米中覇権争奪戦概観!

平成30年9月25日
山下 輝男

1 始めに
 オバマ政権下で密かに囁かれ、習近平政権も色気を見せていたG2論も、米国のトランプ政権の誕生と共に色褪せてきた。中国は、驚異的な軍事力の増強と一帯一路構想とそれを支えるAIIBの設立により、世界覇権を狙っているかに見える。。
 これに対して、宥和的な米国が覚醒した観がある。米中貿易戦争が勃発し、それが益々激化する様相を見せている。中国の南シナ海の実効支配の動きに対して米国も警戒感を隠さない。
 一見、協力的であるかに見える北朝鮮の非核化問題に関しても、米中の主導権争いが見え隠れする。
 米中の世界覇権争奪戦というよりも正確には、米国の覇権に対する中国の挑戦というべきなのだろう。陰りが見え、凋落しつつある米国に、日の出の勢いの昇り龍たる中国が挑戦しているとみるべきなのだろう。それは、長いスパンで見れば、米中の世界覇権を掛けた戦いと云えよう。そういう意味において、敢えて争奪戦と云いたい。
 米中の覇権争奪戦は、日本にとっても極めて重大な関心事項であり、日本の命運を左右するものである。正に日本自らの問題であるとすら云える。
本稿は、米中覇権争奪戦を概観したい。






2 米中世界覇権争奪戦の諸局面
 米中の世界覇権争奪戦は、あらゆる局面、スペクトラムで行われている。軍事的局面のみならず、貿易、地域覇権(利害関係の強い地域における主導権争い)、イデオロギーや人権問題・宗教問題等々が考えられる。その行使の態様も陽もあれば陰もある。物理的手段のみならず、ソフトな手段をも多用される。そして、何れの国も、世界覇権を目標としていると明言することはあり得ない。
 本稿では、以下の項目について概観する。
①米中貿易戦争(貿易摩擦というよりは戦争と称すべきだろう。)
②軍事戦略及び軍事力建設
③北朝鮮の非核化を巡る主導権争い
④人権問題(宗教政策、イデオロギー)
⑤地域覇権(ASEAN及び南シナ海、台湾、その他)


3 米・中の国家戦略は?
(1)米国
 引き続き世界第一位の経済力と軍事力を背景に、自由と民主主義を基調とする国際秩序を米国主導により維持することを目標とする。このため、EUとの強い紐帯を強くし、インド太平洋地域における中国の覇権を決して許さない。
 米国の「インド・太平洋戦略」は、トランプ大統領が昨年11月のアジア歴訪において「自由で開かれたアジア太平洋戦略」を言明し、同年12月の国家安全保障戦略でも引き継がれたもので、本年2018年のシャングリラ・ダイアログでマティス国防長官が「インド・太平洋戦略」として示したものである。
 日・米・豪・印を要とし、ASEAN等をその中に包摂しようというものである。この構想は、かねて日本等が唱えていたものであるが、それに米国が賛同して、共通の戦略となった。
極論すれば、中国のこの地域における覇権は断固として阻止する、中国を支那大陸に封じ込める事を企図するものでもあると言える。安倍首相の本構想の確立に向けた外交努力は称賛されるべきだ。


(2)中国の世界戦略
 米国がG2論に与しないと解るや、中国は広域経済圏構想「一帯一路」を提唱し、それを支えるAIIBを設立し、現代版“陸と海のシルクロード”の構築を目指している。陸はアジアから欧州への鉄道網、海においては南シナ海からインド洋を通るルートの整備を精力的に進めている。実際には、悪徳サラ金業者と思しきあくどさで沿線国を蚕食している。
 当初は、ASEAN諸国等は中国の支援によるインフラ整備に大いに期待していたが、次第に対中債務が重荷になり始めた。また計画変更や遅れも目立ち始めている。
 直近では、モルディブの大統領選挙での野党統一候補の当選やマレーシアの政権交代等、中国の一帯一路には綻びが見え始めている。中国は飽くまでも、親中派諸国へのテコ入れ、アフリカへの形振り構わぬ進出等により、構想推進に邁進している。
 偉大な中華民族の復興を目指す習近平氏は、本構想を積極的に推進することにより、アジアから欧州に至る一帯に覇権を確立し、沿線国を掌中にして、米国に対抗しうる基盤を築こうという遠大な夢を今も追いかけている。

