「先見の明」があった、貴重な二つの「聞き取り調査」


元陸上自衛官 現星槎大学非常勤講師 森 清勇

 日本の名誉を棄損しかねない問題が韓国発の「従軍慰安婦」と中国発の「南京大虐殺」である。事案の定義にまず問題があるが、筆者が各種資料を読んだ限りではいずれも存在しなかったと理解する。
 しかし、両国は自国の国内事情と一部の日本人による補強を得て、また日本(政府)が「資料は見つからなかった」との反論しかしないことをいいことに、事実を捻じ曲げ拡大さえ行ってきた。
 中国に至っては、嘘八百の南京大虐殺が国連の世界記憶遺産に登録されたことで一段落したと見たか、新たに日本軍による従軍慰安婦は40万人で、中国人慰安婦が20万人いたと言い出した。
 こうして「資料は見つからなかった」では不十分なことが分かる。そもそもなかった事案であるから、政府を挙げて探しても「資料がない」「日記等もふれていない」わけで、「(事案があったとする)資料が見つからない」のはむしろ当然である。
 日本が反論に使う「資料が見つからない」では、相手に「探し方が足りない」「自分の国にはこんなに資料があるぞ(しかし、公開はしない)」などと、一方的な資料で言われ、事態は拡大するばかりである。現に、世界記憶遺産登録に使われた資料の適格性には問題があると指摘されている。
 従軍慰安婦は日韓の政府間の「最終的かつ不可逆的」な解決の合意によって、また南京大虐殺は中国が日本の反対を押し切って世界記憶遺産に登録した時点で、歴史家に任せるべき歴史問題から政治問題に発展したことを意味している。
 このことは、今や日本政府が「明確」に、慰安婦の「強制連行」は無かったし、南京市民の「大虐殺」もなかったということを正面に立って世界に向けて反論するべきであるということだ。

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 ここに慰安婦の実体と南京事件に関する二つの貴重な聞き取り調査がある。
 中村粲獨協大学名誉教授は慰安婦問題に関して、本来は政府が行うべき事案であるにも拘らず、慰安婦自身からではなく、占領地などの慰安婦や慰安所などの管理運営などに関わった軍人や官吏らの証言と手記を集めて、「昭和史研究所会報」に掲載していた。
 当事者ではないだけに、また管理者などもおり、利害や名誉を度外視した、見たまま聞いたまま、更には行ったままをより率直に述べており、慰安婦の実体を客観的に明らかにしている。そうした一部が、『正論』(2014.12~15.2)で、都合113ページにわたり、約50人の証言として掲載されている。
 他方、南京事件については中国が大虐殺を主張し始めたこともあって、偕行社が『南京戦史』『南京戦史資料集』として、戦闘行動や関係者の日記や手記などを纏めている。大虐殺など無かった決定版ともみられたが、中国はこうした戦史とは関係なく、一段と声高に「大虐殺」を喧伝している。
 是より数年前の昭和60年前後、阿羅健一近現代史研究家は、現地で実際に関係した軍人や従軍した記者、作家など48人に聞き取り調査を行っていた。
 「資料がない」「記述がない」ことは、そうした実情が実在しなかったことから当然であるが、中韓が出鱈目を捏造して世界に流布する以上は、日本も「否定する」証人を持ちだし、語ってもらう必要がある。
 記憶もあやふやで証言もころころ変わる朝鮮人慰安婦や、本多勝一が聴取した中国共産党誂えの人物よりも、中村・阿羅両氏の選んだ人物たちの証言の信憑性の方がはるかに高い。当時の実情を伝えるこれ以上のものはないであろう。
 この二人にこそ、「先見の明」があったということであり、政府の大いに活用すべきであろう。

(平成28年6月19日記す)