朝鮮半島有事に何をすべきか!

山下 輝男  
H29/4/14記

 風雲急を告げる朝鮮半島情勢は最悪の場合、朝鮮半島有事となり、我が国にも極めて重要な影響を及ぼす。平和安全法制が整備され、有事対処態勢が一応整備されたとはいえ、まだまだ心許ない状況である。
 何が問題点で、どうすればいいのだろうか、少しく検討してみたい。

1 新たなステージに突入した北朝鮮の脅威
 北朝鮮は、昨年からミサイル発射を繰り返している。去年4月と7月、8月には、SLBMを発射した。更に、7月と9月には、日本も射程圏内に入る中距離弾道ミサイルなどを3発連続で発射してきた。
 そして、今年2月には、日米首脳会談の最中の2月12日日本海に落下する弾道ミサイルを発射した。さらに3月6日には、初めて4発もの弾道ミサイルを同時に発射し、そのうち3発が日本の排他的経済水域内に落下した。また、米中首脳会談を控えた4月5日にもミサイルを発射した。これらは、日米に対するあからさまな挑発である。
 4月15日の金日成生誕105年の軍事パレードでは北極星1型(SLBM)、2型やICBMを参加させる等軍事力を誇示し、日米を牽制した。激越な言辞は従来通りだ。流石に核実験やミサイル発射は、強行しなかったが、トランプ政権の断固たる決意に屈したからか?
 何れにしろ、北朝鮮は同時数発発射能力を向上させ、その精度も著しく増大しており、また発射兆候発見困難な固体燃料の使用、移動式で捕捉困難でもあり、識者の間では新たなステージに入ったと云われる。核弾頭の小型化も進捗し、また、猛毒のサリン等の化学兵器物質弾頭も、何れ実戦配備、否既に実戦配備されている可能性も高い。
 北朝鮮の化学兵器保有量は、2,500から5,000トンとも云われる。核弾頭や化学物質弾頭の開発と運搬手段の進捗は東アジア各国に対して深刻な脅威となっている。
 何れ崩壊する(と半ば期待を込めて囁かされた)とみられた北朝鮮は、国際社会の経済制裁にも耐え(最も血の同盟と云われた中国からの密輸入等の支援がある限りにおいては崩壊はしないし、中国がさせないのだろう。)、正にしぶといと云うべきだ。
 核・ミサイル開発こそが、米国と対等の立場で話し合える唯一の道・方策であると信じて核・ミサイル開発に狂奔している。
 絶対的同盟国である中国の意向を以前ほどには忖度しないようになってきた感がある。核・ミサイル開発の進捗が、米国のみならず中国に対しても強硬化しつつあるやに見える。中国も持て余し気味ではないだろうか。
 何れにしても、北朝鮮の脅威は、時間の経過と共に益々高まっているのが現実だ。北朝鮮の脅威を斯くまで増大させた責任は偏に米国の優柔不断と中国に後援にあるのは事実だ。この両国の責任は重且つ大だ。

