平成とは何だったのか?

平成31年4月4日
山下 輝男

1 始めに
 皇位継承御代替わりに伴う元号が「令和」に決定した。典拠は万葉集、引用されている序文は「初春の月にして気淑く風ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす」という。
 やや、新元号狂騒曲の感無きにしも非ずだが、好意的に受け止められている。万葉集を典拠としたのも大いに結構だ。
 さて、この平成最後の月である4月は、平成を振り返り、来るべき新御代「令和」に想いを致す時期だろう。
平成とは、一体何だったのかを考えてみたい。

2 大規模災害や事件の頻発と危機管理が問われた時代
 平成は、大規模災害が頻発した時代でもあった。近代日本が直面した三つの大震災の内の二つ、「阪神・淡路大震災」(平成7年1月17日惹起)と「東日本大震災」(平成23年3月11日惹起)である。奇しくも、何れも自社さ連立政権、民主党政権という弱体政権下に起きた大規模災害であった。日本にとっては不幸であったと考えるが、どうだろう。
 地震でも、北海道南西沖地震(H5、小生災害派遣に従事)、兵庫県南部地震(H7)、新潟県中越地震(H16、H19)、東北地方太平洋沖地震(H23)、熊本地震(H28)、大阪北部地震(H30)、北海道胆振東部地震(H30)等があり、台風や豪雨による水害も、九州北部豪雨(H29)や平成30年7月豪雨など枚挙に暇ないほどだし、雲仙普賢岳噴火(H2)をはじめとし、幾つか起きている。
 地下鉄サリン事件(H7)も起き、我が国でもCBRNテロ対処が真剣に検討され始めた。
 これらの大規模災害や事件の起きる度に、政権や危機管理担任部署の危機管理の適否を厳しく問われた。その結果、政府や地方自治体、そして企業においても危機管理の在り方が見直されてきた。更に、国民に危機管理に関する認識が深まり、企業や各種機関の危機管理態勢が強化され、人材育成も為され、各種訓練もかなり積極的に行われてきたのは喜ばしいことである。勿論、不断の見直しも必須だ。

3 安全保障態勢・体制の大変革等
 中国の軍事力増強を背景とした米国の覇権に対する挑戦や北朝鮮の核ミサイル開発の進展或いは国際テロリズム、宇宙やサイバー空間の軍事面での活用等があり、我が国の安全保障態勢も変革を余儀なくされつつある。
 それらを列挙すれば以下の通りとなろう。

① 平和安全法制の整備(H28)による任務・役割の拡大等
 平成に入り、逐次に自衛隊の役割や任務が拡大した。その集大成が、平和安全法制等の成立であった。平和安全法制整備法(自衛隊法、周辺事態法、船舶検査活動法、国連PKO協力法等の改正による自衛隊の役割拡大(在外邦人等の保護措置、米軍等の部隊の武器保護のための武器使用、米軍に対する物品役務の提供、「重要影響事態」への対処等)と、「存立危機事態」への対処に関する法制の整備を内容)と国際平和支援法が侃々諤々の議論の末に成立し、平成28年3月から施行された。


② ミサイル防衛体制の整備(H16~)
 北朝鮮の度重なるミサイル発射を受け、BMDシステムの整備(イージス艦への弾道ミサイル対処能力の付与、ペトリオット(PAC-3)の配備、陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア)の導入決定)


③ 南西諸島防衛の鮮明化(陸海空部隊の新編・配備等)
 水陸機動団や航空団の新設・配備、沿岸監視部隊・警備部隊の配備等々


④ 実効的な抑止及び対処のための防衛力の整備等
 統合運用体制の強化(統幕の機能強化や陸上総隊等の創設、JTFの設置も為され、常設統合司令部の設置すらも検討され始めている。) 、事実上の空母化と云われる護衛艦の改修やF35B戦闘機導入も具体化しつつある。
 また、緒に就いたばかりだが、宇宙やサイバー空間への対処体制の整備も進められている。


⑤ 日米同盟の深化及び豪・印等との連携強化
 平和安全法制の施行に伴い、日米同盟の絆は益々確固たるものになりつつある。本件については、多言を要しまい。


⑥ 日本版NSCの創設(H25)、国家安全保障戦略の策定(H25)がされ、国家戦略、防衛戦略そして防衛政策という一貫性が
担保された。
 中国の覇権的行動に対しての、国家戦略としての日米豪印の「安全保障ダイアモンド」が具体化しつつあるのは、喜ばしいことだ。このダイアモンドの中にASEANや台湾そして、柔軟になった(となることを期待して)韓国が包含されればいいのだが・・


⑦ 国際平和協力活動の本格化
 カンボジア暫定機構への陸自の派遣を皮切りに、幾多の国際貢献の活動を行ってきた。所謂PKOへの協力をはじめとする国際平和協力業務(H4~、14件)、海外の大規模な災害に対応する国際緊急援助活動(H25~、6件)の他、旧イラク特措法に基づく活動(H15)、旧テロ特措法に基づく活動(H13)及び旧補給支援特措法による活動(H20)、海賊対処行動(H21)等を実施


⑧ 装備移転三原則や国際共同開発等の増加(H26)
 諸外国に対する技術的優越を確保するために、戦略的な研究開発、防衛生産・技術基盤の維持・強化等の施策を具体化しているが、特に武器輸出三原則を転換して装備移転三原則の確立(H26)そして国際共同開発の増加が明白になった。H27には防衛装備庁が発足した。


