イスラエル管見

元陸上自衛官 現星槎大学非常勤講師 森 清勇

 6月中旬にイスラエルに旅行した。シリアの民主化やイランの核問題で中東が混乱しない前にという思いと、焦点になりつつあるパレスチナとのに国家併存がどのようになるのかを確認したいという考えからであった。
 面積・形状においてほぼ秋田・山形2県に相当するが、南部はネゲブ砂漠であり、中部の東半分はユダ平原などで、多くが岩盤むき出しである。堆積土がほとんどない上に、3月末から11月初めの乾季はほとんど雨が降らない。雨季には2、3日置きに降るようであるが、岩盤のために鉄砲水のように走り、根付きそうな草木さえ流してしまう。こうした環境から草木が根付きにくく、あってもまだら模様である。
 やや開けた平地のようなところには、外国で迫害されたユダヤ人たちが帰還して開いたキブツ(共同生活者)がある。砂漠の中の「オアシス」の名にふさわしく、オリーブやナツメヤシなどのプランテーションが行なわれ、新鮮は息吹を感じる。遊牧の民ベドウィンも近年は定住して民芸品などの製作で生計を営む方向に向かっているとかで、僅かに目にしただけであった。
 イスラエルで入手した地図には、①パレスチナ管轄地域(軍・警察及び民生を含む行政権全てがパレスチナ側にある:A地域)、②イスラエル・パレスチナ共同管轄地域(軍・警察権はイスラエルが有するが、民生を含む行政権はパレスチナ側が有する:B地域)が色分けされており、残余がイスラエル独自の管轄地域ということになる。ヨルダン川西岸やガザ地区は勿論A地区で、イスラエルという国土の中にA,Bが複雑に入り組んでいる。
 即ち秋田・山形2県が完全にイスラエルの行政地域ではなく、例えばイスラエルの首都エルサレムから25㎞東北に位置するエリコ(モーゼがヨルダンのネボ山から緑のオアシスと呼んだ土地)はA地区で、ユダヤ人や彼らが運転するツアーバスは街を突っきることは出来ず迂回しなければならない。
 エルサレムの南10㎞にある、イエス生誕の地ベツレヘムもA地域で、首都と隣接していることもあり、ベルリンの壁(高さ2m、厚さ30㎝)よりはるかに頑丈な高さ5m、厚さ50㎝位の壁で仕切られ、入出門は厳格な検査を受ける。パレスチナの国家承認が具体的に動き出しているが、エルサレムを首都とする二国家併存(PLOはエルサレムに含まれる一部の東エルサレムを首都に定めている)がどのような形で可能かなど、問題点も多いようである。
 ざっと空港を数えると20か所が見つかった。イスラエルの玄関はベングリオン国際空港(International Airport)で、同様にAirportと明記されているのは3ヵ所、大部分はAirfieldとなっている。防衛産業を含むハイテク産業近傍や、軍事訓練が見られた地域などに配置されていることからも、国防上の要請が大きいのではないだろうか。

(H24.8.17記す)