ソマリア沖海賊対策
-我が国周辺諸国の活動として中国の活動-

山内 敏秀

1948年 兵庫県生まれ
1970年 防衛大学校卒業
海上自衛隊入隊 主として潜水艦部隊で勤務
1988年 潜水艦艦長
1992年 海上自衛隊幹部学校教官
1996年 青山学院大学国際政治経済学研究科修了
1999年 防衛大学校海上防衛学教室助教授
2000年 防衛大学校国防論教育室教授
2004年 海上自衛隊退職
2006年 横浜商科大学講師(非常勤)
2009年 チャンネルNippon事務局

前回、中国が行っているソマリア沖海賊対処の活動をご紹介しました。
今回は同じく我が国の近隣であるロシアの活動状況をご紹介しようと思います。ただ、最初のお断りしておきますが、今回の紹介はロシアメディアの英語版に基づいております。したがって、内容には限界があることをご了解ください。

 平成20年9月22日(火)、ロシア海軍総司令官は「我々はソマリア沖海賊に対処する国際的な努力に参加する。しかし、ロシア軍艦は独自の作戦を実施する」と発言しています。
9月23日(水)、バルチック艦隊の指揮下にあるミサイル・フリゲート「ネウストラシムイ」がカリーニングラード基地を出港しました。「ネウストラシムイ」の出港を発表したロシア海軍のスポークスマンは「ロシアは、市民と商船を守るため海賊の被害を受けている地域に軍艦を定期的に派遣することを決定した」ことを付け加えています。

「ネウストラシムイ」は10月20日(火)にスエズ運河を通過し、ソマリア海域に向かって歩を進めていきます。
この時点では「ネウストラシムイ」の任務は「ロシア籍船又はロシア人が乗り組む外国籍船を護衛し、海賊の攻撃から守ること」とされていました。
25日(日)、イェーメンのアデン港に到着した「ネウストラシムイ」は食料、真水の補給を行い、28日に出港、ソマリア沖海域に入り、船舶の護衛を開始しました。
その後、バルチック艦隊の給油艦「イェルニア」が合同し、以後2隻で護衛任務を行うこととなりました。

12月23日には「ネウストラシムイ」の任務は1月中旬まで継続され、同艦が任務を終了した後は太平洋艦隊の「アドミラル・ヴィノグラドフ」が交代する予定であると報じられています。
ロシアのフリゲート「ネウストラシムイ」は13個の船団、51隻の商船を護衛し、安全な航行に寄与したというのが2008年の実績として記録されることとなりました。
2009年をソマリア沖で向かえた「ネウストラシムイ」は新年も護衛任務に従事し、1月6日には妊娠中の女性を含む11名が乗る漂流中の漁船を救助しています。
そして、2月7日(土)、50隻以上の商船の護衛という成果を残して「ネウストラシムイ」は母港カリーニングラードに帰港、市長、バルチック艦隊司令長官、モスクワ、サンクト・ペテルブルグからの政府関係者の出迎えを受けました。

「ネウストラシムイ」の帰国に先立つ12月9日、ミサイル駆逐艦(ロシア語では大型対潜艦)「アドミラル・ヴィノグラドフ」、外洋曳船「フォーチィ・クリロフ」、給油艦「ペチェンガ」「ボリス・ブートマ」で編成された太平洋艦隊の艦艇支隊がウラジオストックを出港しています。そして、1月2日にアラビア海に入り、護衛任務を実施中の「ネウストラシムイ」と会合しています。そして、1月7日、2隻の商船を護衛することからその任務を開始しました。16日には海賊から解放されたデンマーク船をオマーンまで護衛し、29日には海賊の攻撃を抑止しつつ5隻の外国籍商船の護衛に当たり、2月9日にはインド海軍のミサイル・フリゲートと共同の対海賊共同行動を実施しています。

