尖閣日中神経戦に勝利せよ!(尖閣国有化2ヶ月に思う!)

T・Y生

(H24/11/13) 

1 はじめに

尖閣諸島を国有化して、本稿執筆時点で2ヶ月が経過した。この間における中国の執拗かつ威嚇的な恫喝作戦や宣伝戦には驚かされる。そして、その効果は逐次に表れ始めている(?)のかも知れない。憂うべき状況・様相である。
今般の中国の一連の行動は、明らかに神経戦そのものであると断じて良い。流石は、数千年にわたり権謀術数を繰り返してきたお国柄である。
方や、我が国は尖閣諸島警備のために海上保安庁の巡視船を派遣して監視と警告を行うのみであり、時に中国の行動に対して抗議し、反論を主要紙上に発表するのみであり、何ら有効な対策をとっていない。
11月上旬に始まった第18回共産党大会の政治報告において、「国家の主権、安全保障、発展の利益を守り、外部の如何なる圧力にも決して屈しない」と強調、「海洋権益を断固守り、海洋強国を建設する。」との方針を打ち出したが、今大会を機に胡錦濤氏の権力を引き継ぐ習近平国家副主席は、海洋権益拡大路線を踏襲し、更には軍事力を背景に尖閣諸島や南シナ海の領有権問題を巡り、より強硬な姿勢で臨む可能性があると見積もられる。
我が国は、このまま手を拱いたままで良いのだろうか?本稿はこのような問題意識の下に、中国が仕掛ける尖閣対日神経戦の実態を可能な限り詳らかにし、我が国のあるべき対応策を検討するものである。

2 神経戦とは

(1)定義
 神経戦の明確な定義があるのかどうか知らないが、本稿では「直接的な実力行使を伴うことなく、合法、時に非合法な手段を用いて、相手の不安感を醸成・増幅させ、敗北感や厭戦気運を醸成、士気を低下させて目的を達する戦いの手段」と定義する。心理戦と概ね同義であるかも知れないが、心理戦よりはより強度が高い。
(2)神経戦の特性等
 孫子の兵法謀攻編にある如く、「戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。」であり、神経戦において目的を達成できれば最善である。
 神経戦は、心理戦よりは時間的スパンは短いかもしれないが、ある程度長期的なスパンで実施されるものであり、その効果はかなり遅効的であり、その程度は相手の心理的特性により区々である。日本にはそのような耐性が無いように感じるが、どうだろうか?
 神経戦の手段・方法は様々である。直接的又は間接的な手段を多用し、硬軟両様の手段に訴えるのは当然である。相手の弱点と思しきポイントに対して重点的に仕掛けるのが常態であるが、対象はあらゆる階層に亘ると考えるべきだろう。合法的手段に限らず、非合法或いは非合法すれすれの手段を駆使して目的を達するにつとめる。内部分裂を誘い、熟柿柿戦法を採用することも十分に考えられる。
 勿論、宣戦布告をする筈がない。それと判然としない方法手段によることが多く、それは広範囲に及んでいる。

3 中国の尖閣対日神経戦の実相

(1)実効支配打破を狙いとした中国公船による恫喝・示威行動
 9月11日野田政権による尖閣購入の閣議決定、地権者との売買契約の締結により所有権を国に移転し国有化された。一部に政府のこの不用意な決定が今日の中国の過激な行動を齎したと非難する向きもあるが、それは違う。国有化は必然だったし、国家として当然の措置だった。
 何れにしろ、尖閣諸島が国有化された以降、中国の公船である海洋監視船及び漁業監視船が、接続水域に頻繁に入域し、時には堂々と領海侵犯をしている。
 国有化以降の2ヶ月間に、台風接近で確認ができなかった3回(述べ17日間)を除き、連日接続水域に入域し、領海侵入は、11日(回)、43隻に上る。(執筆時点)
 これに対して、海上保安庁は、総力戦で監視と警告に当たっているが、限界に近づいて来ているかも知れない。
 自らの領有権を国際社会にアピールし、或いは領土問題の存在を国際社会に印象付けている。
 公船に対して、我が国がとり得る対応には限界があることを見越しての、謂わば、合法的な活動であるが、不注意な行動ならばいざ知らず、極めて意識的な活動であることは疑いを入れない。対日尖閣神経戦の第一の矢である。

