」と称揚された。

 22大綱では、予算や隊員・装備の減少を「動的防衛力」の構築でカバーしようとする考えが打ち出された。しかし、今年4月と12月の北朝鮮のミサイル発射に関する情報収集と対応は不十分であったし、今回起きた中国公機による領空侵犯に対処できなかった。
 北朝鮮にも中国にも翻弄されている日本である。眼前に脅威が見えないばかりに、長年にわたって防衛力整備が軽視されてきた欠陥が露営し始めたという以外にない。その整備には地道な努力以外にない。

(平成24年12月15日記す)