海上自衛隊の新たな水上艦艇整備に関する提言

元海上自衛隊・自衛艦隊司令官
村中 壽雄

目 次
1 提案の趣旨

2 我が国の安全保障・防衛を巡る情勢と海上防衛力の役割
(1)我が国の安全保障・防衛を巡る情勢
(2)海上防衛力の役割

3 新たな水上艦艇の整備要請根拠
(1)多機能・コンパクト護衛艦 (DEx)
(2)水陸両用強襲輸送艦 (LPDx)
(3)高速哨戒艇 (FPCx)
(4)高速多用途輸送艦 (HSTVx) 及び多用途補給艦 (AOEx)

4 DEx の整備構想

5 その他の水上艦艇の整備構想
(1)LPDx の整備
(2)FPCx の整備
(3)HSTVx の整備
(4)AOEx の整備

6 新たな水上艦艇の建造に関して留意すべき重要事項

  別添資料第1「新たな水上艦艇整備に関する提言(主要要目・性能案)」

  別添資料第2「新たな水上艦艇整備に関する提言(建造計画案)」


海上自衛隊の新たな水上艦艇整備について提言

Naval Warfare Development Command NWDC seeks to lead the establishment of a culture of innovation throughout the Navy. Central to this vision is the CNO Rapid Innovation Cell (CRIC), an incubator for “disruptive thinkers. RADM Jerabek, Commander, NWDC described it as a safe haven for free thinkers to propose and Incubate ideas. The CNO has recognized that junior personnel bring a fresh perspective, as they have not yet accepted traditional methods. (from briefing by RADM Scott B. Jerabak, Commander Naval Develop Command at USN Surface Navy Association Symposium 2014)
NWDCは海軍全般にわたる「改革の文化」(保守固執を打破する体質)確立の先駆けになろうとしている。このヴィジョンの中核は、CNOの急速改革室(CNO Rapid Innovation Cell : CRIC)であり、いわゆる現状を打破する思考家(”Disruptive Thinker”)を養成することである。NWDCは、自由な発想を育て、提案する思考家の安全な避難所である。CNO は、若年層が未だ伝統的な方法に囚われてなく新鮮な展望を持っていると認識している。

1 提案の趣旨
 新防衛計画大綱(25大綱)及び中期防衛力整備計画(26中期防)(平成26年12月17日閣議決定)に準拠し、平成30年度以降おおむね20年間に海上自衛隊が整備すべき新たな水上艦艇に関して提言するものである。

 ここで言う新たな水上艦艇とは、25大綱に定める「多様な任務への対応能力の向上と船体のコンパクト化を両立させた新たな護衛艦」(多機能・コンパクト護衛艦 仮称DEx)の他、水陸両用強襲輸送艦(仮称LPDx)、高速哨戒艇(仮称Fast Patrol Craft FPCx)高速多用途輸送艦(仮称High Speed Transport Vessel HSTVx)、及び多用途補給艦(AOEx)を言う。

2 我が国の安全保障・防衛を巡る情勢と海上防衛力の役割
(1)我が国の安全保障・防衛を巡る情勢

 現下の我が国の安全保障・防衛を巡る主な情勢は以下のとおりであり、今後ますます諸事案に関する懸念が増大する可能性がある。

中国が軍事力とりわけ海軍力を急速に増強して東・南シナ海さらに西太平洋域等への展開能力を拡大しつつあり、特に南シナ海の島嶼の領有権を巡る周辺国との確執を先鋭化させるとともに、尖閣諸島の領有権を主張して海洋警備隊の警備艦艇等により領域侵犯を繰り返しており軍事力介入にエスカレートする不測の事態を招きかねない。
北朝鮮は核・ミサイル開発を背景とした挑発的言動を拡大している。
周辺国との確執が我が国に対する本格的侵略事態に到る蓋然性は低いものの、我が領域・EEZを含む周辺海域において国境を超えた不法・暴力組織等によるテロ、ゲリラ、大量破壊兵力の拡散、密輸等いわゆるグレーゾーンの脅威が顕在化する蓋然性が高い。

