ミサイル攻撃と国民保護!

山下 輝男 
H29/4/27

1 初めに

 国際社会の制止にも拘らず強行される北朝鮮による相次ぐ核実験やミサイル発射に対して、米国トランプ新政権は、オバマ政権の所謂戦略的忍耐策からの決別を宣言し、あらゆる選択肢がテーブルにあると明言している。一方、中国に対しては、経済関係の諸問題を一時棚上げしてでも北朝鮮に対して実質的な圧力を加えるように強力に求めており、さしもの中国も米国の意に沿う方向で圧力を掛け始めているように見える。
 一方、北朝鮮は、軍事パレードで各種のミサイルや特殊部隊を登場させ、過激な言辞を吐いて、米国の軍事圧力には屈しないと云う姿勢を明確にしている。
 斯様に、風雲急を告げる朝鮮半島情勢に日本政府も対策を講じつつあるようだ。ミサイル攻撃が俄然切迫感、現実味を増してきたことで、泥縄的(言い過ぎかもしれぬが、)であるが、対策が採られつつある。
 ①在韓邦人の避難・救出の検討・調整 ②日米共同訓練等による抑止力の誇示 ③国民保護の為の施策(都道府県危機管理者に対する指導、避難訓練の実施等の要請、ミサイル攻撃に際しての対処要領の周知徹底等)が報じられている。
 本稿は、喫緊の脅威である北朝鮮のミサイル攻撃に対し、国民の保護を如何に確保するについて検討するものである。
 国民に与える被害を如何に最小限化するかという観点とミサイル攻撃を如何に抑止し、対処するかという観点があるが、被害の最小限化をメインとしたい。

2 北朝鮮のミサイルの脅威総括

(1)日本(在日米軍基地を含む)に指向され得るミサイル

 北朝鮮の弾道ミサイルの射程(防衛白書H28年版)
  
 最近の中距離弾道ミサイルの発射事案
 北朝鮮は、去年からミサイル発射を繰り返している。去年4月と7月、8月には、潜水艦にミサイルを載せて発射場所を感知されずに発射できる弾道ミサイル、SLBMを発射。7月と9月には、日本も射程圏内に入る中距離弾道ミサイルなどを3発連続で発射してきた。
 そして、今年2月には、今回発射されたものと同じとみられる新型の中長距離弾道ミサイル“北極星2型”を発射。さらに先月には、初めて4発もの弾道ミサイルを同時に発射し、そのうち3発が日本の排他的経済水域内に落下した。
 北朝鮮の弾道ミサイルについて、飛行精度や安定性、連続発射能力などが「全般的に向上している」と指摘されている。先般のパレードでは、新型ミサイル等と推定されるものを含め、7種類の弾道ミサイルを公開した。安保筋は新たなステージに入ったと評価するが、正にその通りだ。発射の詳細は割愛する。
 昨日25日の軍創設記念日に核実験や弾道ミサイル発射が行われ朝鮮半島有事が惹起するかもしれないと懸念されたが、北朝鮮は長距離砲の射撃訓練を実施して過激な行動を回避した。Xデーは回避されたが、日本に対する弾道ミサイル攻撃の脅威が減少したわけではない。