太平洋艦隊の艦艇支隊が着実な護衛任務を実施しているさなか、特筆する事件が起きました。インド海軍との共同訓練に参加していたロシアの原子力ミサイル巡洋艦「ピョートル・ヴェリキ-」が母船1隻、高速ボート2隻から成る海賊船グループを拿捕したのです。ソコトラ島沖で巡洋艦搭載のヘリコプターがイランの国旗を掲げた漁船に向かう高速ボートを発見したことがきっかけとなり、拿捕に結びついたものでした。海賊船には突撃銃、擲弾筒(手榴弾を発射する武器)や現金、麻薬が積まれていました。拿捕された海賊はイェーメンに引き渡されました。
3月2日、ミサイル駆逐艦「アドミラル・ヴィノグラドフ」を中心とする太平洋艦隊からの艦艇支隊の交代として同じく太平洋艦隊から同型のミサイル駆逐艦「アドミラル・パンテレーエフ」を中心とする太平洋艦隊としては第2次になる艦艇支隊を派遣することになった旨発表がありました。

3月17日、ミサイル駆逐艦「アドミラル・ヴィノグラドフ」と給油艦「ボリス・ブートマ」はソマリア沖での任務を終了し、帰国の途についています。なお、帰国の途中、インドネシアのジャカルタ及び中国の湛江への親善訪問を実施しています。
3月29日、ロシア太平洋艦隊第2艦艇支隊を構成するミサイル駆逐艦「アドミラル・パンテレーエフ」、サルベージ曳船、2隻の給油艦は母港ウラジオストックを出港し、4月27日アデン湾に到着しています。早速29日には海賊と思われる29名が乗り組んでいたボートを拿捕し、ボートからはカラシニコフ突撃銃、ハンドガン、携帯型航海機器、燃料缶、多数の使用済み弾倉が発見されています。

4月29日には、ロシア国防相がソマリア沖における商船の運航の安全が確保されるまで、ロシアは軍艦を派遣し、パトロールを続けること声明しています。
6月9日、ミサイル駆逐艦「アドミラル・パンテレーエフ」を中心とする第2艦艇支隊は41隻の商船の護衛、海賊と思われる29名が乗るボートの拿捕、海賊の攻撃の排除等の実績を残して帰国の途につき、7月1日ウラジオストックに帰港しています。

ウラジオスットクに帰港したミサイル駆逐艦「アドミラル・パンテレーエフ」
(出典:http://www.mil.ru/info/1069/details/index.shtml?id=64287)

第2艦艇支隊の交代は今回も太平洋艦隊から派遣されることとなり、ロシアとしては第4次の派遣部隊(太平洋艦隊第3艦艇支隊)は2機のヘリコプターを搭載したミサイル駆逐艦「アドミラル・トリブツ」を中核として救難曳船MB-99、給油艦「ボーリス・ブートマ」から編成され、6月29日にウラジオストックを出港しました。

そして、7月30日にアデン湾に到着しています。以後、船舶の護衛任務を実施していく中、9月18日から前回の「時の話題」でもご紹介しました中国の第3次派遣部隊と協同訓練を実施し、また共同の船舶護衛任務を行っています。特に9月21日から行った護衛任務では23隻の商船を中ロ両国の艦艇が共同で護衛しています。

護衛任務に従事するミサイル駆逐艦「アドミラル・トリブツ」 (出典:http://www.mil.ru/info/1069/details/index.shtml?id=65884)

第3艦艇支隊は10月15日まで任務を行い、26か国100隻以上の船舶を護衛するという実績を残して、11月16日ウラジオストックに帰港しました。

11月12日、ウラジオストックに向け、対馬海峡を北上する「アドミラル・トリブツ」 (統合幕僚監部提供)

ロシアとしては第5次となる派遣部隊は北海艦隊から派遣されることとなり、ミサイル駆逐艦「アドミラル・チャバネンコ」と支援艦艇から編成され、11月23日にはスエズ運河を通過し、30日アデン湾に進出しています。現地に進出した「アドミラル・チャバネンコ」は12月4日に行った7隻のタンカー・貨物船から成る船団の護衛を皮切りに、護衛任務を開始しました。