(2)海上防衛力の役割

防衛白書(平成25年版)によれば、我が国に対する本格的な侵略事態への備えとして「海上交通の安全確保のための作戦」について、冷戦時代と全く同じ記述で、「我が国の周辺数百海里における各種戦とともに、おおむね1,000海里程度の航路帯の敵艦艇に対処するとともに状況により我が国の船舶などを直接護衛する」としているが、これは最早全く現実的ではない。我が国の輸出入に当たる船舶・乗組員ともに殆ど多国籍であり、1970年、80年代には2千数百隻あった我が国固有の外航商船隊は今やほぼ皆無である。世界中の物資輸送の85 %以上は依然として船舶輸送によっているが、海洋諸国の貿易は日本と同様多国籍海運に依存している。
かくて今後見通しうる将来ともに国家間の戦争において海上交通に対する攻撃を戦争目標達成の手段とすることはあり得ない。唯一の例外は、イランによるホルムズ海峡封鎖作戦であるが、全世界の海軍の協同作戦と国際世論を敵に回して成功は望めないことは明らかであり、脅迫手段にもなり得ないであろう。
それでも現実に存在するように、海賊による船舶奪取その他テロ、ゲリラなどによる世界各海域における海上交通に対する攻撃の可能性は否定できない。これらの脅威に対しては、目下実施されているアデン湾・ソマリア沖合における海賊対処のように諸外国海軍の協同により船舶の安全を確保することになる。
今やシーレーン防衛は世界の海洋国家の共通の関心事であり、グローバルコモン(Global Common)のプロテクションの一環である。すなわち第一義的には各海洋国家が自国周辺海域の安全を確保する責任を分担し合うとともに、一国だけでは対応が困難な場合には関係国の協同対処により、世界の海上交通の安全が確保されることになる。
 すなわち、海上自衛隊が海上防衛任務として最も重視し、大部分の兵力整備の要請根拠としてきた前述の我が国の海上交通保護のための作戦は最早幻想であり、世界の各海洋国が自国周辺海域の安全確保を分担する国際協同活動によるべきことを防衛関係者は認識して新たな海上防衛力整備を推進しなければならない。
一方、目下の緊要な安全保障・防衛上の問題である尖閣諸島の領有を巡る中国との確執に対しては、万一、相手の軍事力介入による小規模から大規模事態へのエスカレートに際して、FPCx、DEx、及びDDG/DD各任務部隊による既成事実確立阻止のため段階的対処、さらに 万一島嶼占拠に至れば統合部隊による島嶼奪還作戦によって回復を図る。できるだけ小規模段階のうちに侵略を防止し、阻止することが我が防衛力が果たすべき責務であり、それでもなお相手の意図粉砕に至らない場合には、究極的に日米同盟に基づく米軍の支援・介入を得て日米共同作戦により事態に対処するというシームレスな対応が大綱の基本的戦略であると考えられる。
これを要するに、我が国の安全を侵害する如何なる事態も抑止し、万一事態がエスカレートする場合にシームレスに対処し我が国の防衛を全うするため、以下に列挙する我が海上防衛力の役割と作戦は、蓋然性が低い本土に対する本格的侵攻及び国際平和協力活動を除けば、海上交通の安全確保を含め全て「周辺海域の防衛」に包含できる。ただし、ここで言う「周辺海域の防衛」は冷戦時代のソ連による我が本土に対する着上陸侵攻を洋上で阻止することを主たる作戦とするものではないことに注意する必要がある。
 なお、近来、国際平和協力活動への参加が重視されているが、それは我が国の安全上、直接脅威となる事態である「周辺海域の防衛」に対する第二義的な任務と考えるべきである。
周辺海域の防衛に関わる諸作戦
中国海軍の増強と東・南シナ海及びそれ以遠における海空兵力の進出・展開能力増大への対応 (警戒監視、ISR)
尖閣諸島及びその他の我が国の領域を巡る中国との確執が武力紛争にエスカレートする事態の抑止と対処(島嶼防衛)
北朝鮮の核兵器・ミサイル開発・保有を背景とした攻撃的行動の顕在化に対する抑止と対処 (BMD)
我が国の離島等に対する侵略及びEEZにおける海洋資源開発を巡る周辺諸国との確執に備えた防衛警備(「領域警備」)
周辺海域におけるグレーゾーン脅威(テロ・ゲリラ・麻薬・人身売買密輸等)の増大への対応
(Maritime Interception Operations MIO、核施設防護等)
周辺海域の海洋情報活動(ISR)
本格的本土侵攻に対する防衛
国際平和協力活動への参加
国連平和維持活動(PKO)
グローバル・コモン(*海洋・航空・宇宙・サイバー空間)の防護
*「我が国の海上交通保護」はグローバル・コモン(海洋)に対する脅威と攻撃に対する世界の
 海洋各国の自国周辺海域の安全維持及び必要に応じて行う関係国との国際協力防護活動の成果に期待
国内外の自然災害救援活動及び海外における人道支援

3 新たな水上艦艇の整備要請根拠
(1)多機能・コンパクト護衛艦(DEx)

