歴史の教育に工夫を

元陸上自衛官 現星槎大学非常勤講師 森 清勇

 いまに始まったことではないが、日本と露中韓には領土問題が存在する。いずれも領有権問題ではなく、実効支配の有無と施政権に絡む問題である。
 即ち、日本の領土であることには歴史的にも法律(条約)的にも明瞭であるが、日本が大東亜戦争に負けて軍事力が無くなったときに掠め取られ、日本が明確な形で施政権を顕示できなくなったかからである。しかも世論の盛り上がりがない。
 憲法前文に「恒久の平和を念願し」とか、「崇高な理想を深く自覚する」とか、「諸国民の公正と信義に信頼して」などと書かれていても、日本国民限りのことで、周辺諸国が傍若無人的な暴力を利用していることには変わりない。
 そもそも日本が大東亜戦争を、主として米国相手に戦ったという事実を知らない若者が多い。「えっ! 本当ですか?」と聞き直してくるのが多いそうである。日華事変、その収集が終わらないうちに始まった日米戦争(双方を含めて大東亜戦争と呼称)の結果としての敗戦である。
 ソ連は日本の混乱を他所に、盗人猛々しく北方領土を占領した。朝鮮半島は解放され、独立し南北に分離した。その数年後に、李承晩韓国初代大統領が自国漁民の保護を名目に、勝手に李ラインを引き竹島を自国領に組み込んでしまった。
 ところで、日本の歴史教育は古代、中世、近世、近代、現代と年代を追ってカリキュラムが構成されている。そして、肝心の近現代に入るころになって、おおむね時間がなくなり、尻切れトンボで終わらざるを得ない。大東亜戦争について経緯も終末も十分理解されないまま、場合によっては戦争があったこと自体さえ教わらないままに終わっている。そうした歴史教育の欠陥が、いま出てきているように思われる。
 話は飛ぶが、内藤湖南は日本の歴史は「応仁の乱」(1467~77年、室町幕府8代将軍足利義政の室町中期)前後で、同じ日本かと思われるくらいがらりと変わっているという。そして、応仁の乱以降を勉強すれば、今日につながる歴史を十分理解することができると断言する。
 学校教育という見地からの更なる検討が必要ではあるが、近現代史の教育不足が今日の日本の歴史理解不足の一因であるという観点から、応仁の乱以降、特に近現代史を強調して教えるのが最もふさわしいのではないだろうか。もっと極論すれば今日の日本をなさしめている明治維新以降の近現代史を真っ先に勉強する方法など、歴史教育の在り方に工夫が必要ではないだろうか。

(平成24年10月9日記す)