オスプレイ配備について

元中部方面総監 松島 悠佐

2012・7・17

 沖縄海兵隊に新たに配備される「オスプレイ垂直離発着機」の解決期限が段々と迫ってきた。7月末には現物が岩国に到着し、10月には本格的な運用が開始されるようである。
問題の原因は同機の安全性にあり、今年の2月にモロッコで、6月にはフロリダで事故が起きている。目下事故原因は調査中で、来月ぐらいには少しはっきりすると思うが、この種の事故原因は決定的なものは出難いだろう。製造上の不具合と操作上のミスが重なる場合が多いからである。
 軍事基地の設置や新装備の導入などの場合にいつも問題になる事は、「戦闘力の強化」と「安全性」の二つの要因である。どちらも必要な事なのだが、両者は相容れない性格であり、両方を満足させる事は難しい。
 今、配備が予定されている沖縄県と山口県では、県知事や市長など地方自治体の首長が、「安全性が保障できないものを受け入れるわけには行かない」といっており、県民・市民の生活の安全を守る立場としては当然だろう。
 米軍は、現在装備しているヘリが古くなり、さらに戦闘効率の良いオスプレイを開発し新たに配備する計画であり、戦闘力の強化のために計画通り配備を進めたい。これも軍隊としては当然である。
 米軍としても安全性を蔑ろにしているわけではないだろう。海兵隊の地上戦闘部隊の迅速な機動展開のための航空機であり、安全性に不安のあるものでは海兵隊自身が困るからである。
 軍の装備を開発し選定する時には、戦闘効果のほかに費用〈特に費用対効果〉、安全性、操用性、耐久性、整備性などが重要な選定要件となり、安全性についての検証は相当にやっていると見るのが素直な見方だろう。
 わが国政府としては、当然ながら「戦闘力の強化」と「安全性」の両方に目を配らなければならないのだが、総理大臣や防衛大臣が意識しなければならない「安全性」は、単に墜落事故回避の安全性ではない。
 米軍の現有装備が老朽化し戦闘効率が低下して、目下軍備強化を図っている中国軍との戦力格差が生じる事は、沖縄はじめ南西諸島の防衛力の低下につながりかねない。
沖縄に配備している日米の戦力が低下することは、中国にとって又とない侵攻のチャンスとなり、中国はその機会を狙っている。
 尖閣諸島に手をかけ、先島諸島を籠絡し、やがて沖縄に侵攻する中国の長期のシナリオが着々と進められることになる。
 沖縄から米軍を撤退させ、自衛隊も縮小しようと企てている人たちは、中国のこの計画に意識的にせよ、無意識的にせよ加担していることになる。
 この3月に「沖縄を再び戦場にしないために!」という小論を掲載したが、沖縄の米軍の戦力低下をくい止めることは、わが国として南西諸島の安全、ひいては国家の安全を守るために喫緊の課題である。
 オスプレイ墜落の危険は出来るだけ回避しなければならないが、もっと大事なことは、沖縄の安全、南西諸島の安全、日本の安全をしっかりと確保する事である。
総理大臣・防衛大臣はこのような視点から安全性を語るべきなのだが、両人とも「事故調査の結果を待って判断したい」などと言っているに過ぎず、事故からの安全を守る事だけに考えが矮小化している。
 今月の初めにも、「オスプレイの配備と防衛大臣の態度」というブログを書いたが、「オスプレイは国を守るために必要な装備だ」と信念を持って国民を説得するのが総理大臣・防衛大臣の努めだろう。
 もしその信念が持てないのなら、アメリカに「配備を見直せ!」と申し入れるべきである。
 かつて、60年安保の時に、日米安保はアメリカの戦争に巻き込まれるとして反対の波が国会を取り巻いたが、「安保条約が国を守る」と信じて改訂を強行した岸信介総理がいた。
また、沖縄の返還に際して「米軍は残っても、核は持ち込むな!」とアメリカに注文をつけた佐藤栄作総理がいた。
 判断の良し悪しに意見もあろうが、国の為政者としての決断と矜持があったように思う。見習うべきではなかろうか。