25大綱において、海上自衛隊の体制として「常続監視や対潜戦等の各種作戦の効果的遂行による周辺海域の防衛や海上交通の安全確保及び国際平和協力活動等を機動的に実施し得るよう、多様な任務への対応能力の向上と船体のコンパクト化を両立させた新たな護衛艦」の整備が示されている。
25大綱の別表において、海上自衛隊の将来の主要な編成、装備等の具体的規模として、基幹部隊のうち護衛艦部隊については4個護衛隊群(8個隊)及び6個護衛隊、主要装備のうち護衛艦は54隻と示されている。
平成26年度計画護衛艦(26 DD)の建造によって、各護衛隊群に編成される汎用護衛艦5隻は、「むらさめ(平成3年度計画護衛艦)クラス」以降のDD によって全て近代化されることとなる。 4個護衛隊群の構成艦であるDDH 4隻、DDG(Aegis)8隻、DD 20隻(合計32隻)以外の護衛艦は、従来地方隊配備又は地域配備艦としてDE 「いしかりクラス」及び「あぶくまクラス」が整備され、これまでは、これらDEの耐用命数後の代替艦は護衛隊群所属の老朽艦であるDD 「ゆきクラス」又は「きりクラス」が充当されてきた。 DExは、これらの地方隊配備又は地域配備護衛艦の後継艦と考えられ、22大綱までの16隻(48隻-32隻)に加え25大綱で増勢された6隻、すなわち合計22隻の新型護衛艦が整備されると推測される。
26中期防において、「各種事態における実効的な抑止と対処として周辺海域における安全確保能力向上」のための事業としてDExの導入が示されている。本中期防における護衛艦の建造隻数は5隻であり、うちAegis DDG 2隻、26 DD 1隻とすれば、DExは2隻建造されることになる。

(2)水陸両用強襲輸送艦(LPDx)

25大綱のⅣ-2項「自衛隊の体制整備に当たっての重視事項」の(2)号に「重視すべき機能・能力」として「島嶼部に対する攻撃への対応」のため、「島嶼への侵攻があった場合に速やかに上陸・奪回・確保するための本格的な水陸両用作戦能力」を新たに整備することが示された。さらに、26中期防のⅡ-1項において「島嶼への侵攻があった場合、速やかに上陸・奪回・確保するための本格的水陸両用作戦能力を新たに整備するため、連隊規模の複数の水陸両用作戦専門部隊から構成される水陸両用機動団を新編する」ことが計画されている。
島嶼奪還作戦には、水陸両用機動団を根拠地から海上輸送し、敵部隊が既に上陸し橋頭堡を確保している島嶼海岸(敵性海岸)に強襲揚陸させる能力を有する米海軍の “Amphibious Assault Ship 水陸両用強襲艦” に準じた輸送艦が必要である。この際、できるだけ速やかに奪還・上陸作戦を敢行するために水陸両用機動団を一度に輸送・揚陸できる規模の対空・対水上自艦防御機能を有する水陸両用強襲輸送艦部隊を編成する必要がある。
このため、兵員1,000名と所要の装備を輸送し、艦載航空機(垂直離着陸機、ヘリ等)と高速水上輸送艇(LCAC、AAV7等)により水際部から海岸に迅速に揚陸可能な2万トン級のLPDx 3隻が必要であり、稼働率を考慮して4隻整備する。特に、この輸送艦は、このような揚陸能力を可能にする航空機運用設備(飛行甲板・エレベーター・ハンガー)及び水上輸送艇の格納・洋上離着艦可能な施設(well dock)の装備が不可欠である。

(3)高速哨戒艇(FPCx)

中国海軍は最新の高速ミサイル艇(Fast Attack Craft-Missile “Houbei” (PGGF): 220ton full, Wave piercing catamaran hull, 36kt, SSM sea skimming 150km range, 30mm CIEWS)を60隻以上保有している。これは、中国が排他的権益を主張する東・南シナ海の沿岸海域の防衛・警備・侵攻の先兵に任ずる強力な戦力であり、尖閣諸島問題における武力行使へのエスカレートに際して、中国が小規模軍事紛争に留めつつ既成事実の確立を意図する場合、このPGGFの大量襲来の公算が高い。このような事態に際して、先ずPGGFと同程度以上の攻撃力を有する相当規模の小型高速哨戒艇部隊により、既成事実の確立を未然に阻止し、事態の拡大抑止を図ることが先決である。
また、国際的不法暴力組織等が海上から偽装武装漁船等によって本土に破壊分子を潜入させ政経中枢及び原子力発電所等の重要施設に対するテロ・ゲリラ等による破壊行動を企図する場合、これを未然に阻止するために沿岸水際部における常続的警戒と不法行動の対処に即応する地域配備の哨戒艇部隊が不可欠である。
現在、海自には「はやぶさ」クラスミサイル艇(PG)6隻があるが、これらは対処兵力として攻撃・防御能力不十分であり既に老朽化している。これらの更新・強化を図るため機動性と攻撃能力を向上した高速哨戒艇を整備し、平素は各地方隊及び沖縄に配備し、担当警備水際部の常続的哨戒に任じつつ、万一、島嶼侵攻事態の恐れが生起した場合には地域配備部隊の一部又は全部を機動的に集中して任務部隊を編成して対応する。このような運用構想の基に1個隊6隻(常時即応4隻)を6個隊、合計36隻の高速哨戒艇の整備が緊要である。

