寄稿論文:積極平和主義とテロとの戦い

山下 輝男

1 初めに
 2014(平成26)年初以来、イラクそしてシリアで勢力拡大、台頭してきたイスラム国に国際社会は結束して、その壊滅に進もうとしている。折しも、我が国では、昨年末に発出した国家安全保障戦略において、我が国の国家戦略の基本理念として、積極平和主義を採用した。今般のイスラム国への対応は、その積極平和主義が単なるスローガンなのか、日本が実践すべき戦略なのかの試金石となろう。本稿では、その積極平和主義を概観し、イスラム国への国際社会の対応を確認して、日本は何を為すべきかを考察してみたい。

2 安倍首相が掲げる積極平和主義とは
(1)積極平和主義とは何か
 2013(H25)年12月17日国家安全保障会議を経て閣議決定された「国家安全保障戦略」(NSS)では、「国際政治経済の主要プレーヤーとして、国際協調主義に基づく積極平和主義の立場から・・・」(3頁)と積極平和主義を国家安全保障戦略の中核に位置付けている。
 積極平和主義との概念が、国家安全保障に関する基本方針を示すべき政府の最上位の文書である国家安全保障戦略に明確に位置付けられた意義は大きいと云わざるを得ない。積極平和主義とはかくなるものであるとの明確な定義は述べられていないが、次のようにまとめられよう。
 「国際政治経済の主要プレーヤーとして、国際協調主義の下、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保に積極的に寄与しようという国家安全保障の基本理念」である。英語では、Proactive Contribution to Peaceと訳される。

(2)積極平和主義という概念の始まり
 積極平和主義と云うべき概念は、今般のNSSが初めてではない。1990(H2)年8月のイラクによるクウェート侵攻によって始まった湾岸戦争(GULF WAR)で日本は資金を拠出するのみで、人的貢献が出来ず、クウェート政府がのちにアメリカの新聞に出した戦争解決に援助した国々(の国民)に対する感謝の広告に、日本の名前は無いという屈辱を味わった。
 このような状況に危機感を覚えた自民党は、「国際社会における日本の役割に関する特別調査会」(小沢調査会)を設置し、1992(H4)に調査会の答申がなされた。
 小沢調査会の答申では、「安全保障に関する日本の持つべき理念」として、第一に「積極的・能動的平和主義」を掲げている。それを要約すれば「憲法の平和主義は一国平和主義に陥りがち、より一層の寄与を求める国際世論の高まりもある。憲法前文の理念は、国際社会と協調し、世界の平和秩序維持と世界経済の繁栄のために努力するとの精神を示している。消極的平和主義や一国平和主義とは全く異なる積極的、能動的な平和主義の精神により対応すべきである。」としている。
 これ以降、各機関等の提言等で「積極平和主義」またはそれに類似した文言が用いられるようになった。

(3)「積極平和主義」の理念樹立の必要性等
 安倍政権は、先ず国益とは何かを明確化し、その国益達成のために、日本が今まで歩んできた歴史を基礎としつつ、国内外情勢の現状と日本が果たすべき役割を明らかにすることにより、積極平和主義が今後の日本の国家戦略の基本であると認識・決断した。
 国益の明確化と追及
 我が国の国益とは、まず、我が国自身の主権・独立を維持し、領域を保全し、我が国国民の生命・身体・財産の安全を確保することであり、豊かな文化と伝統を継承しつつ、自由と民主主義を基調とする我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うすることである。
 また、経済発展を通じて我が国と我が国国民の更なる繁栄を実現し、我が国の平和と安全をより強固なものとすることである。
 そのためには、海洋国家として、特にアジア太平洋地域において、自由な交易と競争を通じて経済発展を実現する自由貿易体制を強化し、安定性及び透明性が高く、見通しがつきやすい国際環境を実現していくことが不可欠である。
 さらに、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値やルールに基づく国際秩序を維持・擁護することも、同様に我が国にとっての国益である。
 日本の平和国家としての歩み
 日本は、戦後一貫して平和国家としての道を歩み、アジア太平洋地域や国際社会の平和と安定を実現してきた。この延長線上に「積極平和主義」を位置付ける。
 日本の平和国家としての歩みは、①人間の安全保障の理念に立脚した途上国の開発援助 ②貧困、気候変動、防災、水、衛生、教育、衛生、農業等の地球規模の課題への取組 ③軍縮・不拡散の取組 ④自衛隊による国連PKO、インド洋上の補給支援活動、イラクでの人道復興支援活動、海賊対処活動、国際緊急援助隊による災害救援活動等(既述)で明らかである。
 この理念を更に拡大・拡充する必要性が高まりつつある。
 日本を取り巻く安全保障環境
 国益を追求し、イ項の日本の歩み引き続き継続拡充するにあたっての国際情勢等はどうなっているのかを明らかにして、具体的な方策を樹立することが必要である。
 国際情勢は、詳細は割愛するが、パワーバランスの急激な変化、テロやサイバーなど新たな脅威の出現、厳しいアジア太平洋地域の安全保障環境など、日本を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増している、また脅威は容易に国境を超える。
 総合的判断の基本的理念の樹立
 現在の世界では、どの国でも一国のみで自らの平和と安全を維持することはできないし、また国際社会の平和と安定が我が国の繁栄の基礎でもあり、我が国の能力に応じた役割を果たすことが求められており、そのことはとりもなおさず我が国にとっても必要なことである。