4 米中貿易戦争
(1)米中の貿易収支等々
 米商務省が、本年2月に発表した2017年の貿易統計(通関ベース)によれば、モノの貿易赤字は7962億ドルで、前年比8.1%増である。全体の半分を占める対中赤字は、3752億ドルで同じく8.1%増である。
 また、米国はハイテク分野で猛追する中国を警戒している。中国は産業の高度化を目指す「中国製造2025」に基づきハイテク企業の育成を急いでいるとされる。
 米国のハイテク技術が合法非合法の方法で流失していると警戒感を露わにする。


(2)米中の制裁関税の応酬
 米中首脳会談を終えても一向に改善されそうにない状況に業を煮やしたトランプ政権は、7月以降逐次に制裁関税を課し、中国も報復関税を課した。

ア 第一弾から第三弾の制裁関税の発動
 7月6日、半導体などを対象に25%の関税を上乗せした340億ドル分の制裁関税を課した。第二弾は、8月23日に発動され、化学品など160億ドル分に同じく25%を上乗せされた。
そして、正に今日9月24日、第三弾を発動した。今回は日用品などに対象を広げて 2000億ドル分に10%を上乗せした。これで、総額2500億ドルの制裁関税になる。中国が報復するなら、更に2670億ドル分の制裁関税を追加する方針でもあり、こうなると総額5170億ドルとなり、中国からの輸入の全てに制裁を課す形となる。


イ 中国の報復関税
 中国も米国に対抗する形で、順次に報復関税を課している。米国の第一弾に対抗して、大豆など農産品、自動車545品目340億ドルに25%を、第二弾に対しては、自動車関連及び鉄鋼製品333品目160億ドルに同じく25%の上乗せした報復関税を発動した。
 今回の第三弾の制裁関税に対しては、液化天然ガス、中型航空機、ビールなど5207品目600億ドル分に5~25%の関税を上乗せすることしている。


ウ 関税の応酬に止まらぬ気配
 米中の貿易協議は不透明であり、両国共に面子もあり、振り上げた拳を下す訳にはいかず、貿易戦争は更に激化することが予想される。
 関税の応酬から、次のフェーズに移行することもあろう。特に、中国は輸入総額が少なく、報復関税の余地が少ないとされ、対抗策としては、常套手段とされる不買運動や米国企業への多種多様な圧迫等がある。
 更には、米国への投資制限・削減・旅行制限・抑制等に移行するのだろうとされる。中国の採り得る最後の手段として、米国が恐れるのは、元安や米国債の売却だが、この段階に至るとすれば、世界経済にも計り知れない影響を及ぼすだろう。
 超大国同士の戦争には善良なる調停者は現れないのだろう。何れかの国が屈服するまで続こう。百年戦争と称される所以だ。
 米国の中間選挙が注視点であり、それまでは中国も中間選挙を注視しつつ、我慢するのだろう。


5 人権問題に関する米中の非難の応酬
(1)米国
 米国務省は、4月20日、約200カ国・地域を対象にした2017年の「人権報告書」を公表した。この中で、政治体制について指摘した他、政府が責任を負う最も深刻な人権問題を、15項目列挙している。(それらは割愛する。)
 更に、9月16日には、「トランプ政権は中国の新疆ウィグル自治区で少数民族のウィグル族が中国当局によって不当に拘束されているとして、中国政府の当局者らに経済制裁を課す検討に入った」と報じられた。
 嘗て、カーター統領は人権外交と称して、人権擁護を柱に据えた外交を行っていたが、米国は伝統的に人権問題には敏感であり、ウィグル族に対する政治思想再教育による強制収容等に国連等においても強い懸念を表明している。


(2)中国:米国の人権報告書に対する反論の書「2017米国人権記録」等の公表
 笑止だが、中国も米国の人権報告書に対抗する形でアニュアル・レポートである「2017米国人権記録」と「2017米国人権侵犯事案」という二つの報告書を作成公表している。国民権利の深刻な脅威、系統的な人種差別、米国式民主の深刻な欠点、持続的に拡大する貧富の差等を挙げている。
 ウィグル族に関する国連人種差別撤廃委員会に於いて中国側は「全くの虚偽」と疑惑を否定している。