(4)高速多用途輸送艦(HSTVx)及び多用途補給艦(AOEx)

前2項の我が国の安全保障・防衛を巡る情勢に鑑みた海上防衛力の任務の多様化・多用化に応じるため主要戦闘艦艇の近代化・増勢については、25大綱別表に具体的に示されている。しかしながら別表以外に海自が保有する補助艦艇・支援艦艇等の規模については、防衛計画の大綱が初めて策定された当時(昭和52年度)に比べて殆ど変っていない。早急に見直しの上、所要の艦艇を近代化・増強する必要がある。
特に、主要水上戦闘艦(DDG, DDH, DD, DEx, LSDx)の運用効率の向上を図るとともに、周辺海域における多種多様な海上輸送所要に柔軟に応じ得る高速多用途輸送艦(HSTVx)の整備が不可欠である。
また、周辺及びそれ以遠の海域における海上部隊の効率的運用を支援するため、現有の大型多用途補給艦(「ましゅう」クラス)(AOEx) の増勢が喫緊の課題である。

4 DExの整備構想
(1)主任務

周辺海域における常続的警戒監視及び情報活動(ISR)
尖閣問題対応(軍事力介入抑止と小規模紛争対処、領域侵攻阻止)
離島等に対する「領域警備」
領海及びEEZにおける海洋資源採取活動の妨害に対する防護
周辺海域におけるテロ・ゲリラ、大量破壊兵器拡散、密輸等対処(MIO、海上から我が国の核施設等攻撃に対する対処を含む)
護衛隊群部隊の作戦(BMD、本格侵攻阻止等)の防護支援(ASW, ASUW, MCM)
国際平和協力活動支援(PKO, Humanitarian Aid (HA) / Natural Disaster Relief (DR) )

(2)運用構想

固有編成は護衛艦隊隷下6個護衛隊とし、各護衛隊は各地方隊主基地(沖縄を含む)を定系港とする。
平常、各護衛隊は自衛艦隊司令官の指定する担当警備海域の常続的警戒監視、情報活動に任ずる。
情勢に応じて、自衛艦隊司令官の作戦指揮の下に、全部又は一部の護衛隊(艦)を自衛艦隊直轄又は護衛隊群隷下の任務部隊に編成し、機動的に集中・分散して運用し、領域警備又はその他の防衛警備行動、海外派遣行動等に任ずる。

(3)作戦機能(Mission Capabilities)

ASW:自艦・自隊防御・HVU護衛主体
ASUW:水上戦闘艦艦艇・小型舟艇群の攻撃・不法行動等の警備・対処
AAW : 自艦防御主体
MCM : Organic MCM :自艦・自隊・HVU防護のため作戦海面の機雷掃海・掃討
対電子戦
ISR
海外における人道支援及び国内外の自然災害救援活動

(4)主要要目性能、艦内体制等

基準排水量:2,000~3,000 ton
船体:全長 110m・幅20 m・喫水3~3.5 m
     船体:Mono- hull、Catamaran / Trimaran
     Steel- Composite hybrid structure (上部構造物は合成材CFRP)
速力:最大45 kt+
航続距離:1,500 nm (30kt +), 5,000 nm (20 kt-)
乗組員:80名以下(艦載機運用員を除く)
機関・電機
機関・推進器:Diesel and Gas (CODAG), Water-jet, Side-thruster
電機:直流主電源
装備・武器システム
AAW
  Radar:Multi-function Surveillance & Tracking 3D
  Missile: ESSM, RAM
  Gun: 20mm CIEWS
ASUW
  Radar: Surface & Navigation
  Missile: Fire & forget (infrared & laser seeker) longer range tactical missile
  Gun: 57mm machine gun
  Laser gun: 後日装備
ASW
  Sonar: VDS (transmitter) & TASS (receiver)
  Weapon: Torpedo, Forward ASW rocket, Depth charge
MCM (organic MCM capability)
  Mine detection by UUV, USV
  Mine sweeping by SH-60 J/K
  Mine disposal by UUV
Combat data systems
  Data Link: Link-16, Helicopter /UAV control
  GCCSM/ICS
Countermeasures
  ESM/ECM, Chaff
  Torpedo defense (decoy)
ISR
  EO/IR
  Ship Signal Exploitation Equipment (SSEE): Surface ship COMINT system
艦載航空機、無人機(UAV, USV, UUV)、搭載艇
多目的有人艦載ヘリ:ISR, ASUW, MCM, Transportatio
無人機: VT-UAV: ISR, Patrol
    MCM unmanned system: UUV, USV
搭載艇:Rigid Hull Inflatable Boat RHIB (乗組員用及び作業用)