(2)国際的宣伝戦・プロパガンダの実施
 国有化を受けて、中国は国際宣伝戦を精力的に開始したと考えられる。「ニューヨーク・タイムズ」や「ワシントン・ポスト」の米2主要紙に2面ぶち抜きの広告を掲載し、国連総会では日本が尖閣を盗んだと演説した。また、駐英大使は、尖閣諸島の領有権を主張する論文を英紙デイリー・テレグラフに公表した。駐仏大使も同様だ。その他の諸国においても同様の事例が既に起き、或いはこれから間違いなく起きよう。中国のプロパガンダは凄まじい。日中外相会談でもかなり激しい論調で非難を繰り返した。
 更に、見逃せないのは、中国の領有権主張の論理である。明代の歴史文献を挙げ、更に、日本は日清戦争に乗じて不当に割譲させて中国への侵略の一歩とし、また中国はサンフランシスコ平和条約に関与していないため、そこで決定されたことは認めず、ボッダム宣言で中国に返還されたのであり、戦後の国際秩序に違反している等々の盗人猛々しい論理を展開している。
常識的な日本人から見れば奇妙奇天烈な論理ではあるが、自虐的意識の強い人士にとってはそうかもしれないと思わせる側面もあり、諸外国においては反論が少ないことで、中国側の論理が罷り通っていると危惧される。
 何れが正義であるかが問題ではなく、何れの国の論理が浸透しているかによって国際社会は判断する。それが現実だ。日本人の甘さが命取りにならねば良いが・・

(3)親中派・媚中派の活用・懐柔による内部分裂の増幅
 親中・媚中のマスコミ、有識者や政治家に積極的に働きかけて、中国寄りの世論を醸成することは神経戦の緊要で然も非常に効果的な方策である。
 経済的、文化的あらゆるコネクションを通じての中国シンパシーの気運を醸成し、日本の姿勢転換を図ることは望ましい方策であろう。知らずして対中融和論が大勢になればいい。
 その為に、必要があれば、相応の資金援助もあり得るし、女性の色香を使った罠である所謂ピンク・トラップで籠絡を図ることもないとは言えないだろう。或いは、弱みを握って脅迫することもあるやも知れぬ。
 日本人は、意外にこの手の陥穽に陥りやすい。クワバラ、クワバラ。

(4)経済的制裁等
ア 国家の使嗾による暴動・襲撃
温家宝首相の講演以降、日本に関するイベントが続々と中止・延期になり、中国マスメディアの大々的な対日批判・反日感情の扇動により、中国国民の反日感情は異常に増幅した。中国各地で抗議活動が発生し、日本人への暴行が相次ぎ、一部のデモ参加者が暴徒化し、日系の商店や工場を破壊・略奪・放火を行った。テレビを通じて、その様を見た我が国の国民は如何なる感情を抱いたか?
一面に於いて、中国は怖いという意識が植え付けられた可能性はあるものの、矢張り中国とは仲良くしないと日本は立ち行かないと思い知ったかも知れない。中国に対して強硬姿勢を採らない方が日本にとってメリットがあると感じさせたとすれば、彼等が仕掛けた官制暴動は成功だ。
日本が強硬姿勢に転じたから暴動が起き、日本店が襲撃され、日本人が襲われ、日本製品が売れなくなり、結果としてダメージを受けることになった。従って、云々という論理である。

イ 経済的損失は日本にとって不利益との認識扶植
ア項の他、特に日本車販売台数の落ち込みが激しい。10月の日経―メーカーの乗用車販売台数が、前年同月比60%減で、3年振りに10万台を切った。9月の減少幅が40%であったのに比較すれば、更に落ち込みが厳しくなっている。日系企業に発注した案件がキャンセルされたり、取引停止措置とされたケースもあった。高水準を保っていた中国企業に対するM&Aも75%減少したと云う。
このような経済的打撃に対して危機感を抱く一部経済人が、対中融和策に転ずる必要性に言及することがあるが、これなど彼の国の思う壺だろう。
彼我共に、苦しいから神経戦なのである。

