倶に天下を語るに足らず!

山下 輝男

1 初めに
 明治日本の産業革命遺産の世界遺産への登録が、外相合意を無視する形で韓国側の難癖により、一時的には危ぶまれたが、日本が譲歩した形で決着し、7月5日、ユネスコの世界遺産委員会で登録が認められた。小生はtwitterで勝ち誇る韓国と安堵の日本と対照的だと呟いた。然し、呟いたけでは消化不良であり、一文を認めた次第である。
 韓国では相変わらず、日本企業に対する損害賠償請求訴訟が頻発し、今回の譲歩で、更にその傾向が拡大されるのではないかと危惧する。
 盗人にも等しい強奪・実効支配している竹島、「完全かつ最終的に解決」済みであるにも拘らず、所謂従軍慰安婦問題、そして強制連行問題等では相も変らぬ日本に対する謂われなき誹謗中傷を繰り返す韓国と我々は倶に天下を語ることが出来るのだろうか?

2 強制連行問題について
(1)強制連行とは
 強制連行と云われているのは、国民徴用令に基づいて1939年(昭和14)に策定された「朝鮮人内地移送計画」によって、朝鮮人労働者が朝鮮半島から日本内地へと集団渡航したことを指していると考えてよい。
 国民徴用令は、国家総動員法(1938年4月)に基づく勅令であり、1939年7月制定されたが、朝鮮における施行は、1944年(昭和19)8月8日である。それまで、国民徴用令の適用を免除されていた朝鮮人にも実施するとの決定により、同年9月より実施され、1945年8月の終戦までの11ヶ月間実施される。実際の派遣は、1945年3月の下関-釜山間の連絡船の運航が困難になるまでの7ヵ月間であった。
 その総数については、完全な統計がないが、60万人余りと云われる。
これ等の労務動員(戦時動員)が強制連行に該当するのかどうかが問われるべきだ。
 内地への渡航の実情について
制度面では、募集、斡旋、そして徴用がある。
①募集:1939年9月から
②斡旋(官斡旋):1942年2月以降
 事業主が所要人員を申請、総督府等が割り当てて、行政機関の斡旋で労働者を募集
③徴用:1944年9月以降 徴用された朝鮮人数は、厚労省によれば、245人である。(単位に注意、わずか245人である。)
 蛇足ながら、徴用忌避には罰則規定があるが、募集、斡旋にはそのような罰則規定はない。日本人の被徴用者数は、
 終戦時延べ600万人超である。
 この3つの制度全てを強制連行とするのが韓国の基本的な主張である。

(2)論点や反論
  自らの意思で応募しても強制というのか?
  自らの意思で応募しても、その応募や志願は政治的・社会的に強制されたものであるから強制連行であると彼等は云い募るが、それは国家による強制連行ではない。何が何でも強制連行があったと云いたいが為の口実に過ぎない。
  戦時動員されたのは日本人であり、その当時、彼等朝鮮人も間違いなく日本人だったのである。この事実を認めたくないのかも知れぬが、厳然たる事実である。当時の日本国民によって戦時動員は義務であった。この事実から目を逸らしてはならない。
  日本への渡航実態は?
  1942年1月以降の日本への全渡航者数は138万人弱であり、朝鮮人の動員数は52万人余りであり、日本への出稼ぎ者が相当数に上っているが、これは何を意味しているか明らかであろう。
  強制労働か、厚遇か
  慣れない労働、厳しい環境下であり、トラブルはあったろうが、それが全てであるとは云えぬ。動員された朝鮮人の大半は厚遇されていたと指摘されている。
  尚、戦時徴用は、ILOの強制労働条約で禁じられた強制労働に当たらないとされている。
  暗躍した朝鮮人ブローカー
  人さらい同然の非道な行為が行われたとの証言もあるが、それが日本の官憲によるとの明白な証拠があるのだろうか?慰安婦問題の吉田清治証言ではないが、胡散臭いと感じるのだが・・所謂従軍慰安婦では女衒が暗躍したが、似たような状況か?

(3)日韓基本条約と日韓請求権協定
 日韓基本条約は、1965年(昭和40年)6月22日に日本と大韓民国との間で結ばれ、日本の韓国に対する莫大な経済協力、韓国の日本に対する一切の請求権の完全かつ最終的な解決、それらに基づく関係正常化などが取り決められた。
 財産及び請求権に関する協定が結ばれ、この協定において日本は韓国に対し、朝鮮に投資した資本及び日本人の個別財産の全てを放棄するとともに、約11億ドル(当時の日本の外貨準備額は18億ドルであった。) の無償資金と借款を援助すること、韓国は対日請求権を放棄することに合意した。
 この対韓経済協力金が後の韓国の発展に寄与したことをもっと知らしるべきだ。