(5)建造計画案

   建造経費(400億円以下 / 隻)
   平成30年度開始、15年以内に22隻建造(平成30年度~44年度)

(6)建造・ライフサイクルコスト節減対策

建造費:300~400億円/隻、多年度一括建造契約又は装備武器のみ一括契約
Performance Based Logistics / Condition Based Maintenance
Decoupling / Module / Unit 方式装備(装備機器の近代化を容易にするため)
乗組員の省人化 (Automatic / Robic Damage Control)
装備機器・補用品・補給品の標準化
E-Education ,Training, Logistics

(7)DEx 整備に関する議論点

 防衛計画大綱が制定されて以来これまでの見直しにおいて海上自衛隊の艦艇整備について、機能・特性等を具体的に示して護衛艦の整備を規定したことは25大綱が初めてである。このことは、安全保障・防衛を巡る情勢の緊迫化にもかかわらず、艦艇整備について抜本的な改革が遅々として進んでいないことについて海上防衛力整備に係る当局に対する警鐘と見受けられる。
 次に列挙する事項は、DEx整備に必須の改革について、とりわけ最新の科学技術の導入に対して予想される諸般の抵抗あるいは逡巡である。大綱のコンセプトに基づきDExの整備をあるべき方向に推進する上に、このような障壁を如何に克服するかが課題である。

水上戦闘艦(護衛艦)の大型・重装備指向を避け、より多数隻のコンパクト・機動性・軽装備(mission oriented weapon systems)重視の護衛艦を整備
大口径砲指向(水上打撃戦・陸上支援射撃)から脱却し、グレーからホットの多様な事態の初動対処において柔軟かつシームレスな対応を可能とする精密命中度・大発射速度の小口径砲・機関砲を装備
Platform Centric からNetwork Centric 重視に移行
ハードキル装備よりもソフトキル装備及び高性能C4ISR に重点的コスト配分
ASWオぺレーション:護衛艦の役割の再認識が必要
水上戦闘艦(護衛艦+艦載機)部隊によるASW 作戦の役割は、自艦・自隊・HVU防護作戦であり、Hunter Killer Area ASWオペレーションは科学技術の進展による水上戦闘艦と潜水艦の相対的能力差(潜水艦優位)に伴い最早時代遅れである
Area ASW は、対潜哨戒機、SURTASS、無人機(UUV, USV)、固定機器等の有機的連携よる総合効果に期待
MCM 機能:多機能護衛艦は掃海艇の代替になり得ない
Organic MCM:自艦・自隊防護のため作戦海面から機雷の脅威排除(DExの機能)
Dedicated MCM:本土周辺の海峡・港湾等重要海面の常続的機雷監視及び敷設機雷排除・航路啓開(地域配備の掃海艦艇の機能)
無人機の活用:ISR, ASW, ASUW, MCM等におけるUAV, USV, UUV の大幅な活用(MCM装備艦艇は機雷原に侵入しない)
ステルス性及びメンテナンスフリー船型重視
合成船体材(Carbon Fiber Reinforced Plastics CFRP)の活用によるステルス性能、軽量化、浅喫水、メインテナンスコスト節減を重視
装備武器の定期修理及び船体の耐用命数途中の近代化を低コスト・短期間で実現可能とするModule, De-coupling, Unit方式の採用
艦内運営体制の抜本的改革による乗組員の省人化
戦闘・哨戒直配備、保安当直体制、役員制度、服務規程の見直し
自動装置・ロボット採用によるダメージコントロール省人化
乗組員の艦上保守整備と基地要員による維持整備支援とのコストバランス
教育訓練、補給・故障修理、医療支援等におけるIT活用
  E-Education / Training
  Distant Logistics
  E-Medical Support, etc.