(3)人権問題は中国のアキレス腱であり、中国に対する有効なカードとしての意義を持っているものと考えられる。


6 北朝鮮の非核化を巡る米中の主導権争い
(1)6月の米朝首脳会談の失敗を取り繕う第二回の米朝首脳会談の模索
 北朝鮮の非核化が停滞している状況を打開すべく、南北(朝鮮)首脳会談等が開催された。まるでお祭り騒ぎだった。実体はなくとも宣伝効果は抜群だ。
本稿起案中に、ビッグニュースが飛び込んできた。トランプ米大統領は9月24日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との2回目の会談について、近く発表できると指摘したうえ、「(6月に最初の会談を行った)シンガポール以外の場所となる可能性が高い」と明らかにしたのだ。ニューヨークで行った韓国の文在寅大統領との会談の冒頭、記者団に明らかにしたのである。何とか打開の道を見つけたい米国は、忠犬と揶揄される国務長官が、米朝調整に奔命し、それに北が応えてやったという構図だ。米国の焦りが垣間見える。
 トランプ大統領の金正恩に対する信じられぬ位に好意的・温和的な評価・対応には驚かされるが、これも中間選挙を控えての非核化が進展しつつあるとの自己アピールでしかないように思える。
 国連総会での演説も国内向けの自己アピールとも評される。


(2)中・露を味方にして巻き返しに成功した金正恩と米国の焦り
 6月の米朝首脳会談前夜には風前の灯火の観すらあった北朝鮮は、中国に対し、最大の敬意外交を行い、中国の支援取り付けに成功した。中国にとっても、緩衝地帯である北朝鮮を易々と米国や韓国に渡すのは得策でなく、この地域における米国の戦略的優位を阻止したいとの戦略的な理由から応じたものである。
 その後、北朝鮮は一気に南北友好・一体化を促進し、米国に強気に出始めた。非核化の具体的措置を一向に明言することなく、些末な措置で非核化の意思があるかの如くに見せ掛けている一方、米国には相応の措置を要求し、或いは非核化には数年を要するなどと牽制している。


(3)北の非核化を巡る主導権はどうなるのか
 米国主導で進行していた北朝鮮の非核化問題は、6月の米朝首脳会談で期待感がピークを迎え、CVIDな非核化も夢ではないのではと夢想したが、終わってみれば、それは幻想に過ぎなかった。中露のバックアップを得た北朝鮮は、一転、引き延ばし・擬態作戦に出ており、米国が振り回されている。中国が実質的な主導権を握っていると考えるべきだろう。
 米中間選挙を控え、何とか面目を保ちたい米国の足元を見て、第二回の米朝首脳会談を開いてやるのだと嘯いているやに思える。
 一旦、失った主導権を奪回するのは至難の業だ。米政権内の不協和音や不祥事がそれに拍車をかけている。政権内の北朝鮮政策が内部分裂、或いは大統領への冷ややかさもあって、纏まりに欠けており、その事を北はよく承知している。


7 軍事力、米軍の優位性が揺らぎ始めたか
 覇権争奪或いは覇権への挑戦とその阻止において極めて重要なファクターは、言うまでもなく軍事力であろう。圧倒的な優位性を誇ってきた米国は、中国の猛追にその優位性を脅かされている。
(1)年次報告書の要点、米国の危機感顕著
 その状況を米国防総省が8月16日に発表した「中国の軍事・安全保障に関する年次報告書」に見てみる。
①中国は、地域及び国際社会におけるプレゼンスを高めようとしており、軍備増強を図っていると指摘している。
②攻撃能力誇示
 中国軍は、第一列島線(南西諸島とフィリピンを結ぶ線)を越えた地域での活動を拡大し、米国やその同盟国への攻撃能力を誇示しようとする可能性がある。
③上陸作戦を担う中国海軍の1万人規模の陸戦隊(海兵隊)が、2020年までに7個旅団計3万人以上に拡大されるとの見通しを示している。海外任務も想定?
④中国海軍 艦艇300隻以上を擁する地域最大の海軍、より大型で高機能の艦艇への入れ替えが急速、空母打撃群の整備も急ピッチ
⑤米空軍との能力差が縮み、米国の技術的優位を脅かすようになっている。ステルス戦略爆撃機の配備も、爆撃機の活動範囲も拡大
⑥ICBM,SLBM及び戦略爆撃機の核運搬手段の三本柱確立
⑦統合作戦能力の向上も窺え、台湾有事に備えている?
⑧近代化達成のために、海外直接投資やサイバー攻撃による技術窃盗も