2 米国の最近の動きは、断固たる決意の表れであり、有言実行そのもの
 北朝鮮情勢に関する米国の最近の動きは、かなり急である。トランプ大統領は、「全ての選択肢がテーブルの上に置かれている。」と言明し、「中国が解決に消極的であれば米国は単独での対処も辞さない。」とまで述べている。ティラーソン国務長官も、軍事行動を含むあらゆる選択肢の考慮を明言し、政権内で所謂「予防攻撃論」が相次いで取り沙汰されている。北が核実験決断なら先制攻撃と米高官が発言したとも言われる。
 具体的行動でも瞠目すべき事が幾つかある。その第一は、4月6日、アサド政権軍の支配下にある空軍基地に対し巡航ミサイル59発による攻撃を行ったことであり、CSSカール・ヴィンソンをはじめとする第一空母機動打撃群を朝鮮半島近海に派遣した事であり、更には、13日、アフガニスタンのイスラム過激派組織「イスラム国」に対し、核兵器ではない通常兵器で最大の威力があるとされる大規模爆風爆弾「MOAB」(モアブ)を使用したことである。
 これらから云えることは、米国は以前のオバマ政権と違って、自国及び同盟国の安全保障に関わる事項について、必要とあらば軍事力の行使を躊躇わないということであり、やると明言したことは必ず実行する、文字通り有言実行である。トップリーダーや世界警察官たる超大国は、自ら及び世界が目指すべき方向を明示し、何が許され、何が許容されないのかを明らかにする必要があり、そういう意味においては、米国は世界の警察官としての役割をしっかり果たそうとしているように見える。望ましい方向であると云えよう。
 米中首脳会談、さる12日の米中首脳電話協議等々を見るに、米国の断固たる決意を認識した中国は北朝鮮問題について従来の主張を変化させたようにも思える。対話と協議による解決から平和的方法による解決、非核化の堅持と一歩譲っているようだ。水面下ではさらに突っ込んだ議論が行われている可能性すらある。真偽は不明だが、金正恩の亡命も検討の俎上にある?
 さしもの、中国も北朝鮮の態度に痺れを切らしたのだろう。中国に脅威とならない程度の体制転換を図っているのではなかろうか?中国よりの国家で米韓とのクッションアブソーバーになってくれる保証があれば中国にとっては望ましい状況だろう。米国はそこまでは許容すべきだ。
 北朝鮮に対する大戦略がこれだ。「北朝鮮の4回目の核実験を受けての緊急提言」(http://www.jpsn.org/opinion/word/9458/)と題してJPSNに大戦略を提言したが、その方向に進みつつあるのではと自画自賛している。

3 我が国対応や如何?
 朝鮮半島有事に日本は如何に対応すべきか、森友問題等に現(うつつ)を抜かす国会に失望を禁じ得ないのは小生のみではあるまい。眼前の脅威を見たくないとに心理状態は理解出来なくもないが、一般庶民ならばそれも許されるが、ステーツマンはそうであってはならない。
 それはさておき、風雲急を告げる朝鮮半島の情勢に我が国は如何に対応すべきかを検討する必要がある。
 詳細を論ずるのではなく、どうすべきかの処方箋の概要を明らかにしたい。

(1)警戒・監視及び抑止態勢の確立を!
 北朝鮮の挑発行動を如何に迅速に把握するか、或いは日米の体制によって北朝鮮の挑発行動を抑止する方策を実行すべきであり、伝えられる海上自衛隊の護衛艦とカール・ヴィンソンの共同訓練は効果的だろう。

(2)ミサイル防衛態勢の早急なる構築を
 現在の自衛隊のミサイル防衛態勢は、北朝鮮の不意急襲的同時多数発射ミサイルには極めて脆弱だ。
  ①MD能力の増強策を講ぜよ。
  ②警戒監視能力と国民への警報手段の迅速確実性多様化の方策を。
  ③米軍とのミサイル防衛に係る戦略調整を、敵基地攻撃に関する事項を含む。
  ④国民保護の方策を周知すべし 核ミサイル攻撃を受けた場合の個人の対応策を周知徹底する必要がある。
  ⑤中長期的に検討されている事項の前倒しをすべし。

(3)避難民対応
 北朝鮮が崩壊することにでもなれば、北朝鮮から日本に避難する者がかなりな数になろう。以前の研究結果では、10~15万人が日本に流入するとされる。その中には武装難民も含まれる。彼らを如何に収容し、選別し、管理するか、そもそも入管当局にそんな能力があるのか?
 韓国内が大混乱に陥れば、韓国からの避難民も相当数あるものと覚悟すべきだろう。ン十万単位での避難民となるかも知れぬ。
 これら避難民を野放しには出来ないが、さりとて管理しうる能力はない。日本の治安機関の能力を遥に超えることは明らかだ。