3 韓国の変な動向
(1)対日請求の再燃と賠償請求裁判、最高裁の判定
 朝鮮人強制連行に関連して、賠償請求訴訟が起きたが、原告敗訴が続いていた。2002年の日弁連の勧告があった降の2005年廬武鉉政権以降対日請求が再燃したが、韓国政府は日韓請求権協定により完了していると確認した。冷静かつ正常な判断であったと思う。
 然しながら、韓国最高裁は、2012年5月、個人請求権は消えていないと判断し、三菱重工業や新日本製鉄(現新日鉄住金)など日本企業は徴用者に対する賠償責任があるとした。

(2)燎原の火の如くに広がる徴用訴訟
 ・2012年5月:最高裁個人の請求権消滅していないと判断差し戻し
 ・2012年10月:三菱重工提訴 
 ・2013年2月、富山市の機械メーカー不二越に対する賠償訴訟提起
 ・同年3月、新たに新日鉄住金を、7月には新たに三菱重工業を提訴
 ・同年7月30日、釜山高裁、三菱に賠償を命ずる判決
 ・2015年2月、徴用被害者等1000人が日本企業100社以上を提訴すると報じられた。
  尚、2014年初頭にも判決が出ると見られた最高裁の判決は未だ出されていない。韓国の最高裁が判決を出さないのは、日本側敗訴が確定した場合、明確な国際法違反になると指摘され、国際司法裁判所への提訴も辞さないとの方針を伝えたからではないかと推測されている。
 韓国は、日本企業が原告側に見舞金を支払うことで和解できないかと打診したとも伝えられる。このような姑息な策に乗る必要は毛頭ないし、我が国政府が拒否して当然である。彼等の口車に乗った途端に、日本は強制連行を認めたと大宣伝される。何度、煮え湯を飲まされたかを想起すべし
 一方、被告となっている日本企業も、最高裁敗訴が確定しても賠償金を払うべきではない。それ位の気骨は示して欲しいものだ。

(3)マスコミ、国民世論等
 最高裁の決定を金科玉条にして、声高に日本側に賠償すべしと叫ぶことは必定である。また、世界遺産登録問題に関連して、日本側の譲歩を日本が強制性を認めたと解して、宣伝戦に活用するだろう。ユネスコの議事録には、「forced to work」と表現されており、これはどう解釈されるのか、懸念を表明する識者も多い。昨日7日、岸田外相は、「当時、国民徴用令に基づく徴用が行われたことを記述したもので、何ら新しい内容を含んでいない」と語ったが、果たして、そのような日本的な解釈が、受け入れられるのだろうか?
 政府は最高裁の21012年の判定を三権分立の立場から尊重せざるを得ないと嘯き、対日攻勢を強める可能性もある。セウォル号事件で明らかなように、極めて政治的で国民世論の動向に過敏な韓国司法は、政治と一体化しているとみるべきだ。

4 我が国はどう対応すべきか
(1)歴史的事実を明確にすべし
 近現代史は、関係国の政治的な思惑が錯綜し、また観る視点によって事実の解釈が異なり、真実を明らかにするのは容易ではない。であるが故に、日本は日本が事実と信じるに足る状況を精査し、それを根拠にして折衝・交渉すべきだ。日本は主張すべきは主張し、相手の事実誤認は正すべきだ。世界にも事実を発信する必要があろう。
 共同歴史研究なるものが果たして成立するかどうかは疑問だ。政治性を持ち込む彼等との間に冷静且つ真摯な共同研究は成り立たない。前回の轍を踏むこと明らかだ。

(2)いい加減な妥協、曖昧な決着は禍根を齎す
 日本人の美徳は“和を以て尊しとなす”であるが、それをあろうことか、国際政治の場でも実践しようとする。諍いを避け、何とか妥協点を探ろうとする。その結果、譲歩を強いられることとなる。それは河野談話の例を見れば明らかだし、今般の世界遺産登録問題にも現れている。

(3)韓国との関係
 日本にとって、一衣帯水の関係にある隣国、日本の安全保障にとって地政学的に極めて重要な地位を占める半島国家である韓国である。そして、日本は大陸文化を主として朝鮮半島経由で入手したのも事実である。切りたくとも切れない関係であるからこそ、何とかして、緊密な関係を築くべく時には卑屈と思えるほどの譲歩もしてきた。然るに彼等は、その日本の譲歩を当然視し、更なる譲歩を求めてくる。
 外務省が韓国を
 このような韓国と戦略的に如何に付き合うか再考すべき時に来ている。韓国と共通の価値観を共有しているのだろうか、していけるだろうか疑問を感じる日本人が飛躍的に増えている。倶に天下を語るに足らずとも云えよう。
 日本社会が斯様な雰囲気になるのは韓国にとっても不幸なはずだと思うが、そのような議論が起きている気配はない?韓国の良識を見せて欲しいものだ。

(F)