日本海海戦110周年行事

チャンネルNippon編集局

 平成27年5月27日、日本海海戦110周年行事がおこなわれました。

この度、三笠保存会事務局長(中塚 久雄氏)から行事の概要並びに記念行事における三笠保存会会長式辞及び第7艦隊司令官祝辞の投稿をいただきましたので、ここに紹介いたします。

(掲載順序)
1 日本海海戦110周年行事盛大に開催(三笠保存会事務局長 記)
2 三笠保存会会長式辞
3 第7艦隊司令官祝辞

日本海海戦110周年行事盛大に開催

三笠保存会 事務局長 中塚 久雄

 記念艦「三笠」では今年が日本海海戦から110年の節目の年に当たることから各種行事を開催しました。
 先ず、5月16日(土)には記念演奏会を開催しました。横須賀芸術劇場において約1,300名の方に海上自衛隊東京音楽隊による演奏を楽しんでいただきました。


 演奏会の第1部は日本海海戦当時の海軍軍楽長である瀬戸口藤吉作曲の「敷島艦行進曲」や「日本海海戦」及び日露戦争における日英同盟の重要性に鑑み英国のマーチ王ケネス・アルフォード作曲の「ボギー大佐」など7曲を、第2部では皆さんに楽しんで頂くために「宇宙戦艦ヤマト」などポピュラーな音楽7曲を、アンコールでは軍艦行進曲などで約2時間は瞬く間に過ぎてゆきました。

 5月23日(土)には記念講演会を開催しました。講師はJR東海代表取締役名誉会長 葛西敬之氏で「21世紀に求められるリーダーとは」との演題で約200名の方が傾聴されました。葛西氏は、今後求められるリーダーは世界の大局を見て自分の立ち位置を見極め、現実・現状を直視し、対応についてリスクをとる覚悟が必要と話され、終了後も教育問題等も含めて多くの質問があり、皆さんの関心の高さが伺えました。

 5月27日は晴天で夏日となる暑い日となりましたが約500名のご係累や会員の方がお集まりになられて盛大に記念式典を開催しました。今年は例年のご来賓に加えて節目の年であることから武居海上幕僚長の他、小泉妙様にお出でいただきました。小泉様は記念艦「三笠」復元時に「自尊自重の精神の重要性」を説かれた元慶應義塾長小泉信三先生の次女であられます。54年前に信三先生がご出席された同じ講堂での記念式典に参加され、また最上艦橋の東郷長官が立たれた場所を見学されました。
 式典では、国歌斉唱に続いて日本海海戦で散華された日露両将兵の御霊に黙祷を捧げた後、三笠保存会増田会長の式辞に始まり、井上横須賀地方総監、トーマス米第7艦隊司令官、吉田横須賀市長からご祝辞をいただきました。さらに英国国防武官の飛入りスピーチがあり、日露戦争当時の日英同盟の意義や現在の日英米の絆について話され、その後、ご係累の方などを紹介、厳粛な雰囲気の下終了いたしました。
 また、今年は式典に続いて一龍斎貞花師匠によります講談「日本海海戦」を行い、皆さん伝統の話術に引込まれておりました。
 続いて、中部甲板での横須賀音楽隊によります演奏会、後甲板での祝宴を盛大に終えることができました。

満艦飾の記念艦「三笠」

増田三笠保存会会長式辞 井上横須賀地方総監祝辞 トーマス米第7艦隊司令官 英国国防武官

講談「日本海海戦」 一龍齋貞家師匠


 今年も多くの方にご参加いただきました。110年前にロシアの極東進出により存亡の危機に立たされた我が国が日本海海戦の大勝利により講和を締結して独立を守ったことに思いを致し、日本人としての誇りを持っていただきたいと思います。