(2)弾頭の種類による脅威 NBCR

 北朝鮮のミサイルの弾頭はNBCR弾頭であることに疑いを容れない。小型化がどこまで進展したかについては諸説あるも、従前に比して格段にNBCRの脅威が増大していることは確実だ。北朝鮮がNBCR弾頭を用いないという保証は全くない。
 NBCRに係る被害想定は明確ではないが、極めて厳しいものがあろう。地下鉄サリン事件を想起すればいい。多分、サリン事件の比ではなかろう。戦慄すべきレベルになると覚悟すべきだ。
 では、その被害想定は如何ほどか?各種の条件によって被害が異なるのは当然であり、一概に如何ほどと云えないのが実情だ。
参考までに一例を示そう。
http://www.sankei.com/life/print/130223/lif1302230022-c.html
『【花田紀凱の週刊誌ウォッチング】(400)42万人死亡!?永田町に北朝鮮核シミュレーション
 北朝鮮が東京に核ミサイルを発射した場合、永田町に着弾すると死者約42万人、ラッシュ時の新宿駅であれば死者は130万人。
 米ヘリテージ財団研究員だったデクスター・イングラム氏(現米国務省大量破壊兵器テロリズム事務所シニアアドバイザー)らが米国防総省の軍事シミュレーションソフトを駆使してはじき出した試算結果を、『週刊文春』(2月28日号)が紹介している。
 氏が共同執筆した『ウォー・シミュレイション 北朝鮮が暴発する日』(新潮社)によると、〈十二キロトン級の核ミサイルが永田町付近に着弾した場合、半径二・五キロが“グラウンドゼロ”と呼ばれる致死率九〇%以上のエリアになる。そのエリアにいた人間は、苦痛を感じることもなく、カメラのフラッシュのような閃光(せんこう)を見た瞬間に消える〉
 千代田区のほぼ全域と港区の半分、新宿区、中央区の一部が〈一瞬にして壊滅し、約十万人が核爆発直後に死亡する。さらに火事や強い放射線被曝、酸素欠乏などにより、約三十二万人が三十日以内に命を落とす〉。』 (以下略)
 実に戦慄すべきデータが示されている。誇大妄想と見くびってはなるまい。化学兵器の怖さは、地下鉄サリン事件を想起すればよかろう。生物兵器については例えば感染症を考えれば良い。
 北朝鮮は、核は勿論化学兵器も生物兵器も必要且つ十分な量を保有しているのは明らかだ。

(3)可能行動見積

 最も、北朝鮮がやみくもに永田町を標的としてミサイルを発射すると断ずる訳にはいかない。日米との全面的対決を辞さずということであれば、政経中枢、在日米軍基地、原発等がターゲッティングのリストに挙げられよう。が、日本に対して日本の継戦意思の粉砕、日米離反の強要を狙うのであれば、それほど被害が大きくならないレベルでの目標を選定するであろう。

3 当面の対処方策

 当面処置すべき事項としては、国民に与える被害を如何に最小限化するかという観点とミサイル攻撃を如何に抑止し、対処するかという観点があるが、国民保護というテーマでもあり、被害の最小限化をメインとしたい。
 そのための措置事項は、如何に警報等を発令するか、着弾に際して如何に身を守るか、被害の拡大等防止するために何を為すべきか等が重要事項である。

(1)迅速な警報の発令と国民への周知

 警報に関する基本的事項
 ●警報の目的:注意喚起及び避難準備の促進
 ● 警報等が発令される場合は次の通りである。
  ① 武力攻撃予測事態、
  ② 武力攻撃事態と認定時に改めて、
  ③ 武力攻撃の状況の変化に応じ
 ● 警報と緊急通報の差異 主として発令権者の相違
  警報:国の対策本部長が発令する。
  緊急警報:警報の発令がない場合において、都道府県知事が発令する。
 警報等の国民への伝達等
 ● 知事を通じ市町村長・関係機関へ
 ● 市町村長は、所定の方法(伝達先、手段、伝達順位)で、
  住民及び関係ある公私の機関へ
 伝達手段等
 防災行政無線(J-Alert)、広報車、消防団の活用、指定放送業者、HP、SNS等
 Lアラート(災害情報共有システム)
 ●全般概要図
  
 ●平成26年4月1日から、国民保護に関する情報の緊急速報メール配信が開始
 ●国民保護に係る警報のサイレン音
  国民保護ポータルサイトで視聴可能
   http://www.kokuminhogo.go.jp/arekore/shudan.html

 J-Alert:弾道ミサイル情報、津波情報、緊急地震速報等、対処に時間的余裕のない事態に関する情報を、人工衛星を用いて国(内閣官房・気象庁から消防庁を経由)から送信し、市区町村の同報系の防災行政無線等を自動起動することにより、国から住民まで緊急情報を瞬時に伝達するシステム
  ●経緯等:平成19年 2月 運用開始(4市町村)
  ●整備状況(H26.5月現在)
   自動起動装置整備済み市町村(※) 1,629団体/1,741団体 (93.6%)
  ●概念図
   
