菅と防衛計画の大綱

星槎大学非常勤講師 森 清勇(元自衛官)

2月晦日、正確には3月1日午前3時過ぎに菅政権による初めての本予算が衆議院本会議で可決された。
しかし、民主党所属でありながら別会派を結成した16名が欠席するなど、首相が施政方針演説で述べた「熟議の国会」からは程遠い。

『正論』2011年3月号を読んでいたら、「これは?」と思うようなことが書いてあった。
民主党が党の職員25人を月給85万円で内閣官房専門調査員に任命し、政務3役の補佐として官邸と各省庁に送り込み、従来の局長をそのまま置いて更に局長の仕事をさせるそうで、脱官僚とはペテンもいいところだという。

また、この制度ができた頃訪米した首相をオバマ大統領は菅首相でなく「新首相」と紹介したというのである。何故なら英語の「con(発音はカン)」はペテン師のことだから「菅首相」と紹介したのでは「ペテン首相」になってしまうからだ、とも書いている。
ここで話は急転するが、初代文化庁長官にこん今日出海という人がいた。今氏がフランスに行ったとき、やはりフランスの要人が、「コン」と言わずに別の言い方で紹介したという話を思い出した。「con(コン)」はフランス語で卑猥な意味を持つからである。


仏語の「コン」はさておき、「con(カン)」を確認のため手元の英和辞典で調べると、他にも①「反対」 「反対論者」、②「勉強する」「暗記する」、③「(船の)操舵を指揮する」がある。

こうみてくると「con(カン)」は菅首相の姿勢そのものを表しているようでもある。
民主党がマニフェストで打ち出した選挙公約を何が何でも守るべきであると主張しているのが小沢元代表であり、それは現実に難しいと難色を示して「反対」しているのが菅首相である。
また横浜で開催されたAPECでは胡主席との会談でペーパーを見ながら話す姿が放映され、一国の首相としての頼りなさを国民にさらけ出した。
日本を辱めないように、しっかり「勉強」して会談に臨んで欲しいと思った。

勉強といえば、新防衛計画の大綱で打ち出された「動的防衛力」を評価する向きもある。
しかし、よくよく見ると旧大綱の「即応性、機動性、柔軟性及び多目的性を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度の技術力と情報能力に支えられた、多機能で弾力的な実効性のあるものにする」の「多機能・・・」以外が新大綱にそっくり転写され、「多機能で弾力的な実効性のあるものにする」を、「持続性」+「動的防衛力を構築する」に言い換えただけとも言える。

新大綱の閣議決定1週間後、「人民日報」は「動的防衛力の定義は旧大綱にも登場しており、言葉が新しいだけで中身に新鮮さはない」と一刀両断したそうである。日本の現実を見抜いている中国の「勉強」や恐ろし! である。
それよりも何よりも、首相には「日本丸」を座礁しないように操縦する責任があるが、支持率は低下の一方である。支持率には関係なく投げ出さない姿勢を示したのが、関連法案成立の見込みもないのに本会議での強行採決であろう。

日本丸は「国民のもの」で、金一族の北朝鮮とは違うのだから、そこのところを間違ってもらっては困る。溺れる者は藁をもつかむと言うが、まさかノブコ?とかいう人に「カイワレ大根にしがみついてでも放り出してはだめよ」と指南されているのではあるまいか。

(23年3月1日記す)