ウ その他の報復措置の実施
大規模なデモを抑え込み・収束させた後は、日本からの輸入品の通関を意図的に遅延させているとも思われ、日本関連書籍を引き揚げさせる措置を取ったとも伝えられている。日本への観光客の落ち込みも激しく、JAL,ANAの日中路線の団体客のキャンセルも相次いだ。穿った見方をすればこれも報復措置の一環かも知れぬ。日本に行けば日本人に報復を受ける可能性があるから取りやめたとの論もあるが、本気でそんなことを考えている中国人は居ないだろう。
まだまだ、これからも陰に陽に様々な手段で日本に対して圧力を加えてくると覚悟すべきだ。中国に進出している日本企業は、2万2千社以上に上り、日中の貿易総額は、3,500億ドルに近い規模だ。これ等の企業に対して様々な要求、脅し、圧力を掛けよう。踏み絵を踏ませることすらやりかねない。
勿論、(4)(5)項の方策は中国にとっても諸刃の剣になる可能性がある。中国側の経済的ダメージもかなりのものだろうし、何よりも中国は異形の国家との国際的イメージが定着すること可能性すらある。これ等のデメリットと日本への圧力の効果を天秤にかけて実行している筈だ。
北京国際マラソンへの日本国籍選手のインターネットによる参加登録ができなくなっていると報道されたが、日本大使館の抗議を受け、国際的イメージの低下の懸念を払拭するとの政治判断からか、一転して認められるようになった。

(5)軍事的示威
 10月4日には、駆逐艦やフリゲート艦、潜水艦救難艦等計7隻の中国艦隊が、事前通告の日中合意を無視して宮古海峡を通過し、更には、同艦隊は16日、沖縄県の与那国島と西表島の間の日本の接続水域を通過し、尖閣諸島の南西を航行した。中国艦船が先島諸島の接続水域を通過したのは初めてである。潜水艦の所在は不明だが、・・
 今年度上半期(4~9月)の中国機に対する空自機のスクランブルは69回あり、半期統計を開始した平成15年度以降、昨年度(83回)に次いで過去2番目に多かった。海洋進出を図る中国軍が偵察や訓練を活発化させていることが裏付けられたとも言え、ある意味では軍事的示威である。

(遼寧号:時事ドットコムから)

中国初の空母「ワリャーグ」が9月25日、「遼寧」と命名され、事実上就役した。中国海軍の艦船として最大、満載排水量6万7千トン、全長305メートル、戦闘機約40機搭載の巨大空母が、配備されれば、日本に対する軍事的影響は計り知れない。張子の虎との見方もあるが、何れ実動戦力としての実力を発揮することを予期すべきだ。中国の要人は、「この時期に空母を見せつけることは、釣魚島を防衛する中国の強い決意を表明することになる」と指摘。「過ちを認めなければ自業自得になると日本政府に告げる」意味があると発言したと伝えられる。
 10月中旬には、中国海軍の東海艦隊が国家海洋局の巡視船や農業省漁業監視船などと合同で東シナ海で演習を実施したが、これは尖閣諸島を強く意識した演習であるのは明白であり、日本に対する威嚇である。
 中国は、世界第二位の経済力を背景に、年々二桁に上る国防費の増額や核・ミサイル戦力及び海空戦力を中心とする軍事力の近代化を進めている。軍事力の不透明さもあり、実態が見えないことによる不気味さもある。更にはサイバー空間や宇宙空間における戦力造成にも躍起となっている。これ等の軍事力をバックとして神経戦を日本に対して挑んでいる。日本が、中国の軍事力に対して、脅威を覚え、無力感や厭戦気運が醸成されれば、直接的実力を行使せずとも目的を達することができる。

(6)日米同盟の無力化・弱体化
 日本にとって、尖閣諸島が日米安保の対象地域に含まれているかどうか、米高官の発言に一喜一憂している。現在のところ、米国の意思は固い。逆に言えば、中国にとって、日米同盟こそが、尖閣領有化の最大の障害、目の上の瘤ということになる。日本にとっての最大の拠り所である日米同盟を無力化し、弱体化させることができれば事は容易である。
 中国が、まず手始めに米国の主要紙に尖閣の大々的な広告を掲載したのは、この戦略の一環である。中国は当然ながら、この様な宣伝の他、活発なロビー活動を行っていよう。
 中国による米国債の保有規模は、ここ数年急速に拡大し、 直近では1兆1640億ドルに上っており、日本を500億ドル近くしのぐ最大の債権国である。これは中国にとっての武器であり、中国の意向を米国も無視できなくなる可能性すらある。
 13億人に上る巨大市場は、米国企業にとっては垂涎の的であり、米国経済の再生の為の強力なバーゲニング・パワーである。
 尖閣問題を考える時に沖縄をはじめとする日本駐留の米軍は、最大の脅威であろう。現在海兵隊の新型輸送機オスプレイの配備を巡ってかなり強力な反対運動が起きた。オスプレイの配備によって米海兵隊の抑止力は相当に強化されるので、中国としては、この配備を中止させたい筈だ。安全・安心の確保という純な意識からの反対と、日米同盟の弱体化を狙いとした反対運動とが混在しているのではなかろうか。抑止効果を認めつつ、如何にして安全・安心を確保するかという難しい方程式に日米は挑戦すべきであり、それを周知させるべきだ。