  ●伝達所要時間
   実験結果によれば、情報の受信までは1~2秒(更に1秒程度まで短縮する予定)であるが、その後の自動起動による放送までには5~23秒を要している。10秒程度が期待されている。

 L-Alert(エルアラート)(災害情報共有システムの通称)
ローカルlocal(地域)の頭文字と緊急警報を意味するアラートalertを組み合わせた造語。
 中央官庁や地方公共団体、交通関連事業者など災害関連情報の発信者と各種のメディアとの間で、災害などに関する情報を効率的に共有する情報基盤である。緊急時に避難情報(準備・勧告・指示)、避難所情報、災害対策本部設置状況、被害情報、気象警報や注意報、土砂災害警戒情報、洪水予報などが、災害情報共有システムを通じてさまざまなメディアと共有される。
 この仕組みにより、住民は避災や減災のための正確な災害情報を、防災行政無線、携帯電話やスマートフォン向けの緊急速報メールや防災アプリ、駅や街頭などのデジタルサイネージ(電子看板)、テレビやラジオ放送、インターネット、ワンセグ配信、災害時に無料で飲料が取り出せる災害対応自動販売機などから入手することができる。
 事業主体である財団法人マルチメディア振興センターが2009年(平成21)から実用化試験を開始し、2011年6月から実用サービスを開始した。運用当初の名称は公共情報コモンズであったが、よりわかりやすい名称にするため、また弾道ミサイル情報や緊急地震速報を配信するJアラート(全国瞬時警報システム)と一対になった運用を進めるため、2014年8月に改称された。2016年8月時点で、41都道府県で運用されており、2018年度中に全国で運用開始が見込まれている。
概念図

 

 個人の警報等の入手法
 市町村が行う伝達法による他①ラジオ.TV等 ②エリア・メール等

 弾道ミサイル発射のL-Alertによる情報提供要領(国民保護ポータルサイト)
 北朝鮮が予告することなく弾道ミサイルを発射した場合には、政府は、事前連絡なく、 Jアラートを使用する。
① 弾道ミサイルが日本に飛来する可能性があると判断した場合に、まず、弾道ミサイルが発射された旨の情報(①)を伝達する。 弾道ミサイルがどこに落下するか等については、続報で伝達する
② その後、弾道ミサイルが日本の領土・領海に落下する可能性があると判断した場合に、続報として屋内避難の呼びかけ((1)②)を 行う。
③ このほか、弾道ミサイルが日本の領土・領海に落下したと推定された場合((1)③)や、日本の上空を通過した場合((2)②)、日本まで飛来せず、領海外 の海域に落下した場合((3)②)には、その旨を続報として伝達する。
 

 課題等
 警報の発令システムには、種々構築され、逐次に改善もされている。然しその警報システムがいざという場合に、どの程度有効なのかは不明である。従って、訓練、実験を行いその信頼性を不断に高める必要がある。
 また、J-Alertを発令するか否かは、発射の兆候及びその弾頭が日本に着弾する可能性の適切な判断に拠る。日本独自の衛星情報の他、米国の早期警戒情報の速やかな提供受けが必須である。

(2)被害局限策

 被害の最小化策概要
 現在の我が国のミサイル対処では、万全の態勢は無理だと云えよう。第一撃は止むを得ず受けざるを得ないだろし、多数の弾道ミサイルを完全に弾着以前に撃墜し得る可能性は低い。我が方の迎撃システムが配備されている正面では高い迎撃能力を示すだろうことは疑いを容れるものではないが、日本の全領域をカバーし得るものではないとすれば、ある程度の被害は覚悟せざるを得ないだろう。
 国民保護における武力攻撃災害への対処については、小生の解説記事を参照して頂きたい(http://yamashita2.webcrow.jp/kokuminhogo-main.html#6)が、その項目のみ示せば以下の通りである。
①兆候の通報義務及び警報・緊急通報
②国・地方公共団体の責務
③生活関連施設等の安全確保の措置等(立入制限区域設定、避難等の措置)
④各種の武力攻撃災害に応ずる特定の措置等
⑤応急措置等
⑥NBC攻撃による災害への対処
  退避指示、警戒区域設定、健康被害防止上の注意喚起、汚染拡大防止のための措置

