イワン・チェンナムの中国便り
-中国兵法「三十六計」全36回(第十八計)-

翻訳編集 イワン・チェンナム

 第十八計 擒賊擒王(きんぞくきんおう)“賊を捕らえるには王を捕らえよ”

出典 唐代詩人杜甫《前出塞》詩: “挽弓当挽強、用箭当用長、射人先射馬、擒賊先擒王”


原文解釈 “その堅きをくじき、その頭を奪い、もってその体を解く。竜の戦うはその道極まるなり。”
 敵の主力を撃破し、その指揮官を捕らえれば、軍全体を壊滅させることが出来る。指揮官を失った敵は、竜が陸に上がって戦うようなもので、全く力を発揮しなくなり、絶体絶命となる。

考証  西暦756年、中国鎮遠地域が反乱軍の攻撃にさらされていた。その首長は、これに手を焼き、反乱軍の指揮官を捕らえて一気に反乱を鎮めることを考えた。いく度かの戦闘により反乱軍を追い詰めたが、なかなか指揮官を見つけ出すことができなかった。鎮圧部隊の指揮官は、弓の射手達に、わざと本物の弓矢ではなく、木の弓矢を使わせて、鎮圧部隊が戦闘用の弓矢が尽きたものと思い込ませた。これにより、反乱軍は、反転攻撃の時期と思い、隠れていた指揮官の周りに集結した。これにより反乱軍の指揮官の位置を探し出すことが出来、指揮官を本物の矢で仕留めて、反乱を鎮圧することが出来た。

 桶狭間における、織田信長の作戦も、まさにこの擒賊擒王の策である。 ミツバチも女王蜂が死ぬと分散してしまう。
 指揮官は、常に見られており狙われている。

応用事例          “サービスの原点”
 上海の南京路にある闇市の国際テレビ機器店は、テレビ、録音機、録画機等視聴覚機器の専門店である。部品から製品まで何でも売っており、卸売りも兼ねた従業員39人ほどの零細企業である。しかし、この様な小さい見栄えのしない零細企業が、ここ数年の間に飛躍的な成長を遂げてきているのであった。1990年には4800万元の売上げがあり、利益は143万元で、前年の1989年比では、それぞれ22%と25%の伸びを示した。
 この伸びの原因は、以下のようなサービスにあった。
 ある日、客が来て、“別の店で買ったテレビが、部屋の中のアンテナではうまく映らないのだが、どうしてだろうか?”と、店員に尋ねた。店員は、自分の店で買ってもらったテレビではなかったが、勤務終了後の時間を利用して、この客の家まで訪ねて調べた結果、テレビは問題がなく、アンテナの環境が悪かったことが判明した。これにより自分の店の性能の良い室内アンテナを設置したところよく映るようになった。
 1990年1月、この店は、上海市が開催した黄浦区浦東サービス週間活動に参加した。この店は、この地域に出色のサービスを展開した。それは、1週間に延べ17人の人員に顧客訪問をさせたのである。また、この顧客訪問は、“三種類の訪問”と称して、「老齢者向け、特別困難な用件向け、技術相談向け」に分けて効果的なサービスに努めた。
 この様な努力により、この店は、益々繁盛していったのである。
まさにお客を“王”の存在として明確に認識してこの王を攻めた結果である。

 理屈では分かっていても、行動に出せるまでに従業員を教育することは並大抵のことではない。
 教育は意識改革、訓練は具体的な稽古。どちらも大切である。

(第十八計 了)