地雷の恐怖から安全・安心の村へ
=カンボジアコミュニティ総合開発プロジェクト体験記=

9 “魔法の機械”対人地雷除去機

地雷処理をより迅速・確実かつ安全に行うために、日本政府は2004年から、民間企業とともに対人地雷除去機(DM)の研究開発を実施しました。
対人地雷除去機は、人力で探査、処理する場合の極めて遅い除去速度、膨大な所要隊力、作業の危険性等を克服し、地雷除去速度の大幅な向上、除去隊員の安全性の確保、除去作業の効率性の増大等を図り、広域の地雷原を迅速・確実・安全に処理するために作られた機械です。

JMASは、コマツのDM-85地雷除去機の開発段階から軍事専門家として技術協力を行い、私も2006年以来開発に携わりました。
しかしながら残念な事に、日本の武器輸出三原則に抵触するため対戦車地雷の処理には使用できません。
1日も早い対戦車地雷除去に関してもこれらの適用除外にする事が望まれます。

旧学校付近の地雷除去

PJにおいては、コマツからこの地雷除去機の無償貸与を受け、地雷除去機による本格的な大規模地雷処理を行いました。
地雷除去機は、防爆キャビンで操縦手の安全を確保し、ドーザ前方部に取り付けた”ビット付きローラー”が高速回転し、地中30cm付近に埋設された対人地雷を強制的に爆破或いは破壊し、時間当たり約400~500平方メートルの地雷原を安全化する機械です。
地雷除去機は、対人地雷を対象としているため、爆発威力の大きな対戦車地雷、或いは不発弾が存在する恐れがある場合は、リモートコントロールにより操作し縦手の安全を確保することもできます。

この機械を運用することにより、直径20cm程度の樹林、潅木、雑草等に覆われた地雷に汚染された荒地は、人力で地雷除去する場合の約40~50倍の速さで地雷を処理し安全化され、住宅地や農地等に転用する事ができます。

DMは、樹林、灌木、コーン畑、バナナ園の中の地雷を除去し、1週間に約2ヘクタールのペースで地雷原を安全化していきます。
国連の機械による地雷処理基準(約98%)以上の処理の信頼性はありますが、地中深く不発弾等が存在する可能性もあり、処理後の安全確認は必要です。
しかしながら、回転ローラーの通過した痕跡は、丁度トラクターで開墾し、”ふわふわした畝”を作った状態になるため、村人は地雷除去機の後に続きコーンの種等を直ちに蒔きます。
「危険だから安全確認が終わった後に種を蒔いて下さい!」と何度頼んでも、「今まで危険な地雷原でも種を蒔いていた。こんなすごい機械が通った跡は、絶対安全である。」と自分勝手に判断し、私達の言う事を聞いてくれません。
とうとう村長さんにお願いして、農民達に地雷除去が終了するまで数日間、町に出かけてもらい自分の土地を離れて頂き、安全を確保することにしました。

DMを洗車する村人達

今まで地雷が埋設された”危険な荒地”が、一瞬にして”安全なお金を生む土地”に変わります。
地雷除去機が通過した跡地には、直ちに隣家との境界杭が設置されます。
コーンの栽培は、1ヘクタール当たり数百ドルの収益を得ることができ、村全体で約40ヘクタールの新たな耕作地が生まれ、溜池の構築により、乾季にも農耕が可能となります。

カンボジアにおいては1家族1ヘクタールあれば最小限の生活はできます。地雷除去の結節ごとにオペレーター達がDMを洗車します。この時、村人・子供達が笑顔でお手伝いをしてくれますが、地雷除去機に対するお礼の意味かも知れません。
村人達にとっては、地雷除去機は、村の復興を担う、正に「魔法の機械」に見えたのかもしれません。