 以上に述べた認識等を踏まえて、国益を守り、国際社会において、今までの生き様の延長線上にあって、身の丈に合った責任を果たすために、国際協調主義に基づいて、能動的に、積極的に国際社会の平和と安定に寄与する積極平和主義が必要である。

(4)積極平和主義を達成するための目標
 目標としては、次の3つの挙げることが出来る。
第1の目標は、我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために、必要な抑止力を強化し、我が国に直接脅威が及ぶことを防止するとともに、万が一脅威が及ぶ場合には、これを排除し、かつ被害を最小化すること。
第2の目標は、日米同盟の強化、域内外のパートナーとの信頼・協力関係の強化、実際的な安全保障協力の推進により、アジア太平洋地域の安全保障環境を改善し、我が国に対する直接的な脅威の発生を予防し、削減すること。
第3の目標は、不断の外交努力や更なる人的貢献により、普遍的価値やルールに基づく国際秩序の強化、紛争の解決に主導的な役割を果たし、グローバルな安全保障環境を改善し、平和で安定し、繁栄する国際社会を構築すること。

(5)積極平和主義を行うためにとるべき政策
 我が国は、我が国の総合力、外交力、経済力、技術力、防衛力等々を強化し、我が国の存立を全うすることにより国際社会の平和と安定に寄与すると共に、以下の6項目の方策が必要である。
①日本の能力・役割の強化・拡大
②日米同盟の強化
③国際社会の平和と安定のためのパートナーとの外交・安全保障協力の強化
④国際社会の平和と安定のための国際的努力への積極的寄与
⑤地球規模課題解決のための普遍的価値を通じた協力強化
⑥国家安全保障を支える国内基盤の強化と内外における理解促進
 各政策の具体的方策は割愛するが、本稿に関連する「国際社会の平和と安定のための国際的努力への積極的寄与」については以下の通りと考えられる。
・ 国連外交の強化:国連における国際の平和と安全の維持・回復に向けた努力に積極的に寄与し、安保理改革に向けた取組を推進する。
・ 法の支配の強化:海洋、宇宙、サイバー空間を始めとする様々な分野において、国際社会における法の支配を強化する。
・ 軍縮・不拡散に係る国際努力の主導:「核兵器のない世界」に向けた取組を含め、国際的取組を主導する。
・ 国際平和協力の推進:国連PKO等に一層積極的に協力し、ODAと能力構築支援、平和構築人材の育成等を推進する。
・ 国際テロ対策における国際協力の推進:各国の協議、国際的な法的枠組みの強化、開発途上国に対する支援に取り組む。

3 イスラム国に対する国際社会の対応等
(1)イスラム国の台頭・跳梁跋扈

 イラク戦争後の2006(H18)年5月に発足したマリキ政権は、イスラム教シーア派主体である。国民和解を標榜しての発足ではあったが、統治能力に欠けるとして欧米から非難され、退陣を求められていた。マリキ政権に不満を抱いたイスラム教スンニ派の過激派組織は、2014年初め以降勢力を拡大し、イラク及びシリアで支配地域を拡大し、2014(H26)年6月29日、「イスラム国」(ISIS)の樹立を宣言するに至った。欧米のジャーナリスト等を公開処刑し、イスラム国家指導者カリフを名乗るアブバクル・バクダーディを頂点とした統治体制を着々と固めつつある。兵力は定かではないが、CIAの見積もりによれば2万人から3万1500人、更に80ヶ国以上の国から1万5千人が戦闘員として流入(オバマ大統領演説)していると云われる。また、イスラム国を中核として各国のテロ組織が連携を模索する動きもあり、ネットワーク化が懸念されている。更には、イスラム国の戦闘員が、自国に戻ってテロを行う「帰国テロ」の脅威も現実化しつつある。世界で最も裕福な過激派組織とも称され、その潤沢な資金をもって、欧米の若者をリクルートしている。