具体的には国民保護ポータルサイトに記載されている。
 http://www.kokuminhogo.go.jp/shiryou/hogo_manual.html
  ●警報が発令されたら
  ●身の回りで急な爆発が起こったら
  ●武力攻撃などに応じた避難などの留意点
   弾道ミサイル攻撃の場合、NBCRが用いられた場合

 弾道ミサイル落下時の行動についての緊急周知事項
 政府は4月21日、J-ALERTによる緊急情報の伝達があった際の身を守るためにとるべき行動をとりまとめ、内閣官房のホームページにある「国民保護ポータルサイト」に掲載した。(http://www.kokuminhogo.go.jp/pdf/290421koudou2.pdf

 

 課題
 既述のように、政府は各都道府県の危機管理担当者を集めて所要の指示を行った。避難等の訓練をせよ、周知させよ、システムを点検せよ等の指示が為されたのだろう。
 政府の危機感を各地方公共団体が共有し得るか否かが課題だ。早速にHPに掲載している地方公共団体もあれば、残念ながら、対応の遅い団体もあるようだ。

(3)武力攻撃事態等の事態認定と発令
 弾道ミサイル攻撃に関する事態認定について管見する。事態認定がない状態では、破壊措置命令で対処し、事態認定がある場合には、その枠組みの中で対処することとなる。
 何れにしろ、国民に対して、我が国が直面している事態を明確に認識して貰うことが極めて重要である。その事により、脅威・危機が全国民に共有される。確かに事態認定には、組織的か否か、緊迫度、可能度等々複雑であるが、迅速に情勢に応ずる事態認定を行い、対処策を早め早めに講じなければならない。

 事態区分とその定義等
 緊迫度によって、武力攻撃予測事態(予測事態)、武力攻撃切迫事態(切迫事態)及び武力攻撃発生事態(発生事態)の3段階に区分されている。
先ず、夫々の定義を確認したい。
① 予測事態とは、自衛隊法77条の防衛出動待機命令を下令し得る事態である。その時点における国際情勢や相手国の動向、我が国への武力攻撃の意図が推測されること等から見て、我が国に対する武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態であるとされる。
② 切迫事態とは、武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していることが客観的に認められる事態をいう。具体的にどのような場合であるかについては、事態の現実の状況に即して個別具体的に判断されるものであるため、仮定の事例において、限られた与件のみに基づいて論ずることは適切ではないが、敢えて言えば、例えば、ある国が我が国に対して武力攻撃を行うとの意図を明示し、攻撃の為の多数の艦船又は航空機を集結させている等から見て、我が国に対する武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していることが客観的に認められる場合であるとされる。この事態においては、防衛出動の発令は可能であるが、武力行使による反撃は不可とされる。
③ 武力攻撃事態とは、隊法76条の防衛出動を下令し得る事態である。武力攻撃とは、我が国に対する外部からの組織的、計画的な武力の行使を云う。

 弾道ミサイル発射と事態認定について
 現在の枠組みによれば、次のようになっている。
 ①武力攻撃事態が認定され防衛出動が下令されている場合と
 ②防衛出動が下令されていない場合

 ①の場合には防衛出動により対処することとなる。
 ②の場合には、自衛隊法第82条3項の破壊措置命令を発令して対応することとなる。

 弾道ミサイル等に対する破壊措置(隊法82条の3)
本破壊措置は、シビリアン・コントロールを確保しつつ、迅速かつ適切な対処を行なうことを可能とすることを目的として規定されたものである。
 対象は、弾道ミサイルその他その落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であって航空機以外のもの(弾道ミサイル等)とされ、人工衛星の打ち上げが失敗し地上に落下する場合も該当する。現在は常時破壊措置命令が発令された状態である。
 同命令が発令される事態及び要件は、次のとおりである。

① 弾道ミサイル等が我が国に飛来するおそれがあり、その落下による我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため必要があると認めるとき(自衛隊法第82条の2第1項)。
② 事態が急変し、内閣総理大臣の承認を得るいとまがなく我が国に向けて弾道ミサイル等が飛来する緊急の場合における我が国領域における人命または財産に対する被害を防止するために必要な場合(隊法82条の2第1項)