5 その他の水上艦艇の整備構想
(1)LPDxの整備

主任務及び運用構想
 離島奪還・水陸両用強襲作戦における水陸両用機動部隊(1艦で陸自水陸両用機動団1/3)の主基地-敵性水際部への海上輸送
運用構想
 現有「おおすみクラス」LST 3隻(耐用命数経過後の代替艦2隻整備)に加えて、大型水陸両用強襲輸送艦4隻体制を保持、常時即応3隻体制を維持する。
主要要目・性能
基準排水量:25,000~30,000 ton
船体:全長約220 m・幅35 m・喫水10 m
    Steel – Composite hybrid (Superstructure CFRP)
速力:20~25kt
航続距離:6,000 nm (18kt)、10,000 nm (15kt)
乗組員:約400名
機関・推進器:ジーゼル駆動プロペラ推進
         サイドスラスター装備
装備・武器
  Radar : Multi- function surveillance & tracking 3D Surface & Navigation
  Missile: RAM
  Gun : 40mm MG, 12,7mm MG, 20mm CIWCS
  Combat data system: Link-16, GCCM/ICS,
  Countermeasure : ESM/ECM, Chaff, Torpedo defense (decoy)
  ISR : EO/IR, SSEE
陸上部隊輸送機能:水陸両用団の約3分の1の兵員(約1,000人)、装備
搭載・揚陸機能
  V-22, CH-47級(輸送)
  EH-101, UH-60 級(多用途)
  LCAC x 3, AAV-7 / LCM x 10 (ship – shore transport), RHIB (11m級)
  Side and Stern ramp
  Well dock
飛行甲板・格納庫・搭載航空機 (各級)
  V-22 tilt rotor aircraft,
  CH-47 transport,
  UH-60 utility,
  MQ-8C UAV (ISR)
建造計画案
建造費700億円以下 / 隻
平成30年度から20年以内に4隻建造

(2)FPCxの整備

主任務
我が領域及びEEZを含む周辺海域の領域警備任務
離島・島嶼に対する不法行動・侵攻(尖閣問題を含む)に対する初動対処
本土・島嶼に対するテロ・ゲリラ・その他の国境を超える組織による武力を伴う不法行動、侵攻を沿岸水際海面において阻止撃退
運用構想
各地方隊(+ 沖縄)の警備担当海域に1個隊6隻を配備(常時即応4隻)し、各地方総監の指揮統制の下、所定海面の常続警戒監視に任じる。
情勢に応じて、自衛艦隊司令官(統合海上部隊指揮官)の指揮下に全部又は複数隊をもって任務部隊を編成し、大規模な侵攻に機動的に対処する。
主要要目・性能
基準排水量:300~400 ton
船体:全長55m・幅8 m・喫水2.5 m
  SES, Wave-piercing Catamaran, Trimaran, or Deep V Mono hull Composite (CFRP)
速力:Max 45 kt+
航続距離:5,000 nm (18kt), 1500 nm (30kt)
乗組員:30 (officer + enlisted)
機関・推進器:Diesel, Water-jet
装備武器
  Radar: Surface & navigation
  Missile:SSM (Harpoon or Sea Griffin ), SAM (Stinger, RAM)
    Gun:57 mm MG, 20mm CIEWS, 12.7mm MG
Combat data system: GCCM/ICS
Countermeasure: ESM/ECM, Chaff,
建造計画案
平成30年度から建造開始、20年間で36隻建造
建造費:200億円以下 / 隻

(3)HSTVxの整備

任 務
島嶼部等の防衛警備に備えた統合部隊及び装備品の戦域内の海上輸送を主任務とする。
領有権を巡る確執に対して対象国の軍事力による示威行動の活発化など事態の緊迫化に際して陸自即応部隊等を急速に事前展開
対象国の弾道弾ミサイル発射に備えて空自陸上配備BMD装備(PAC-3)を所要の地域に急速展開
EEZ内の海洋資源開発を巡る確執が対象国の軍事力を背景にする紛争に拡大する恐れがある事態に備えて統合部隊・装備を至近の島嶼部に緊急輸送
紛争地域からの邦人救出に際して護衛艦、水陸両用強襲輸送艦等による輸送の支援
その他、平時における多目的海上輸送任務
遠隔地等への訓練用装備品・機材・部隊の輸送
国内外の自然災害派遣
人道支援活動、PKO等に際して部隊・装備・機材、救援物資の輸送
運用構想
各地方隊基地に各1隻、沖縄基地隊に3隻を配備し、各地方総監の指揮の下に平時の多目的輸送任務に応じる。
島嶼部等の防衛警備等のため全部又は一部の兵力を機動集中して任務部隊を編成、自衛艦隊司令官(統合海上任務部隊指揮官)又は隷下任務部隊指揮官の指揮・統制の下に自衛隊の部隊・装備品の緊急海上輸送に任ずる。
HSTVx合計8隻を整備して、陸自即応近代化旅団の基幹兵力である普通科連隊及び高射特科群・通信隊等の正面兵力、後方支援並びに旅団司令部要員の緊急海上輸送に必要な6隻を常時即応状態に維持する。
主要要目・性能
排水量:1,000 ton
船体:全長100 m・全幅20 m・喫水3.5 m
   民需船仕様、CFRP 船体材、Semi-SWATH Catamaran hull船型
速力:40 kt+
航続距離:1,200 nm (30 kt), 4,500 nm (20 kt)
乗組員:約45名
主機関・推進器:Diesel, Water jet
        サイドスラスター装備
装備武器等
  Radar: Surface and navigation
  Gun: 20mm CIEWS, 12.7mm MG
  簡易情報収集機能(赤外線暗視、電子情報)
輸送容量
  人員:兵員及び個人装具250人分+仮説ベット100人分
  貨物積載甲板:大型トラック・高機動車・軽装甲機動車両、その他の装備品及び補給用資材
  災害救援、人道支援活動に必要な救援物資等
揚降機能
  旋回式スターンランプ(車両等)1基
  サイドランプ(RIBボート)2基
  11m RHIBボート 2隻
  ヘリコプター発着艦・駐機可能な飛行甲板
建造計画案
船価:150億円以下 / 隻
平成30年度から20年間で8隻建造
  (LCU 4171 ゆら及びLCU2001クラスの後継艦として)