 また、今年は横須賀製鉄所150周年にあたることから、特別展「日本海海戦と横須賀製鉄所」を開催しております。東郷元帥は日露戦争終了後横須賀製鉄所を建造した小栗上野介の子孫を呼んで「日本海海戦の勝利は小栗さんのお陰です」とお礼を述べておられます。日本海海戦と横須賀製鉄所の関係について説明した展示となっておりますので是非ともご覧になっていただきたいと思います。
http://www.kinenkan-mikasa.or.jp/2015_event/a4-chirashi.pdf

日本海海戦110周年記念式典式辞

三笠保存会会長 増田 信行


 本日ここに、武居海上幕僚長、井上横須賀地方総監、鮒田自衛艦隊司令官、トーマス米海軍第七艦隊司令官、吉田横須賀市長はじめ、多数のご来賓のご臨席を賜り、日本海海戦百十周年記念式典を挙行出来ますことは、誠に慶ばしく厚く御礼を申し上げます。
 皆様ご承知のとおり、十八世紀の産業革命以来、列強は、強大な軍事力を背景に、植民地を求めて版図を広げ、その流れはアジア諸国にも及んで十九世紀になりますと列強が支配した植民地は、実に世界の約八割強であり、まさにこの弱肉強食の時代に、日本という「まことに小さな国が、明治と言う開化期を迎えた」ことになります。
 ロシアは、幕末には、既に清国から沿海州を獲得し、南下の機会をうかがっており、朝鮮半島にも露骨な触手を伸ばしてきました。
 このままでは、ロシアに朝鮮半島を支配され、日本も清国と同じ命運を辿る、と危機感を抱いた日本は、我が国の主権を守るため、海洋国家英国と同盟を結び、大国ロシアと戦う決断をしたのであります。まさに自存自衛の防衛戦争でありました。
 軍事的にも財政的にも余裕が全くなく、苦難に耐えたぎりぎりの戦いでありましたが、国民一人一人がそれぞれの分野で死力を尽くし、大きな負担にも耐え、文字どおり挙国一致で日露戦争を戦い抜きました。
 明治三十八年(一九〇五年)五月二十七日 東郷司令長官率いる日本の連合艦隊は、周到な兵力整備、情報の優越、練りに練られた巧みな作戦・用兵、そして将兵の極めて高い士気と練度で、バルチック艦隊を撃滅し、世界海戦史上例を見ない大勝利を収めたのであります。
 このため、ロシアにおいても、講和止む無しの機運が高まり、ルーズベルト アメリカ大統領の仲介で、ポーツマス講和条約が締結され、日露戦争は勝利のうちに終結いたしました。
 この戦争により我が国は独立を守るとともに、国際的地位を高めましたが、日本が大国ロシアに勝利したことにより、今まで抑圧されていたアジア諸国などの多くの人々に、希望と勇気を与え、独立国家建設の気運をもたらし、その後、それらの国々が独立を勝ち取ったことは、歴史の示す通りであります。
 日露戦争は、まさに自衛のために戦った防衛戦争であり、「三笠」の勇姿を眺める度に、明治の人々の国を守る気概と勇気、戦略性と合理性、そして国家に対する熱い思いを感じざるを得ません。
 他方、我が国固有の領土である尖閣諸島への中国の無法な侵犯に耐え、北朝鮮による同胞の拉致を許し、竹島及び北方領土を未だに解決できない現状に憂慮せざるを得ません。
 戦後、わが国は、平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して、安全と生存を保持しようと決意し、防衛を他国に委ね、急速な経済復興を成し遂げ経済大国になりました。
 しかし、それを可能とした環境も大きく揺らぎ始め、日本は今やかってない至難の時代を迎え、真の国民の力量が問われようとしております。
 昭和三十三年(一九五八年)十一月、三笠保存会設立総会において、小泉信三先生は次のような講話をされております。
 『自尊自重の精神のない国民が、他国の人々の侮りを受けるのは当然であり、自らを重んずる精神のないものは、弱小のものに対しては不遜となり、強大なものに対して卑屈になることは避けがたいことであります。他国の武力に屈するのやむなきに至った日本人は、国民としての誇りを失い、心の支えを失って、退廃に陥りました。道徳的努力を無意味なものとして嘲る思想、さらに、何者かに媚びる気持ちから、しきりに日本及び日本人を侮り嘲る風潮が生じております。』と。今から五十年以上も前の話ですが、今、我が国の現状を翻って見ますと、政治を始め、教育、マスコミなど、小泉先生が懸念された状態が未だ続いており、日本人としての誇りも矜持も持たない人が多く見受けられることは、極めて残念であります。
 大東亜戦争に敗れたたとはいえ、この日露戦争・日本海海戦の勝利は、日本民族の誇りであり、世界史における金字塔であることに、何ら変わりはありません。
 英国では、日本海海戦の丁度百年前のトラファルガー沖海戦の勝利を、未だ国民挙げて祝い、語り継ぎ、英国民の矜持の中核の一つを成しています。
 我が国もこの日本海海戦の百十周年の記念の年に、この勝利を国民こぞって、誇りを持って祝うと共に、明治の先達が示した、国を守る気概と勇気に学ぼうではありませんか。
 昨年度、三笠の来観者は二十万人を超えました。この記念艦「三笠」が、今後とも国民に広く親しまれ、多くの方々、特に日本の将来を担う青少年にとって、その発奮の一助になることを願って止みません。
 最後になりましたが、平素から大変お世話になっております地元横須賀の皆様、ご指導・ご協力を賜っております官公庁・三笠保存会会員各位、また、本日の式典に多大のご尽力を頂きました横須賀地方総監部 及び 横須賀淡交会の皆様に対して、衷心より厚く御礼を申し上げ、式辞といたします。