 事態認定に関する新たな動向
 4月18付の読売onlineによれば、「政府は北朝鮮が日本領海内に弾道ミサイルを発射した場合、自衛隊への防衛出動が可能となる「武力攻撃切迫事態」に認定する方向で検討に入ったとされる。
 何れにしても、事態認定の迅速性は弾道ミサイルの特性を考えれば極めて重要である。迎撃手段のみではない全ての資源を活用した対処をより早く取り得るようにする必要性が高い。
 事態認定手続きにもたついてはなるまい。政府及び国会での迅速な対応を期待したい。


(4)抑止・対処力向上について
 本稿のテーマではないので、詳細は省略するが、折角の機会であるので少々述べたい。

 迎撃体制等

(ア)概要
 我が国の弾道ミサイル防衛の基本的考えは、重層防衛である。即ち、イージス艦による上層での迎撃とペトリオットPAC-3による下層での迎撃を、自動警戒管制システム(JADGE)により連動させて効果的に行おうとしている。イメージ図は以下の通りである。(出典:防衛白書)
 

①海自イージス艦 6隻(こんごう型4隻、あたご型2隻)
 イージス・システムは・広範囲かつ正確な索敵能力・高速・正確な情報処理能力
 ・多目標に同時対応できる対空能力を特徴とする高性能な装置である。一般的に10個近い目標と同時に交戦できる。
  搭載ミサイル:SM-3の場合:最大射程2000km・最大射高1000km超とされる。
②空自ペトリオット部隊 6コ高射群(24コ高射隊) 各高射隊5個発射機装備
 PAC-3による防護範囲は、短距離弾道ミサイル(SRBM)に対しては、発射機より左右に各35km、前に40km、後に10kmの扇状の範囲とされるが、ノドンなど、準中距離弾道ミサイル(MRBM)攻撃では、半径20kmの扇状の範囲にまで縮小するとされる。
(SM-3.PAC-3の性能のデータはwikipediaによる。)

(イ)撃墜可能性について
 SM-3にしろPAC-3にしろ、その迎撃成功率は90%又はそれ以上であると推定され、我が国の海・空自隊員のレベルは極めて高く北のミサイル撃墜可能性は結構高いだろう。
 然しながら、同時多発発射、不意急襲発射或いは工夫された特別の発射方式等により、完全に撃墜することは難しいと断じざるを得ない。素より防御に完全は有り得ないのだ。撃ち漏らしは当然生じるものと覚悟せざるを得ない。

(ウ)ミサイル迎撃能力の急速造成
 中期防衛力整備計画及び今年度防衛予算に計上されている事項のうち、可能なものについては前倒し事業化を行うべきだろう。間に合わないかもしれないが、可能な限りの努力はすべきだ。

① 中期計画では、北朝鮮の弾道ミサイル能力の向上を踏まえ、我が国の弾道ミサイル対処能力の総合的な向上を図るとしている。弾道ミサイル攻撃に対し、我が国全体を多層的かつ持続的に防護する体制の強化に向け、イージス・システム搭載護衛艦(DDG)を整備するとともに、引き続き、現有のイージス・システム搭載護衛艦(DDG)の能力向上を行う。巡航ミサイルや航空機への対処と弾道ミサイル防衛の双方に対応可能な新たな能力向上型迎撃ミサイル(PAC-3MSE)を搭載するため、地対空誘導弾ペトリオットの更なる能力向上を図る。さらに、弾道ミサイルの探知・追尾能力を強化するため、自動警戒管制システムの能力向上や固定式警戒管制レーダー(FPS-7)の整備及び能力向上を推進する。

②今年度予算(項目のみ)
 a イージス・システム搭載護衛艦の能力向上
 b BMD用能力向上型迎撃ミサイル(SM-3ブロックⅡA)の日米共同開発
 c BMD用能力向上型迎撃ミサイル(SM-3ブロックⅡA)の取得
 d 能力向上型迎撃ミサイル(PACー3MSE)の導入等
 e PAC-3ミサイルの再保証
 f 固定式警戒管制レーダーの換装(FPS-7)及びBMD機能の付加
 g 将来の弾道ミサイル迎撃体制についての調査研究

