中韓の日独歴史認識に異議あり


元陸上自衛官 現星槎大学非常勤講師 森 清勇

 中韓は日本の歴史認識を批判するとき、決まってドイツに見習えという。3月来日したメルケル独首相が日本に歴史問題で対応を促したかのように、中韓や日本の一部では受けとめた向きがあった。
 しかし、日独がやったこととその処理は全く異なるもので、ドイツの何を見習えと言っているのか判然としない。
 ドイツがやってきたことは、ナチスが犯した600万ユダヤ人のホロコースト(大量集団殺戮)、身障者安楽死政策、人体実験、断種不妊手術等の「人道に対する罪」の補償である。50万のロマ人に対する補償や、被占領諸国に与えた通例の戦争犯罪の補償は未だ行っていない。
 歴史に類を見なかった人道の罪が余りに大きかったために、通例の戦争犯罪に対する補償には手が回らなかったのだ。近年、ギリシャ、オランダ、フランス、セルビアなどから、何かの折に請求の声が上がってくるようになった。
 特にギリシャは放漫財政がたたり、数度にわたり破綻寸前になり、その度にEUから脱退するぞと脅しては金を引き出し、あるいはIMFへの返済猶予をさせてきた。EUが出し渋ると、その中心的存在のドイツに対して「第二次世界大戦中にナチス・ドイツの占領で受けた損害に対する賠償」を要求する声を上げてきた。その額たるや2787億ユーロ(約36兆円)というから半端ではない。
 先に亡くなったワイツゼッカー元大統領が終戦40年目に「民族全体が有罪とか無罪ということはない。有罪、無罪は集団的ではなく個人的なものである」、「今日の人口の大部分は当時子供か、まだ生まれていなかった。自分が手を下していない行為に対して、自らの罪を告白することは出来ない」という主旨の演説をした。
 ナチスを特殊集団としてドイツ(国民)から分離し、またその子孫からも分離して、いまは関係ないよといいたいのは山々で、そうしなければ国家として存続しえないからである。



 中国は南京開城に伴う事件を「大虐殺」に仕立ててナチのホロコーストにたとえ、韓国はドイツに見習って補償せよと言い募る。
 南京で起きたことは、軍服を脱ぎ捨てて捕虜資格を無くした便衣兵や、給食できないほど多すぎた捕虜に対する処刑、並びに巻き添えを食った民間人殺害等である。その数は万人台とみられるが、通例の戦争(この場合はシナ事変)に伴うものである。
 また、韓国に対する補償では、交渉過程で個人補償も問題になったが、韓国は「個人への補償は韓国政府が行うので日本は韓国政府へ一括して支払って欲しい」ということになり、合意して日本は無償3億ドル、有償2億ドル、民間借款3億ドルの供与と融資を行った。
 こうして、両国間の財産、請求権一切の「完全かつ最終的な解決」が日韓基本条約で確認されたのである。
 このように、日本とドイツは全く異なり、日本は人道に対する罪を犯した犯罪国家ではなく、況してや南京で大虐殺など犯していない。中韓の宣伝戦に踊らされてはならない。

(平成27年4月12日記す)