⑨ 退職自衛官や女性自衛官の活躍の場の拡大
 若年定年制で退職する自衛官の在職間の識見を活用すべく、地方自治体の危機管理職域への再就職が積極的に為され、相当数(491名/H30/12/31現在、残念ながら沖縄県庁を除く)に上っている。また女性自衛官に解放された職域も驚く広範で、女性指揮官・艦長やパイロットも珍しくはない。これも時代の趨勢か。

4 残された課題
3項で見た通り、平成の30年余で防衛や安全保障では大変革が起きた。これは、北朝鮮の核ミサイル開発の進展と中国の軍事力増強と経済力を背景とした米国覇権への挑戦とも云える南シナ海での活発な行動に触発されたものである。当面の対応に忙しく、より根底的な問題については先送りされてきたとも云える。
 それらは以下の通りである。
(1)憲法改正
 自衛隊の認知・理解度は極めて高く、実質的に国軍として遇されているとは云え、今なお、折に触れ自衛隊違憲論が語られるのは問題である。安倍首相が意欲を見せていた9条への自衛隊明記も聊か不透明になりつつある。緊急事態条項と関連法制の整備も必須なのだが・・
 安倍さんの残された任期中にと期待したいのだが…


(2)集団的自衛権の範囲
 平和安全法制時に議論となったのは、集団的自衛権が合憲か否か或いは、認めるとしてもフル容認かそれとも限定容認かということであった。平和安全法制において、集団的自衛権が限定的と雖も、認められたことは意義あることではあった。然しながら、軍事的合理性の観点からすれば、フル容認し、実際の運用において、どの程度の幅を持たせるかを状況に応じて政治的に決定すれば良いのではないか?手枷・足枷の法律は無理を生じ、返って逸脱の恐れあり、或いは使えないということになりかねない。


(3)人的及び後方基盤の充実
 防衛力の運用に関わる課題は、その殆どが平成の時代に解決されたが、正面や運用に目を奪われて、後方や人事が疎かになっていないかと云う危惧がある。既に、隊員募集は極めて厳しい状況になりつつあると仄聞する。また、隊員募集の根底ともなる自衛官の名誉や誇り又は処遇改善はどうなっているのか。更に言えば、愛国心や国家防衛に関する意識の涵養、国民教育はどうなっているのかも問われねばならない。
 また、既にその兆候かと懸念を持つ事故も発生しているようだが、整備用部品の補給や整備能力の維持・向上又は物的継戦能力は万全なのか、まだまだ課題は山積している。
 これらの課題を可及的速やかに解決してこそ国防の全きを期することができる。


(4)国際貢献について
 積極平和主義を標榜するならば、そのような態勢を構築すべきだ。
 国際標準の国連平和維持活動が出来るような法律的な枠組みを構築し、それらが可能な能力を自衛隊に付与すべきだ。
 未だにおっかなびっくりの国際貢献で良いのだろうか?最悪の事態をも想定した貢献活動に我が国は耐えられるのか?そこまで踏み込むのか?そのような議論を避けてはならない。国民的議論を経て、腹を括って行動すべきなのだ。


(5)クロスドメイン対応策検討
 クロスドメインと云うハイカラな語彙が、単なるスローガンであってはならないだろう。宇宙もサイバー空間も更には長足の進歩を遂げつつあるAI、ロボット技術に我が国は対応できるのか?最先端技術に対する存分の投資が為されているか?世界をリードする気概があるのか?


(6)ASEAN諸国への支援の在り方
 安倍首相が提唱する安全保障ダイアモンドの鍵は、ASEANを戦略的パートナーとしてダイアモンドの枠内に取り込めるか否かにあると云っても過言ではない。我が国の政治、経済、文化等の持てる国家的及び民の資源を最大限に活用してそのような態勢を構築すべきだ。どうも中途半端な気がするのだが・・


(7)領土問題について
 戦後70年を経ても尚、我が国3つの領土問題は何ら解決されていない。(領土問題は存在しないという建前があるが、それは別にして)我が国が実効支配している尖閣諸島の更なる実効支配に更に進めることが先ず肝要だ。竹島は、国際法廷の場で決着をつけるべくあらゆる手を打つべきだ。已むを得ざれば、竹島駐屯者を日干しにすればいい位の気迫を持つことも必要。北方領土は、現実的な策で妥協するしかないかのかも知れない。
 令和時代間に解決することを目標に更なる情報発信と外交力を発揮、そのバックボーンたる防衛力整備を行うべきだ。


(8)日韓関係をどうするか?
 日本側には何ら非はない。徒に刺激するのは得策ではないのだろうが、毅然と対応すべきは当然だ。その結果としての日韓関係の亀裂は受け入れざるを得ないだろうし、そうなった場合の安全保障園保障戦略の大見直しも検討しておくべきだろう。

5 終りに
 戦後日本の最大の課題は、所謂自虐史観からの脱却だ。WGIP等によって洗脳された日本人は自らの歴史を至当に見直してみる必要がある。「令和」に相応しく、失われた日本的な良さが再生することを望みたい。戦没者慰霊や御遺骨の本邦への環送も残された課題である。
 来るべき令和こそ、我が国が戦後の呪縛から解き放たれ、本来の姿を取り戻す時代たるべきだ。レジームチェンジが一時期叫ばれたが、令和の時代こそレジームチェンジがなされ、自衛隊が真の国軍となり、名実ともに国民のために役立つ存在とならねばならない。
 大いに期待したい。

(了)