 敵基地攻撃能力の保有に係る結論
 座して死を待つべきか否かが問われている。効果的な抑止のためにも必要だ。
 議論は出尽くした感があり、決断あるのみだ。

 日米共同作戦の実効性の向上
 言わずもがなである。日米の戦略調整、具体的な役割分担等具体的実効的な日米共同作戦計画にアップデートすべきだ。当然、色々と研究されている筈であり、状況に応ずるアップデートと所要の訓練をすべきだろう。

4 中長期的方策

 平成16年に成立した「国民保護法」が、北朝鮮のミサイル攻撃の可能性が高まったことで一躍脚光を浴びた。喜ぶべきか否か、稍複雑だ。現行国民保護法は、当時の政治情勢を反映して、市民防衛の芽を出したのみであって、十分なる市民防衛策とはなっていないと感じざるを得ない。

(1)市民防衛(国民保護)策の抜本的検討

 国民の権利義務について
 国民保護法は、国民の義務規定が非常に緩やかに過ぎる。国民は協力を求められるのみであり、何らの義務もない。避難も警戒区域への立入禁止も強制力がない。平時にならいざ知らず、非常時には個人の権利をある程度制限しても良いのではないかと考えるが、・・
 民間防衛組織の組織化
 国民保護法は、特別の組織の創設を意図していない。既存の自主防災組織等の活用に期待している。現行自主防災組織等に何ほどが期待できようか?
 市民防衛に関する国民・市民教育或いは訓練の実施
 市民防衛に関する教育が学校教育も含めて全く為されていない。また、国民保護に関する訓練の実施状況は、低調であると云ったら語弊があろうか?
因みに最新の国民保護訓練の実施状況は、国民保護ポータルサイトに掲載されている。因みに、平成27年度は15都道県で実施(図上×12、実動×3)、平成28年度は22都道県(図上×18、実動×4)であった。
 訓練内容も逐次に高度にすべきだとは思う。法成立10年を経ても、訓練については検討すべき事項が多々ある。訓練参加者、訓練内容、訓練実施要領等々更にグレードアップすべきだ。特に訓練参加者が一部に限定されている状況は何とか改善できないものかと感じざるを得ない。

参考1:拙論「我が国の国民保護の課題と解決方向に関する私論」(H19/4/9)
 http://yamashita2.webcrow.jp/ronbun-kadai.pdf
参考2:国民保護のマニュアル(全国防衛協会連合会・編)
  1章 国民保護全般、2章 諸外国の体制、3章 事態想定等、4章 対応等、
  5章 自己防衛、6章 課題等  (小生は4章を担当)

(2)シェルター等の構築・設置

 核シェルターの設置率
 下図はNPO法人日本核シェルター協会のHP所載のデータである。日本の設置率が如何に低いかに驚愕せざるを得ない。先日某TV局でマンション地下室に太陽光発電装置付き、空気清浄機もあるシェルターが紹介されていたが、極めて稀な例であろう。
 家庭用及び公共施設における核シェルター等の普及を国家施策とすべきだ。
国民保護に規定されている各種の措置の現状を直視し、速やかな対策を講じるべきだ。

 

   (出典: http://www.j-shelter.com/

5 終わりに
 日本人の殆どは、北朝鮮による弾道ミサイル攻撃が現実味を帯びて、ではどうすべきなのかとさぞかし戸惑ったことと思える。テロやミサイル攻撃は対岸の火事視されて、何らの対応をしてこなかった付けを払わざるを得ない状況となった。
 他人事から自分事への転換が速やかに為されなければならない。
そして、テロやミサイル脅威がますます高まる環境下にあって、個人として国家として何をすべきなのかを速やかに結論を得て措置しなければならない。焦眉の急と云えよう。
 何れにしろ、多くの国民がミサイル攻撃に関心を持ち始めたのは事実であり、これを日本を普通の国にする第一歩としたい。

(了)