(4)AOExの整備

主任務運用構想
作戦部隊の任務の多用化・多様化に際して部隊運用の効率化・持続性向上のため広範かつ大量のロジスティック支援要求に機動的に任ずる。
国際人道支援活動及び国内外の自然災害救援任務
運用構想
現有の「ましゅう」クラス(AOE)2隻に加え、新たに建造する3隻をもって多用途補給艦を5隻保持、常時即応3隻体制を維持する。
主要要目・性能
現有「ましゅう」クラス補給艦(AOE)に次の機能を付加する。
 医療、修理工作、ヘリコプターハンガー(EH 101, CH-46 class x 2)
 塔載艇:RHIB (11m) x 2
建造計画
建造費約600億円 / 隻
平成40年度~44年度に1隻、平成45年度~49年度に2隻
現有「とわだ」クラスの耐用命数後の代替更新として平成30年度以降3隻建造する。

6 新たな水上艦艇の建造に関して留意すべき重要事項
(1)全 般

 中長期の海上自衛隊の水上艦艇建造計画において、現在の護衛隊群の規模及び構成を維持することを前提にする場合、1990年代以降今次防までに優先的に近代化が図られたDDH, DDG, DD (合計32隻)は、概ね平成45年度までは老朽化による代替更新の必要性は生じないと推定される。(「むらさめ」クラスの耐用命数45年の場合、代替更新は平成45年度から)この間に、目下の尖閣諸島問題をはじめ我が周辺海域において蓋然性が高まると見積もられるいわゆるグレーゾーンの脅威に備えて新たな水上艦艇を整備することが海上防衛力整備における喫緊の課題である。

 ここに提言するDEx, LPDx, FPCx 及びHSTVx建造並びにAOExの増勢は、現有の海上防衛力に不備ないし欠落している周辺海域の防衛・警備を主任務とする戦力の整備である。従来、とかく外洋海軍指向の戦闘艦艇整備に重点を置いてきたきらいがあることから180度転換する取り組みと心得る必要がある。

 Jane’s Defense Weekly (26 March 2014) 誌に掲載されたスエーデン空軍参謀長Major General Michael Bydenの次の発言は、今後の我が国の海上防衛力整備において傾聴に値するものと思われる。

  “While the Swedish armed forces and the SwAF are still keen to maintain and build upon the nearly 15 years of cooperation with NATO, recent events involving Russia, in particular, are forcing a realignment of resources in favor of homeland defense. We have a saying (in Sweden) that for the past 15 years we have been living under a ‘strategic time out’, when our entire focus was directed at being interoperable with others for overseas missions. If I’m to be honest, though, we lost track of national defense (during this time) and we need to rebuild (that capability), “ he said.
                  (from Interview by HIS Jane’s Defense Weekly 26 March 2014)

  「スエーデン軍及びスエーデン空軍は、これまで略15年間NATOとの共同のために兵力維持と建設を要訣としてきたが、ロシア(の脅威)を含む最近の事案は自国の本土防衛のために資源を再配分することを強いている。我々(スエーデン軍)は過去15年間『戦略中断』の時代を過ごしてきたと言える。この期間、我々は全面的に海外任務のため他国軍との相互運用に焦点を置いてきた。正直に言えば、我々はこの間、国家防衛のための本筋を見失っていた。今や国家防衛のための軍事能力を再建しなければならない。」と述べた。

