弁護士需要が少ない日本は健全な国である


元陸上自衛官 現星槎大学非常勤講師 森 清勇

 米国では各種問題を弁護士の活躍で、平和的かつ民主的に解決する先進的な国であると、かつて思い込んでいた。ところが現実は然に非ず。日本の法曹界は4万人であるが、米国では毎年日本分が増え、2000年に100万人を突破し、今では約150万人とみられる。
 クリントン大統領時代には、トヨタ、ホンダ、東芝、旭光学などの錚々たる日本企業が、恫喝紛いの嫌疑で訴訟を起こされ、多額の和解金をふんだくられるケースが頻発した。それが、ブッシュ政権になったら、対日企業訴訟がばったり消えてしまった。
 弁護士上がりで親中派のクリントンは、米司法省の法務官僚で構成する対日企業訴訟チームを作って、日本を締め上げようとした。日本が強くなり過ぎると、防衛産業などにどんどん制裁金を賭ける悪夢が再来しないとも限らない。
 高山正之著『弁護士が怖い!』には、コーヒー一杯で火傷して3億円の賠償金が出た判例がある。加害者、被害者そっちのけで、弁護士が生きる(いや儲ける)ための訴訟が頻出し、挙句の果てに企業などは訴訟疲れで衰退してしまう。
 世界の軽飛行機界を席巻していたセスナ機は、頻発した訴訟で消滅の危機に直面している。戦闘機メーカーも同様で、一世を風靡した名前が聞かれない企業もある。一時は「訴訟天国」ともてはやされた米国であったが、今や「訴訟地獄」に様変わりしている。
 製品の使用中、消費者が生命、身体、または財産に損害を受けたとき、それが製品の欠陥によるものであったことを証明できれば、製造者の賠償を受けられるというPL法は消費者保護の目的で作られた。
 しかし、現実は弁護士が弁護料稼ぎに、消費者を焚き付けて何でもかんでも訴訟に持ち出すように仕向ける悪法になっている。レクサスでは運輸長官までが「トヨタに乗るな」と公言し訴因捏造加担者を支援する始末。しかし、賠償金獲得後に「娘にトヨタ車を買い与える」と公言し、捏造を認めた。こうして、いろんな分野の訴訟で、何千億円、何百億円と米国は日本から大金をもぎ取っていった。
 武田製薬の糖尿病治療薬「アクトス」では、米国男性が膀胱癌になったとして損害賠償請求訴訟を起こし、60億ドル(約6500億円、一説には1兆ドルとも)の懲罰的損害賠償金の陪審評決が出た。ルイジアナ連邦地裁が2765万ドル(200分の一以下)に減額の決定をしたが、武田は「当社に責任はない」と上訴している。いったん認めると、更なる訴因が捏造されかねない。
 隣同士がある日突然訴訟に巻き込まれ、いがみ合う殺風景が無い日本である。また、細々と、しかし素晴らしい商品を作っている町工場が、訴訟でなり行かなくなることがない日本でもある。
 問題が起きてもお互いに「済みません」、あるいは喧嘩両成敗で、弁護士を引っ張り出すまでもなく即決する、「良い習慣」が日本にはあるからであろう。
 一時、米国と比較して日本には弁護士が少ないということで、弁護士増大計画が叫ばれ、法科大学院増設につながっていった。しかし、思うように学生が集まらなかったようで、74校のうち25校が学生募集を停止した。
 無用に弁護士が蔓延らないのは、日本の美点である。「済みません」の日本的「弁護士抜き問題解決法」は、非文化的でも時代遅れでもなく、世界遺産登録に値するのかもしれない。

(平成27年6月11日記す)