マナーも携帯する


元陸上自衛官 現星槎大学非常勤講師 森 清勇

 日本人の道徳が乱れてきたと言われて久しい。原因を特定するのは簡単ではない。ただ言えることは、GHQが戦後日本の伝統や文化、家族制度などを崩壊させたことが大きな要因の一つではないだろうか。
 敗戦後の日本は困窮と塗炭の苦しみから、その日の生活に追われ、GHQが与えた条件の中で生き抜くのが精一杯であった。
 そうした中で、GHQに協力して検閲などを行った日本人は、英語に堪能な東大や外語大などの卒業生や在学生たちがほとんどであった。彼らは平均的日本人サラリーマンに比べると驚くほど高額の給料を受け取っていた。
 しかも、占領期間が終わると、教育界や出版界・メディア界などに就職するが、日本の文化や伝統の破壊に協力した手前、憲法制定の経緯や東京裁判、更には検閲自体を批判することができず、ほとんどは左翼的な知識人として活躍したのである。
 米国製日本国憲法で家長がなくなり、家庭における躾などの基本がほとんど看過されるようになった。婚姻も完全に二人だけの合意で可能となり、親さえも無関係で核家族は必然であった。
 また、多くの国民は米国文化(筆者はベーコン文化と呼ぶ)の便利さ、表面的な美しさに圧倒されて嬉々として受け入れた。その究極にあるのがコンビニエンス・ストアーではなかろうか。その盛況に反比例するように、日本の家庭が崩壊し、道徳がすたれていったように思えてならない。
 *********************************************************
 KDDIのADSL伝送方式が変更されたのを機会に、auのwi-fiに切り替えた。その説明書に何と「マナーも携帯する」と書いてあり、納得するものがあった。買い手を唸らせる、巧妙な注意書きである。自動車や自転車の運転中、また街中や通行の邪魔になる場所、更には満員電車などでのauの使用はだめですよというのだ。
 ここで、かつてコンビニに「道徳も合わせて売って欲しい」と依頼したことを思い出した。近くのコンビニ店を通じて本社に伝えてほしいと依頼文書を渡すと、ご意見ありがとうございましたと返信が来た。
 仕事帰りの道や駅などで、コンビニで買った袋やマクドナルドの包装紙などが散乱している状況を見ない日はなかったので、コンビニやマクドナルドなどがマナーを乱す元凶ではないかと思っていたからである。
 コンビニは災害などの非常時もいち早く開店するなどして、日常だけでなく非常時も有用な存在になっている。しかし、このことと道徳は別だと思うし、経費がそんなに嵩むとも思えない。「包装紙はごみ箱に捨てましょう」とか、「残りは持ち帰りましょう」といった「注意書き」を手渡す袋に書くだけで日本人には十分だと思ったからである。
 コンビニなどのゴミの散乱は少なくなったが、携帯を見ながら歩きや運転などは依然として多く、大きな事故にもつながっている。現代の利器が弊害をもたらすようでは、本当の利器とは言えないであろう。

(平成27年12月15日記す)