(2)財政上の制約顧慮

 前述のとおり、これらの新たな水上艦艇の整備に際しては財政上の制約を考慮しなければならない。このため、予算上許容される範囲内で、各艦艇の隻数の確保を優先させるとともに、できる限り所要の機能の保持を図ることが肝要である。
 前記に示した各艦艇の建造計画はこのような諸点を勘案した私案であり、この計画によれば、平成30年度から20年間における各年度の艦艇建造費に占める経費は、各艦艇の建造経費を堅持する限り、平均1,090億円程度になる。この額は、その他の艦艇建造、航空機購入、弾薬購入等を加えたいわゆる正面経費の各年度の許容枠内(2,800億円~3,000億円)に収まると見積もられる。

 (別添資料第1「新たな水上艦艇整備に関する提言(主要要目・性能案)」及び別添資料第2「新たな水上艦艇整備に関する提言(建造計画案)」参照)

(3)DExの建造に関して

本艦は、海自創設以来の画期的な意義を持つ水上戦闘艦であり、現下の我が国の安全保障・防衛を巡る環境において期待どおりの任務を果たすためには、未だ海自関係者の大勢である「大艦巨砲」指向の文化を抜本的に改めて整備に取り組むことが最も重要である。
財政上の制約で、計画の建造が不可能で、量(隻数)と質(能力)のトレードが必要になる場合には、隻数(22隻)の確保が優先されるべきである。
ただし、機動性と運用の柔軟性を確保する上に、高速(40 kt+)性能と浅喫水(3m+)は緊要な性能であり、そのため合成材の船体構造への適用が不可欠である。(当面、大型艦はステイ-ル+CFRP〈上部構造物〉ハイブリッド船体)
米海軍の用語である「トータルオーナーシップコスト」(建造から就役後の運用・維持整備、除籍までの総所要経費)の節減が不可欠であり、次の施策への真剣な取り組みが必要である。
乗組員の省人化(マンパワーコストはライフサイクルコストの約60%)
装備機器・予備品・補給品の規格の同一化・標準化(全艦種、全造船所)
耐用命数期間中の装備武器の近代化コストの節減のため、建造時から極力Module, Decoupling, Unit方式を採用
無人機の活用 (ASW, ASUW, MCM, ISR)
Performance Based Logistics (PBL), Condition Based Maintenance (CBM) の採用
中国の軍事力の急速な増強と一層攻勢的な運用の現状に鑑み、できるだけ速やかに全艦の整備を完成しなければならない。

(4)LPDxの建造に関して

本艦の整備は、大綱に示された「本格的な水陸両用作戦能力の整備」の一環であり、従来の輸送艦と異なる水上戦闘艦である。そのため、離島奪還作戦における陸自の水陸両用機動団を敵性海岸に輸送し得る攻撃・防御能力が財政上の制約の中でも特に優先される。
大量兵力の迅速な揚陸に必要な航空機運用能力(V-22, CH-46クラス艦載機・飛行甲板・格納庫・エレベーター)及び水際部・海岸への海上輸送能力(LCAC・LCU・AAV7, 11m RHIB・格納区域・Well-Dock)が必至である。
対空・対水上武装は自艦防御機能確保のためであり、それを超える攻撃・防御機能は、水陸両用機動作戦支援任務部隊(海自護衛隊群を主とする水上任務部隊、潜水艦、空自攻撃戦闘機、早期警戒機等)の支援による。
その他、前(1)号の該当事項

(5)FPCxの建造に関して

各地域に配備(定係港)される総数36隻の本高速哨戒艇は、広大な領域とEEZを含む周辺海域におけるグレーゾーン脅威と対象国の膨大な各種海上兵力による離島防衛にシームレスに対処するための海上戦力であり、情勢に応じて集中・分散して作戦に応じ得る機動性が最も重要である。 そのため、DExと同じく高速性能と浅喫水が不可欠であり、最適船体構造 (hull form) の選択と合成材(CFRP)の活用が肝要である。
現下の情勢に鑑み、本艇の整備はDExと併行してできるだけ速やかに完成させなければならず、財政上の制約から量と質のトレードオフを考慮しなければならない場合、総隻数の確保を優先すべきである。
その他、前(1)号の該当事項

(6)JHSTVの建造に関して

 本小型多用途輸送艦は、平時は各地方隊にユーテイリティ用として配備するとともに、情勢に応じ有事に備えて機動集中して任務部隊として自衛隊の部隊・装備品等の急速海上輸送に任ずる装備であり、整備に当たって財政上の制約で計画変更やむを得ない場合にも高速性の確保を優先する必要がある。
(以上)

(兵術同好会「波涛」平成26年7月号から転載)