(4)テロ対処態勢
 北朝鮮の最も得意とする戦争形態は非対称戦である。北朝鮮には、韓国の防衛白書では、北朝鮮軍の特殊作戦兵力は20万人余りに達するとも評価されている。
 彼等の一部でも日本で暗躍すれば、日本国内ではテロが頻発するだろう。政経中枢や原発、重要インフラ、ソフトターゲット等々の警備は万全か?極めて厳しい。
 ではどうするのか?治安機関の能力は限界があり、また個人個人の自己防衛には無理がある。
 テロ攻撃の目的・狙いが何か、論が別れるところではあるが、優先順位と重要度に応ずる警備体制が必要だ。また、サイバー攻撃対処も重要だ。
 また、国会で審議中の所謂共謀罪の速やかな成立が必須だ。

(5)在留邦人の保護
 在韓邦人は旅行者を含み、約57000人と推定される。平和安全法制の施行により、自衛隊による邦人救出・輸送は可能となったが、自衛隊単独の実効は困難であろう。
 米軍の協力は不可欠だし、何よりも韓国との調整が必要だ。長嶺大使の帰任はそれの為であるとの論もある。情勢の推移によっては渡航禁止等も必要だし、法人の事前引き上げも考慮されるべきだ。

(6)在日米軍基地の防護
 北朝鮮は、ミサイル発射に際し在日米軍基地に対する威嚇を公言しており、直接・間接の脅威があろう。自衛隊の夜米軍基地の警備は法的に可能だが、自己基地等の警備の問題もあり、隊力的には厳しいものがある。優先順位の設定と警備隊力の適切な見積もりが重要だ。

(7)米軍に対する自衛隊(等)による後方支援
 重要影響事態安全確保法により、重要影響事態に際しては、米軍等に対して後方支援を行うことが可能となり、支援メニューも拡大された。重要影響事態の認定に時間を要することも懸念されるので、政治レベルにおける事前の周到な検討・研究が必要だろう。事後承認も可能とはいえ、事前承認の原則を遵守すべきだろう。泥縄にならぬことを願う。
 自衛隊以外の機関による米軍に対する支援も必要な場合があろう。事前シュミレーションして対応を検討しておくべきだ。

(8)事態対処態勢の確立
 平和安全法制により、事態対処法に「存立危機事態」への対処が追加された。これにより、存立危機事態と認定された場合には、武力行使に当たる活動が可能となった。米艦防護、機雷掃海等の集団的自衛権の行使が可能である。

(9)非常事態法の制定を!
 我が国法制の最大の欠陥は、非常事態法制の欠如だ。議論は出尽くした感がある。後は決断あるのみだと思うが、これが実は意外に大変だ。本丸から攻めるのではなく搦め手から攻めているようで隔靴掻痒の感がある。
 JBpress寄稿論文:緊急事態基本法の制定を急げ!2011.6.27(月)
   http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/12470

(10) 国民への周知徹底を!
 国家の危機に際しては、政府と国民が危機感を共有することが肝要である。国民がパニックに陥る可能性・懸念があるとして、所要の情報を出し渋ることがあってはならない。勿論、秘匿を要する情報もあり、出し方には工夫が必要だろうが、国民の一体的危機対処こそが最高の危機管理である。

4 終わりに
 永年の懸案事項であった平和安全法制が施行されて、初めて見舞われた日本に対する 本格的な非常事態である。平和安全法制により、有事法制が一応整備されたとはいえ、まだまだ不十分な面も多々あろう。直面する危機に最適・最良の対処をするために何が問題なのかを検討して所要の措置を講ずるべきだ。非常事態対処法が欠如しているのが最大の欠陥ではないだろうか?
 先ずは、為しうる限りの当面の措置を講じ、時間の余裕を見つつ如何にあるべきかを検討しなければならない。

(了)