(2)米国等の対応
 イスラム国の台頭に脅威を感じた米国は、2014年6月下旬、イラク」」・政権からの空爆要請は断ったものの、代わりに軍事顧問団(300人規模)をイラクに派遣した。
 米国防総省は8月8日、人道的支援を名目にイラク北部で限定的な空爆に踏み切り、以降継続的に限定的な空爆を実施してきた。
 米議会は攻撃強化を求め、米国は、9月上旬以降、安保理やNATO等と国際的な包囲網を構成すべく協議を始めた。オバマ大統領は、イスラム国に対する戦いをテロとの戦いと位置付け、不退転の意思を表明した。
 米国が模索した「有志連合」に対する各国の理解は深まり、次第に結実した。現時点では、イラクやシリアでの空爆参加(シリアでの空爆には、中東5ヶ国が参加)、偵察飛行に参加、軍事装備提供、輸送など後方支援及び人道的支援と様々な形態ながら、有志連合への参加が広がりを見せつつある。
 「遅れたが、遅すぎることはない」との見方もあるが、後手に回っているようにも思われ、今後主導権を如何にとるかが問われよう。
 最新の報道によれば、60ヶ国が参加乃至参加表明している。各国の思惑は様々で、政治的支援に止まる国もあろう。実態があり、連携が強化されるか否か、オバマ大統領の力量が問われている。
 また、9月27日の報道によれば、英国、蘭、ベルギーも軍事作戦への参加を決断した。空爆に参加する国が多くなり、地上部隊による的確な情報収集が行われない場合には、空爆の誤爆が多発する可能性が高まり、そういう事態が起きれば、有志連合にも亀裂が生じる。誤爆は、イスラム国等にとって、テロとの戦いを宗派対立に転嫁させる良い口実を与えることにもなる。
 米欧とアラブが手を組み、同じアラブを軍事攻撃する事態は歴史上初めてである。
 尚、オバマ大統領は、これまでに繰り返し、米軍地上部隊の派遣は行わないと言明している。

(3)国連安保理決議の採択等
 オバマ大統領が主導した国連の安全保障理事会の首脳級会合は、9月24日、テロ目的で外国に渡航する自国民を処罰する法規制の整備を加盟国に義務付ける決議を全会一致で採択した。
 また、オバマ大統領は、9月24日、国連総会一般討論演説で、イスラム国に関連して次のように述べた。(①~③)
①米国は広範な「有志連合」とともに、イスラム国という『死のネットワーク』を壊滅させる。
②「有志連合」には40か国以上が参加を表明した。世界に対し、この取り組みへの参加を求めたい。
③米軍は空爆を行い、イラク軍やシリア反政府勢力の訓練や武器供与を行う。組織への資金や戦闘員の流入を遮断する。

  イスラム国に対する戦争(作戦)目的は、オバマ大統領によれば、当該組織の壊滅であり、有志連合による空爆だけでは戦争目的の達成は困難であろう。イスラム国に対する作戦は数年に亘る可能性すら囁かれている。米国は、自ら地上部隊を派遣しない代わりには、支配地域奪回のために、イラク軍やクルド人部隊、シリア反体制派を主体とした地上部隊による作戦を考慮している。戦闘経験に富んだイスラム国に対して急造成の軍で果たして奪回が可能なのか、疑問がある。大統領が嫌う地上部隊の派遣が現実味を帯びるかもしれない。