(2)中国の反論と米国の決意
 中国国防部は、中国軍の近代化加速は、自国の主権や安全保障、開発権益の他、世界の平和と安定、繁栄を守る目的があると強調し、中国軍の改革、兵器開発、サイバー防衛力は妥当なものだと反論している。
 米国は、中国を長期的な最大の脅威と位置付け、正面から「力」で対抗する構えだとされる。トランプ大統領は、77機の最新鋭ステルス戦闘機F35の調達などで米軍の増強を進める方針を打ち出した。2019会計年度の国防予算はこの9年間で最大規模となる約7160億ドルとなる見通しだと云う。
 8月1日上院を通過した2019会計年度(18年10月~19年9月)の国防予算の大枠を定める国防権限法案の要点は
①核戦力体制の近代化
②中国政府関係企業の製品の使用禁止
③インド・太平洋地域の安定化に向けた軍備拡充計画の提出
④孔子学院関連授業への補助支出制限を規定
⑤在韓米軍を22,000人以上に維持
⑥ロシアによるクリミア併合の承認禁止 であり、中国には厳格に対処することを求めるものである。
 尚、米第二艦隊が7年ぶりに常設のナンバー艦隊として復活する。


(3)米軍が如何に増強されたとしても、米軍のみで全ての地域的な諸問題の要求に応えられるものではない。同盟国や関係国との役割分担や連携が必要であり、夫々の国の自助努力が求められるのは当然だ。


8 地域覇権特に南シナ海やASEANをめぐる米中の対立
 中国本土の防衛或いは一帯一路のシーレーン確保の為にも対米軍事戦略上も、南シナ海や東シナ海は極めて重要であり、それ以遠への進出を扼する第一列島線や南シナ海海域の島嶼群は是非とも確保すべき要地だ。
 一方、米国にとっては、同盟国防衛上も、米国が標榜する自由で開かれた地域・法の支配という原理を遵守し国際公約を果たして、各国の信頼を獲得する上でもこれらの地域における中国の傍若無人、横暴な振る舞いを見逃す訳にはいかない。
 中国の海洋進出、台湾に関する米中の対立、ASEANやインドとの関係について概観する。
(1)中国の海洋進出  中国海軍の父と呼ばれる劉華清の「近海防衛戦略」の通りに行動しているやに見える。2012年12月の党大会で掲げた「海洋強国の建設」の達成に邁進している。
 米軍が比から撤退した1992年以降、力の空白を突いて南シナ海の島嶼群の実効支配に乗り出している。2016年7月の国際仲裁裁判所によって中国の主張が否定されたにも拘わらずである。(以下の防衛省の図表参照)


2018防衛白書に示されている「わが国周辺海域における最近の主な中国の活動」は以下の通りである。


中国が目指す第一及び第二列島線の奪取は達成されていない。が、尖閣諸島への中国のアプローチは次第に熾烈さを増しているようだ。

(2)米国の航行の自由作戦等による中国牽制等
 米国は、伝統的に、或る国が海洋権益を過剰に主張していると判断した場合に、その主張を認めぬとの意思表示の為に事前通告することなくその海域を航行する「航行の自由作戦」を実施している。
 南シナ海における中国の活動に対して、米軍は、昨年10月、本年1月及び5月にスプラトリー諸島、パラセル諸島海域において実施、今後も継続することを主張している。
 また、6月には、本航行の自由作戦に英仏も参加を表明している。
日本の護衛艦や潜水艦も航行の自由作戦ではないが、ASEAN諸国に寄港し、南シナ海で訓練を行っている。牽制にはなろう。
 中国は、米軍の航行の自由作戦に対し、猛反発しているが、実効支配を断念する兆候はない。航行の自由作戦の限界かも知れぬ。