4 カウンター神経戦:我が国の対抗策

「敵を知り、己を知らば百戦危うからず」ではないが、3項で述べた対日神経戦を知れば、自ずと我が国の対抗策も明らかとなる。即ち、その要諦は、神経戦を仕掛けても無駄だと認識させることである。具体的な対抗策については詳述を避け、概述することとし、委細は諸兄の御賢察に期待したい。

(1)乗ぜられないタフな国民意識の醸成
 硬軟、陰陽のあらゆる手段を用いた神経戦に、日本が翻弄されないとも限らない。農耕民族でもあり、権謀術数の限りを尽くした歴史経験を有しない我が国には、このような戦いへの耐性がないのではないかと危惧される。
 今更、その様な耐性を保持することは出来ない。従って、彼の国の神経戦の実相を可能な限り詳らかにして、国民が乗ぜられないようにするべきである。
 彼の国の様な狂信的な愛国教育は行うべきではないが、必要な国民の啓蒙教育は実施すべきである。健全な愛国教育や正しい歴史教育を、自信を持って実施すべきだ。勿論、領土・領海、国家主権或いは領土に係る現状を正しく広報することを躊躇してはならない。

(2)一時的な経済的損失の甘受と危機管理
 眼前の利益に目が眩んでか、カントリー・リスクを考慮することなく、対策も取らずして進出したツケが今般の経済的ロスである。チャイナ・リスクのヘッジを先取りし、リスク分散(VIP諸国へ、或いはチャイナプラスワン等)を図った企業は、意気軒昂である。また、中国は戦略資源であるレアアースを武器に我が国の首根っこを抑え込む戦略をとっているので、対抗策として、レアアースの安定的確保が重要である。11月中旬に、レアアースのインドからの安定的に輸入に係る覚書が交わされる見込みであり、危機管理に日本も目覚めたとも云える。
 一次的な経済的損失を回避せんとして、彼の国の甘言に乗り、阿ることは国益を損なう。一時的なロスは、甘受し、それに対応し得る対策を講ずることが経営者の責務である。
 我が苦しい時は、相手も苦しい道理だ。対日貿易の不振が中国経済にとってもマイナス面が多々あり、彼の国も苦しいことに変わりはない筈だ。神経戦は我慢比べでもある。対応策を講じつつ、一時的な苦しみは甘受する必要があろう。

(3)わが優位性の維持・確保・強化=実効支配の強化
 北方領土及び竹島と尖閣諸島が決定的に違うのは、我が国が実効支配しているか否かである。この優位性を維持・確保・強化することが極めて重要である。戦いの主目的を達成することが出来ないと相手に認識させて諦めさせることが重要だ。そのために先ず為すべきことは、実効支配の強化である。遠慮する必要は毛頭ない筈だ。これ以上刺激したくないなどと中途半端な考えでは、何れしてやられてしまう。

(4)機先を制する対抗手段の発動
 神経戦においては、相手の手段を封殺し、その効果を逓減することが重要である。
 国際社会に我が国の正当性を積極的に訴え、世界を味方にすることが必要である。その積極性に欠ける嫌いがある。相手の広報宣伝に対して反論するだけでは効果は少ない。反転攻勢の広報宣伝が重要だ。この際、様々な手段を併用すべきだ。ODA然り、文化的な、経済適当色々な手段を組み合わせることによりその効果は増大する。

(5)長期不敗態勢の確立
 神経戦は通常長期にわたる。尖閣周辺における彼の国の接続水域の航行や領海侵犯等は当分の間継続するものと認識して対応策を抜本的に考えるべきだろう。海保の能力増強は当然だろうし、状況によっては海保のみでは対応できない場合も想定して自衛隊にも領域警備の任務を付与することも必要である。領域警備法制定の必要性が論議され始めているが、当然であろう。

