デビ夫人等の重い(大胆な)発言に思う


元陸上自衛官 現星槎大学非常勤講師 森 清勇

 デビ夫人は芸能界の厄介者として疎まれることが多いらしい。スカルノ亡き後の豪奢かつ自由奔放な生活へのやっかみもあろうが、発言の大胆さにもあるようだ。
 かつて、日本人が中東で拘束された時、「自己責任」と発言し、至言だと納得したことがある。今回のISIL(Islamic State in Iraq and the Levant=イラクとレバントのイスラム国)による日本人二人(湯川遥菜・後藤健二)の拘束・殺害では、自身のブログでさらに過激な意見を開陳している。
 「週刊新潮」(2015.2.12号)の伝える内容(要旨)は、政府が再三にわたって危険地域に近づくなと警告してきたし、(後藤氏は)「自分の身に何か起きてもシリアの人を責めないで、自己責任をとる」とのメッセージを残していた、と警告無視と自己責任言及についてまず触れる。
 続いて母親(石堂順子氏)の行動について、「息子が日本やヨルダン、関係諸国に大・大・大・大迷惑をかけていることを棚に上げ、安倍首相に『あと24時間しかありません。助けて下さい』と訴えているのは、どうかと思います。ひたすら、地にひれ伏して、謝るべきではないでしょうか。それからです、母として安否を願うのは」と、国民の多くが思っていても口に出せないことを率直に書く。
 そして更に、「不謹慎ではありますが」と前置きしながらも、「直接話すことができたら、いっそ自決して欲しいと言いたい。私が彼の母親だったらそう言います。わが子を英雄にする為にも」と、筆鋒鋭く自決の奨めに言及する。
 こうした、奇想天外的ともいうべき発言に多くの人はついていけないだろうし、逆に夫人の発言が世界から注目される点でもあるのだろう。
 亡くなった後に記者が改めて尋ねると、「2人の行動によって国会は止まり、日本の国全体が麻痺し、莫大な経費もかかった。関係諸国が受けた迷惑は絶大です。センチメンタルに浸るより、現実に目を向けるべきではないかしら」との文面からも、現実を直視した発言であることが分かる。
 三島由紀夫と親しかった徳岡孝夫氏は、夫人の意見に対して「傾聴に値する」と語っている。
 他方、カメラマンの宮嶋茂樹氏は二人の救出に関する動きを見ながらも、「袋をかぶせられ、どつかれ、工作船で北朝鮮へ連れて来られた」もっと多くの無辜の拉致被害者を想い、「今も殺されるかもしれん恐怖の毎日を送っているのも忘れたらアカン」と声を大にする。
 そして、「アイ・アム・ケンジ」のプラカードを掲げる運動をしていた世界中の人たちに向かって、「アイ・アム・メグミ」のプラカードを掲げる運動をしたらどうかと提案する(「産経新聞」(27.2.12)。
 因みに、自覚してISILに行った二人とは違って、全く知らないうちに拉致の可能性が排除できない捜査・調査対象者は864人である。横田夫妻らを見る度に日本国家の無力と家族の心痛を思うしかない。警察庁は情報提供を求めて、親族が掲載拒否したものを除き平成25年6月以降、ホームページで公開している。
 デビ夫人の発言は国家の運命に裏方的立場からでも関わった意識の表出であろうし、宮嶋氏の提言は世界の紛争地帯を潜ってきた経験が言わせたものであろうから、戯言では済まされない内容が含まれており、重く受け止めなければならないであろう。

(平成27年2月15日記す)