4 日本のイスラム国への対応について
(1)国連総会における安倍首相一般討論演説
 国連総会に参加した安倍首相は、一般討論演説を行った。

その要旨は以下の通りである。
①日本は「これまで、今、この先とも、積極的な平和の推進力である」との立場を強調するとともに、国連改革の必要性を訴え、安全保障理事会常任理事国入りへの意欲を表明した。首相は、日本が1956年の加盟以来、国連の活動に多大な貢献をしてきたことを説明した上で「21世紀の現実に合った姿に国連を改革して、その中で日本は常任理事国となり、ふさわしい役割を担っていきたい」との考えを示した。国連活動への全面的な献身を自らに課す責務とも述べた。
 来年の安保理非常任理事国選挙への立候補も、改めて表明した。国連平和維持活動(PKO)にこれまで延べ9700人が参加した貢献を強調し「平和構築の分野で世界に貢献する人材を、質量とも一層育てていきたい」と述べた。
②イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」を巡っては、難民が流入しているシリア周辺国に2550万ドル、イラク国内支援に2000万ドルなど計5000万ドル(55億円程度)の緊急支援を打ち出した。
③イスラム国については「国際秩序に対する重大な脅威。重要なのは、地域の人道危機へ迅速に対応すると同時に過激主義が定着するのを阻止することだ」と指摘した。

(2)記者会見
 また、内外記者会見において、イスラム過激派組織「イスラム国」が勢力を拡大するイラクやシリアなどの安定に向けて、人道支援など軍事的貢献ではない形で可能な範囲の支援を行っていく考えを示した。この中で、「イスラム国」の勢力拡大について、「多くの犠牲者が出ている事態を深く憂慮しており、武装勢力による攻撃を強く非難する。アメリカを含む国際社会の『イスラム国』に対する闘いを支持しており、今回のシリアでの空爆は、シリア政府が武装勢力の活動を取り締まることができない状況のなか、これ以上の事態の悪化を防ぐためのやむをえない措置だったと理解している」と述べた。

5 日本はどうあるべきか
(1)更なる貢献策を模索すべし
 安倍首相が、有志連合の行動に対する支持を表明し、難民対策としての資金協力を申し出たのは評価できる。積極平和主義を標榜する日本が、支持表明と資金協力だけで良いと云えようか。湾岸戦争を想起して欲しい。支持と140億ドルに及ぶ資金協力を行ったにも拘らず、欧米から『金だけ出して、血は他国に流させるのか』と非難され、クウェートの感謝広告に日本はなく、シュワルツコフ将軍の凱旋パレードでも屈辱的な仕打ちを受けた。
 湾岸戦争の轍を踏まないためにも、更なる貢献策が求められる。積極平和主義を唱えるのであれば、資金協力のみでは明らかに不十分である。
 Show the flag 或いは、Boots on the ground 等と外国から云われてやるのではなく自らの意志で日本が為すべき貢献策を敢然と行うべきであろう。
 協力・支援には、資金協力や物資協力等の非軍事的支援から軍事的支援までの幅がある。勿論、湾岸戦争後に我が国が行ったような戦後復興支援のような分野でも当然多くの貢献が可能であろう。
 安倍首相は、軍事的貢献ではない形での支援を思い描いているが、果たしてそれで国際社会が満足するのだろうか?
 軍事的支援にも色々な態様がある筈だ、後方地域における後方支援から直接的な戦闘参加まであり得る。
 日本としては、湾岸戦争以上のレベルの協力・支援が必要になる筈だ。その大きな一歩をどうやって踏み出すのか、政治の強力なリーダーシップが求められよう。一気に、直接的な軍事的貢献までは無理であろう、日本の国民はそれほどまでに成熟しているとは思えないし、そこに踏み出すにはいまだ体制が整っていない。
 国民的コンセンサスを得て、如何なる協力支援を行うか、我が国の国民の決断にかかっている。
 色々な選択肢を考察して、国民も納得し、国際社会も理解するような方策を検討する必要がある。
 日本にとって、イスラム国に対する軍事行動に係る安保理決議は必須となるだろうし、先般の安保法制懇提言に伴う閣議決定事項の立法化措置重要な前提事項となろう。
 望ましきは、集団安全保障に関する国民的合意があることだろう。テロとの戦いを契機とする集団的自衛権行使よりも、国連決議に基づく集団安全保障への参加の道を模索する必要があるのではなかろうか?

