地雷の恐怖から安全・安心の村へ
=カンボジアコミュニティ総合開発プロジェクト体験記=

6 郷に入らずば、郷に従え

起工式で挨拶するJMAS会長

地雷除去機等の教育訓練、サイト整備、村民・コミューン等の調整も終了し、いよいよ地雷除去及び道路等のインフラ整備全てが開始されることとなり、地域の人たちへの広報も兼ねて起工式を行いました。

事前に、CMACマネージャーに、「これから始まるPJですから、起工式は質素に、1年後の竣工式は盛大にやりましょう!」と提案したところ、彼も「質素・簡潔な式を準備しましょう」と快く同意してくれました。
ところが式典の当日「多分100人程度の参加だろう」と思いながら、会場周辺に近づくと日頃と様子が違います。

道行く人たちは、盛装した村人、お坊さん、警察官、軍人さん、子供達も浮き浮きした様子、そして私の視界に参加者約400名の人々の姿、州知事を始め、CMAC長官、JMAS会長等の高官達、数十台の車、1ヶ月前までは危険な地雷原であった所に大きなテントが立ちました。

「この村の人口は確か300人だったよね」、「これが質素なのか!」驚くより先に”予算がオーバーする”との現実的な心配が先に立ちました。
CMACマネージャーに「これが質素ですか?」と尋ねました。彼は「そうです。カンボジアにおいては、このような式典は、村のお祭りです。村民達の唯一の楽しみはお祭りです。」

村の歴史始まって以来の一大イベントです。
日本において起工式は、PJの成功と安全を祈願する厳粛なものでありますが、カンボジアにおいては、村人達の大きな楽しみの”祭り”であります。
祭りにふさわしい段取りが大切なのです。

日本の伝統の”鍬入れ式”

日本式の理屈はとおりません。”文化と習慣の違い”を改めて感じるとともに、カンボジアにおいてイベント等を企画・実行する際、「郷に入らずば、郷に従え」の良き教訓となりました。
また、本式典におきまして日本のNGOが行うPJである事を広く広報し、また日本の伝統文化を紹介するために、地鎮祭・鍬入れ式を行う事にしました。

しかしながら神事を執り行う神主さんはいません。
急遽、インターネットで調べ、祭礼グッツを作り祝詞を勉強し、不遜ながら私が神主代行を務めました。

特に祝詞奏上、鍬入れ式はクメールの人々には珍しく大きな話題となり、カンボジア国営テレビ、新聞を通じ国内に紹介されたそうです。
このように機会を捉え、日本の伝統文化を紹介する事も相互理解を深めるために大切であります。

子供、村人達は、式典が開始される数時間前から参列し、CMAC長官の約1時間にも及ぶ長いスピーチにもじっと我慢して行儀良く座っています。
私が感心していると、CMACの隊員が「彼らは、お土産のパンと水を待っているのです」と教えてくれました。

州知事、JMAS会長、CMAC長官のスピーチを聞きながら多くの笑顔に満ちた村人の姿を目の前にして、内戦終了後、約20年間地雷に汚染され、危険な不毛な土地が”安全・安心”の地に変わり、コーン等の栽培により収入が増え安定した生活が可能になる事の意義を改めて感じた出来事でした。