12月5日には派遣部隊指揮官(米側資料では第680任務部隊とされています)イルザ上級大佐は米第151共同任務部隊指揮官サンダース少将と海賊対処について協議を行っています。
現在も第5次の派遣部隊が任務を継続中であり、さらに第6次となる部隊も準備されつつあるようです。

ミサイル・フリゲート「ネウストラシムイ」の性能要目(ジェーン海軍年鑑から)

冷戦期に旧ソ連の主力であった「クリバック」級フリゲートの後継として建造されました。もともと「クリバック」級フリゲートは旧ソ連では大型対潜艦として計画されましたが、1977年頃に「警備艦(escort ship)」に変更されています。したがって、「ネウストラシムイ」もロシアでは「警備艦」とされています。ミサイル・フリゲートという艦種はジェーン海軍年鑑によるものです。
「ネウストラシムイ」は1番艦として計画され、2番艦は一度は建造を中止し、スクラップにされると報じられましたが、2002年に建造が再開されることになり、2005年に建造中であることが確認され、2009年の就役が見込まれています。3番艦は進水までしましたが、その後の工事は中断したままです。

基準排水量:3,450トン、満載排水量:4,250トン
主機:ガスタービン2種4機(COGAG)
速力:30ノット、航続距離:16ノットで4,500マイル
兵装:
対艦ミサイル:SS-N-22:4連装×4
対空ミサイル:SA-N-9 垂直発射装置×4
対空ミサイル/砲熕兵器:CADS-N-1×2(30mmガトリング砲とSA-N-11 の組み合わせたもの)
対潜兵器:SS-N-15/16(射程65マイルのロケットの弾頭部にType40魚雷または核弾頭できるもの)
533mm発射管×6(SS-N-15/16ミサイルまたはType40対潜魚雷または53cmの魚雷が発射可能)
RBU-12000×1
砲熕兵器:100mm単装砲×1
ヘリコプター: Ka-27×1機

ミサイル駆逐艦「アドミラル・ヴィノグラドフ」、「アドミラル・パンテレーエフ」及び「アドミラル/トリブツ」の性能要目(3艦とも「ウダロイ」級ミサイル駆逐艦です)
1972年、「クレスタⅡ」級巡洋艦の後継として「クリバック」級フリゲートを基礎として設計が承認されています。ロシアの艦種名が大型対潜艦というように対潜水艦を主任務として建造されており、同時期に建造された「ソブレネンヌイ」級ミサイル駆逐艦は米空母を目標とした対水上艦攻撃を主目的としています。

基準排水量:6,700トン、満載排水量:8,500トン
主機:ガスタービン2種4機(COGAG)
速力:29ノット、航続距離:18ノットで7,700マイル
対空ミサイル:SA-N-9垂直発射装置×8
対潜ミサイル:SS-N-14 4連装×2
魚雷発射管:533mm4連装発射管×2
対潜ロケット:RBU-6000×2
砲熕兵器:100mm単装砲×2
機雷:26個の機雷用の軌条
ヘリコプター:Ka-27×2


ミサイル駆逐艦「アドミラル・チャバネンコ」の性能要目
上記ミサイル駆逐艦「アドミラル・ヴィノグラドフ」などの「ウダロイ」型の発展型で「ウダロイⅡ」型ミサイル駆逐艦と呼ばれています。
基準排水量:7,700トン、満載排水量:8,900トン
主機:ガスタービン2種4機(COGAG)
速力:28ノット、航続距離:18ノットで4,000マイル
対艦ミサイル:SS-N-22 4連装×2
対空ミサイル:SA-N-9垂直発射装置×8
対空ミサイル/砲熕兵器:CADS-N-1×2(30mmガトリング砲とSA-N-11 の組み合わせたもの)
魚雷発射管:533mm4連装発射管×2(SS-N-15対潜ミサイルも発射可能)
対潜ロケット:RBU-6000×2
砲熕兵器:130mm単装砲×2
機雷:26個の機雷用の軌条
ヘリコプター:Ka-27×2