(6)不測事態対処態勢の確立
 現状は、一触即発の状況にある。中国側が漁船を当該海域に向かわせないのは、一触即発の危険性が高まるからとの判断からだろう。
 然し、何が起きるか予測は困難である。我が国としては、何時如何なる事態が生起しようともそれに十分に対処し得る態勢を速やかに構築する必要がある。

(ウィキペディアから)

その第一に為すべきは、南西諸島防衛態勢の強化であり、防衛力の改善・向上である。年々歳々、防衛費や人員を削減され、平時の維持管理すらままならない状況で、いざという場合に対応できるか、疑問だ。何時しか、彼我の戦力が逆転してしまうだろう。バランスを維持し、彼の国の冒険主義を抑止し得る防衛力が是非とも必要である。
 政府が、米国の高高度滞空型無人偵察機グローバルホークの次期中期防衛力整備計画(16~20年度)期間中に導入する方向で検討と報ぜられているが適切な判断である。

(7)日米同盟の強化
 伝えられるところによれば、訪米中の防衛副大臣は、米国国務・国防両省の要人と会談して、有事の際の自衛隊と米軍の協力のあり方を定めた「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の再改定に向け、事務レベルの協議を進める方針で一致したと云う。好ましい動きである。
 彼の国の領有権奪取を抑止し、諦めさせるためには日米同盟が有効に機能することが重要である。そういう意味における今回のガイドライン改訂への動きは歓迎すべきトピックスである。
 日米同盟が、機能する前提は我が国が、我が国の独立と安全を自ら守るという気概を示し、その努力をすることであるのは言うまでもない。

(8)ギリギリの神経戦に対応し得る危機管理を!
 真偽不明、陰陽、硬軟両様の手段で繰り広げられる神経戦は、ともすれば熱戦に転化しやく、その段階に至らないギリギリの段階での攻防となる。意図やメッセージの読み誤りが熱くなる可能性がある。だからと言って、生温い手段ではその効果は知れている。そのぎりぎり、瀬戸際での戦いだ。それにを理解して上での危機管理が為されなければならない。
 その前提は、この国難ともいうべき事態に政治が安定し、一致して対処できるということであるが、現状は心許ない。

(9)無用な配慮は相手を利するのみと知るべし
 多言は要しまい。平和主義者の日本人は、相手との摩擦を回避する傾向が強い。相手に非がある場合でも、それを深く追求することはしない。「冷静に、大局的に」と巧言を弄して、結果的に相手を利してしまっている。同じ土俵に立ってですら勝てるとは限らないのに、同じ土俵にすら登ろうとしない。
 その卑近な例が、沖縄の無人島入砂島で行われる予定であった日米共同統合演習が中止されたことであろう。これなども中国に対する無用の配慮の然らしむる所である。

(10)チャネルは閉ざさず、開けておくべき!
 熱き戦いであってすら、交渉のチャネルは常にオープンであった。神経戦と云う平時の戦いにおいては、様々なレベルのチャネルが開かれ、それらを通じて、妥協しる余地を探ることが重要だ。
 敵(というと語弊があり、誤解を受けるかもしれないが・・)中に味方を増やす作戦も、歴史的にも効果があり、重要な施策である。彼の国にも常識論者は多い筈だし、現在の状況を皆が皆、苦々しく感じている識者も多かろう。そのような方に様々なルートを通じて働きかけることも重要だ。

(11)日本のバーゲニング・パワーの増大
 日米同盟の強化にしろ、対中神経戦にしろ、最も大事なことは、日本がその国力を増大し、日本との良好な関係を維持することがより重要であると米中両国が認識することである。そのようなバーゲニング・パワーを具備することが重要だ。失われた20年から未だに脱却できないこの為体は情けない。
 総合的な国力の増大を期すべきである。そのような潜在力を有している筈だ。日本よ、覚醒せよと言いたい。

5 終りに

戦いにおいては、主導権を確保することが重要である。今までの日本の対応は余りにも受動的である。これでは勝利することは儘ならない。短期的、中・長期的なあらゆる手段を駆使して対抗すべきだ。その処方箋の幾つかを提示したが、他にも有る筈だ。
異形の大国と向き合うのは大変だが、手を拱いている訳にはいかない。明日では間に合わないかも知れない。採り得るあらゆる対策を見極めて、速やかに実施して我が国の安寧と発展を期すべきだ。(F)