(2)国連安保理常任理事国入りとそれに伴う責任と能力を果たす意思の確立
 国連安保理は、実質的に国際連合の中で最も大きな権限を有し、事実上の最高意思決定機関である。法的に国際連合加盟国を拘束する権限がある数少ない機関でもある。その目的や権限は、国際連合憲章に定められていて世界の平和と安全の維持に対して重大な責任を持っている。その責任を果たす意思があるのかが問われる。ただ単に大国だから常任理事国になるべきだとの論は罷り通らない。積極平和主義の旗のもと常任理事国を目指すのであれば、世界からその資格充分有りとの理解と共感を得られる実績が必要だ。

(3)テロ対策基本法の制定
 テロ対策は、総合的なものである。一省庁のみで完結するものではない。テロ対策の理念を明確にして、一途の方針の下に総合一体化された施策を行うことが必要であり、その為には、包括的なテロ対策を示したテロ対策基本法的なものが必要になる。

(4)テロ対策の更なる強化
 我が国もテロの標的になることは十分にあり得るものと認識してあらゆる施策を行うことが必要である。現在実施中のテロ対策は、以下の通りである。
①テロ防止関連13条約の批准と態勢整備
②世界一安全な日本創造戦略の策定
③具体的な施策(項目のみ)
 ・出入国管理等の強化 ・テロ関連情報の収集・分析の強化 ・ハイジャック等の防止対策の強化
 ・NBCテロ等への対処強化 ・国内重要施設の警戒警備の強化等
 ・テロ資金対策の強化 ・テロ対策に資する科学技術の振興 ・サイバーテロ対策
 これ等は基本的に必要事項を網羅しているものと考えられる。問題は、これらを如何に徹底するかである。その際に、最も重要なのはテロに屈しないという国民意思の醸成であろう。特に安保理決議で示された各国が実施すべき事項を速やかに具体化して、我が国の決意を示すべきだ。

(5)テロに屈しないという国民意思の醸成
 イスラム国による我が国に対するテロの脅威は、今まで以上に増大するだろう。海外で、或いは国内で、様々な形でのテロに遭遇する可能性が高まっている。
 我が国は、かっての恥かしい事例を教訓として、絶対にテロに屈しないという強固な意志を持っているのだろうか?鼎の軽重を問われる事態が起きるかもしれない。1975(昭和50)8月、日本赤軍によるクアラルンプール米国大使館占拠事件において、時の三木首相は、「人命は地球よりも重い」と宣うて、恫喝に屈し、獄中の7人を「超法規的に釈放」し、1977(昭和52)9月、ダッカハイジャック事件ではまたしても、時の福田首相は三木総理の悪例を踏襲して服役中の獄中犯を超法規釈放すると云う国際社会が唖然とする決断を行った。
 ドイツのシュミット首相は、ルフトハンザ航空機ハイジャック事件に際し、SSを突入させ、乗客全員を救出し、世界から称賛を浴びた。この日独の落差の如何に大きかったことか。
 安倍首相も、テロには決して屈しないと表明しており、国民もそれなりに覚悟を決めており、三木・福田首相の轍を踏むことは有り得ないだろうと信じたい。
 テロに屈しないという強固な国民意思がテロ対策の要であることを銘肝したい。

(6)若者に対する教育
 AFP通信によれば、シリアとイラクの過激派に流入する若者の出身地は以下の通りである。

 何故、若者が過激主義に感化されるのか、判然とはしないが、テロによって世界が変わることは絶対に有り得ない事、目的が手段を正当化すると云うような考えは、近代主義とは相容れない等をしっかり教育すべきだし、若者の不満や不安を払拭するような政策をも行うべきだろう。

(7)その他
 ともすれば、イスラム国に対する戦いを宗派対立の一環と捉える者も居るが、そのような見方は極めて危険ですらある。過激主義、原理主義が問題なのである。また、テロを貧困や不平等に帰する考えもあり、そのような現状がテロの温床となることは有りうるだろう。そういう意味で、日本が為すべき役割が多々あることは否定しないし、そのような役割を積極的に果たすことも積極平和主義の考えに沿うものである。

6 終わりに
 今般の有志連合の結成、安保理決議の採択等におけるオバマ大統領のリーダーシップには目を瞠るものがあり、軟弱、弱腰外交、良く言えば協調外交と批判されたオバマ氏とは思えないほどの活躍振りだ。先の小生の拙論では、米国は世界の警察官役を降りようとしていると推定したが、世界の警察官にまた復帰すべく政策転換をしたのだろうか? 米国が、本当に豹変(或いは虎変か)したのか、今後を見極める必要ある。
 我が国も、積極平和主義が単なる政治的スローガンだったのか、日本が国際社会で名誉ある地位を占めるためのその確かな第一歩を踏み出すための実効性ある具体的な政策なのか、世界が固唾をのんで見守っているだろう。(了)