(3)ASEAN諸国に対する支援と中国による切り崩し
 米国は、「インド・太平洋戦略」に基づき日米豪印を要として、ASEAN等諸国をその中に包摂して中国に対抗しようとしている。然しながら、ASEAN諸国やその他の関係国に対する米国の積極的な支援等はどうにも明白には見られない。
 本地域においては、米比同盟が米国にとっての要だ。米国は、その他の諸国とも、軍事教育訓練や装備品調達等の協力連携関係を強めてはいる。
 日本は、海上における法執行能力向上のために巡視船の供与等を行っている。一方、中国は伝統的な親中国等に引き留めを強固にする共に一帯一路による取り込みを図っている。
 何れにしろ、ASEANや南アジア諸国が、米中何れに傾くのかが鍵であり、その点において日本の果たす役割は大きい。


9 台湾:米中覇権争奪の象徴だ!
 中国の対外政策の最優先は、台湾の解放であり、次いで周辺域(チベット等)の併呑であろう。習近平政権は、台湾を中国の核心的利益と位置付け、為し得れば平和的に、已むを得ざれば軍事力を行使してでも取り戻したいと願っている。党大会後、台湾統一のタイムテーブルが囁かれ武力統一も取り沙汰された。また、武力統一を考慮したとも考えられる部隊配備の変更等も行われている。
 何れにしろ、当面「飴と鞭」を使い分けながらの対台湾政策を採るのだろう。
 一方、米国の「政策」は1972年、78年、82年の3つの米中共同声明と、台湾との非公式関係や武器供与を定めた79年の国内法「台湾関係法」に基づいている。確かに共同声明で米国は、中華人民共和国政府を「承認」してはいるが、一方、米国は、時に台湾に近づき、政権が代わると今度は遠ざかるというどうにも定まらぬ動きを見せてきた。
 トランプ政権誕生後、事実上の大使館に相当する事務所の創設、ハイレベルの交流、台湾と断交した国に対する圧力、総統の訪問認可そして戦闘機部品の売却(3.3億ドル)を決定し、国防権限法でも台湾への武器売却を推進する方針を示し、断固として台湾を防衛する姿勢を明確にしている。中国が、猛反発しているのは間違いない。


10 米中覇権争奪戦の行方と日本
 冷静に考えれば、中国が猛追しているとは云え、軍事、経済或いは他の諸点においても米国の覇権を覆すことは当面敵わぬ夢だ。とは言え、米国の政権内部の不協和音や不統一、大統領の独り善がり、独断による政策の大混乱等により、民心離反、政権のレームダック化、更には政権交代となれば、米国の凋落は避けられず、中国にとっては千載一遇のチャンスが巡ってこよう。
 中国は負ける戦はしない、熟柿の落ちる頃合い迄待つか、熟柿作戦を積極的に推進する等長期的なスパンで考えるだろうし、それが出来るのが、彼の国の体制の強みだ。我々とは時間軸が違うのだ。
 最も、中国も数多くの内部矛盾を抱えており、それに耐えきれなくなる可能性も無きにしも非ずだが・・
では日本はどうすべきか?
 中国によるアジア覇権確立を阻止する必要がある。その為には自らの防衛努力も然ることながら、豪・印との更なる関係強化を図りつつ、ASEAN諸国に対する積極的な支援を行うべきだ。


11 終りに
 中国の覇権奪取は未だしだが、安穏としては居られない。為しうる手は打っておかねばならない。気付いた時には、遅かりし由良之助となりかねない。
 米国も、中国の覇権奪取阻止には相当の覚悟を持って対応しつつあり、一方、中国は虎視眈々と覇権奪取の機会を窺うべく牙を研ぎつつある。
 さて、日本(豪・印もそうだが、・・)は、中国覇権を阻止しようという気概を持っているか、甚だ心許ない。
 気になるのは、米大統領の独り善がりの政策決定と政権内の不協和音、それらが齎す混乱だ。そこに物申し得るのは、安倍首相を措いてなかろう。友好・同盟国との連携の重要性をじっくりと説き得るのは安倍首相のみだ。大いに期待したい。

(了)