南京大虐殺は中国流に見立てた被害か


元陸上自衛官 現星槎大学非常勤講師 森 清勇

 ラルフ・タウンゼントは新聞記者や大学教師を経て、30歳で外交官となり、1931年に上海副領事として赴任、32年の第1次上海事変を体験する。その後福建省副領事を務めたのち帰米、33年に辞職する。
 彼の『暗黒大陸 中国の真実』を読んで、今更ながら、中国人の性格や中国の状況が1世紀前、いや有史以来変わっていないことが分かる。同時に、中国における戦争や内乱等での被害者の著しい大きさが分かる。
 タウンゼントが観察し纏めた中国(人)とは、
1 世界史上類例のない悲惨な国
 「指導者は全て己のことしか頭にない。世のため人のため尽くそうにも、支持者がいない。何かやろうとすると、いつ後ろから刺されるか分かったものじゃない。どこの世界にも『腐敗、堕落』はあるが、中国のような百パーセント腐敗、堕落している国はない」
2 食うために兵隊になるから命を懸けて戦わない
 「最後まで戦うことはない。戦闘参加人数に対して、戦死者は驚くほど少ない。例えば、それぞれ5万人の兵力がぶつかる戦では、二、三百人ほどの戦死者が出たら『勝負あった』となる。相手を倒そうという目的が全くない。所詮、食うために偶々軍隊に入ったのだから、弾丸に当たって命を落としたら元も子もない」
3 犠牲者は圧倒的に住民である
 「兵隊の死者はごく少ない。ほとんどは戦場となった地域の住民である。しかもほとんどが餓死である。米粒一つ残らず『友軍』に奪われるからである」
(例1)1931年5月の江西省と湖南省における対共産党戦に関する楊将軍の報告
    江西省:戦死者18万6000人、難民の死者210万人、焼失家屋10万棟
    湖南省:戦死者7万2000人、焼失家屋12万棟
(例2)1932年11月の湖北省における共産党の掠奪に関する湖北省知事報告
    死者35万人、家を失った難民350万人、焼失家屋9万8000棟

 タウンゼントは「これはほんの一部に過ぎない。この数字を疑う理由はない」と、以下のことから確信的に述べる。何故かというと、「住民を守るべき軍が逆に食料を取り上げ、飢え死にさせ、あるいは焼打ちにする」からだという。しかし、「将軍たちはこういうことは報告しない」と述べる。自分が指揮する軍隊のだらしなさや、犯罪的所業を認めることになるし、そもそも、中国においていつでもどこでも繰り返されているからだともいう。
 また、「中国は国内で争い、日本はまとまって外国と戦っている」ともいう。そして、「中国人と日本人は全く違う人間であるが、アメリカ人には違いがわからない。地理的に近いから性格も似通っていると思っている」が、「米国で流布している中国観が全く実情を反映していない」という。
 因みに、シナ事変を裏から支えたルーズベルト大統領は、真珠湾攻撃が始まって間もなく、タウンゼントを牢獄に繋ぐことになる。政権に、批判的な人物の口を塞ぐ態様は、こうした状況が今も続く中国に似ていなくもない。
 中国では敵国軍にやられる以上に、自国の軍隊や匪族・盗賊にやられる分が大きい。南京事件でも逃げる自国軍を督戦隊が殺したことは知られるが、それ以上に兵士に殺された住民も多かったのではないだろうか。南京事件でこのことを語ったものは寡聞にして知らない。

(平成27年7月15日記す)