平成27年5月27日 
三笠保存会会長 
増 田 信 行

日本海海戦110周年記念式典
第7艦隊司令官トーマス中将祝辞

(概訳:三笠保存会)

 吉田横須賀市長、増田三笠保存会会長、武居海上幕僚長他海上自衛隊上級指揮官各位(鮒田自衛艦隊司令官、井上横須賀地方総監、鍛冶潜水艦隊司令官)及び御来賓の皆様、本日この席に出席させて頂きましたことに感謝致します。日本海海戦における軍艦三笠の活躍を記念するこの式典に参加できましたことは私にとり非常に光栄なことであります。
 本日、皆様と共に参集しておりますこの艦は、我々に歴史を伝えております。(新旧の)三笠保存会の皆様は、約90年間にわたり、戦艦「三笠」が国家のために尽くした偉業の語り部として、記念艦の保存と共に努力してこられました。三笠保存会の素晴らしい業績によってこそ、本艦の栄光を記憶に留めることができるのであります。
 米国海軍と第7艦隊は、記念艦「三笠」の保存維持のため一役を果たしております。米海軍のチェスター・二ミッツ元帥は、米海軍作戦部長の職を退いた後、1955年から1961年にかけ、三笠保存のためのキャンペーンに携わられました。2009年の夏には、米海軍の空母「二ミッツ」が横須賀に寄港中、東郷・二ミッツ両提督の関係を強調する幾つかの行事に関与しました。空母「二ミッツ」の乗員はこの有名な戦艦の外舷塗装を行い、その艦上で三笠保存会、空母「ニミッツ」及び海上自衛隊共催による艦上レセプションが行われました。
 我々が、家族や友人とこの記念艦「三笠」を見学する時、自由を守るために東郷大将が発せられた“各員一層奮励努力せよ”という命令を思い起こします。この東郷大将の命令は、不確かな世界に生きる我々にも示唆を与えてくれます。
 米国第7艦隊は、海上自衛隊との緊密な連携を誇りに思っております。我々は、この70年間、相互に連携し活動、訓練そして作戦を実施し、インドからアジアそして太平洋に亘る海域における平和と安定維持を支援してきました。我々はこの海域を我々のホーム(根拠地)と呼べることは幸運であり、この周辺隣国に対する長期にわたる責務の遂行を誇りに思うものであります。
 最後に重ねて、このような機会に祝辞を述べさせて頂くことが出来ましたことに感謝申し上げます。

(概訳:三笠保存会)