第8回:「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について」(25大綱)

防衛省、国家安全保障会議などにおける検討を経て、2013(平成25)年12月、「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱」(以下「新防衛大綱」)が策定されました。
以下、平成26年度防衛白書「日本の防衛」から引用し、新防衛大綱策定の背景とその内容について紹介します。

新防衛大綱策定の背景

22大綱見直しの経緯

1 防衛省内での検討(「防衛力の在り方検討のための委員会」)
「平成25年度の防衛力整備等について」(平成25年1月25日閣議決定)において、22大綱を見直し、13(同25)年中に結論を得ることとされたことを受け、防衛省は、13(同25)年1月に防衛副大臣を委員長とする「防衛力の在り方検討のための委員会」を設置した。委員会は25回開催され、国際情勢や防衛力の役割などについて議論を行った。委員会は同年7月26日、それまでに得られた検討の方向性と論点について防衛会議に中間報告を行った。
中間報告は、22大綱策定以降、様々な安全保障課題や不安定因が顕在化・先鋭化し、わが国を取り巻く安全保障環境は一層深刻化していると指摘している。また、国内にあっては、大規模災害などへの備えの重要性が改めて認識されたと指摘している。
委員会は、より実効的な防衛力を構築していくため、統合運用を踏まえた能力評価を行い、防衛力整備において重視されるべき機能・能力を導出した。中間報告は、能力評価の結果に基づき、①警戒監視能力の強化、②島嶼(とうしょ)部に対する攻撃への対応、③弾道ミサイル攻撃およびゲリラ・特殊部隊への対応、④サイバー攻撃への対応、⑤大規模災害などへの対応、⑥統合の強化、⑦情報機能の強化、⑧宇宙空間の利用の推進を重視すべきとしている。

2 「安全保障と防衛力に関する懇談会」と国家安全保障会議における検討
新防衛大綱は、「国家安全保障戦略」とともに、前述の「安全保障と防衛力に関する懇談会」において精力的に検討された。このうえで新防衛大綱は、13(同25)年12月4日に設置された国家安全保障会議で審議され、同月17日に国家安全保障会議と閣議において決定した。

新たな安全保障環境

1 グローバルな安全保障環境
国家間の相互依存関係が一層拡大・深化し、一国・一地域で生じた混乱や安全保障上の問題が、直ちに国際社会全体に拡大するリスクが増大している。また、中国、インドなどのさらなる発展と米国の影響力の相対的な変化にともなうパワーバランスの変化により、国際社会の多極化が進行している。一方、米国は、世界の平和と安定のための役割を引き続き果たしていくと考えられる。 国家間では、領土や主権、海洋における経済権益などをめぐり、純然たる有事でも平時でもないグレーゾーンの事態が増加傾向にある。
海洋では、海賊行為などの発生に加え、沿岸国による自国権利の一方的な主張・行動により、公海の自由が不当に侵害される状況が生じている。また、技術革新の急速な進展を背景として、宇宙空間・サイバー空間といった領域の安定的利用の確保が、国際社会の安全保障上の重要課題となっている。

2 アジア太平洋地域における安全保障環境
安全保障上の課題などの解決のため、国家間の協力関係の充実・強化が図られている。一方、グレーゾーンの事態が長期化する傾向が生じており、これらがより重大な事態に転じる可能性が懸念されている。
北朝鮮は、地域の緊張を高める行為を繰り返し、わが国を含む地域・国際社会の安全保障にとって重大な不安定要因となっている。特に、北朝鮮の核・ミサイル開発は、わが国に対するミサイル攻撃の示唆などの挑発的言動とあいまって、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威となっている。
中国は、地域と世界においてより協調的な形で積極的な役割を果たすことが強く期待されている一方、継続的に高い水準で国防費を増加させ、十分な透明性を欠く形で、軍事力を広範かつ急速に強化している。
また、海空域などにおける活動を急速に拡大・活発化し、特に、海洋における利害が対立する問題をめぐっては、力を背景とした現状変更を試みるなど、高圧的とも言える対応を示している。
こうした中国の軍事動向などについては、わが国として強く懸念しており、今後も強い関心を持って注視していく必要がある。
また、中国のこのような動向は、アジア太平洋地域・国際社会における安全保障上の懸念ともなっている。
ロシアは、軍改革を進展させ、軍事力の近代化に向けた取組が見られる。
また、ロシア軍の活動は、引き続き活発化の傾向にある。
米国は、アジア太平洋地域へのリバランスを明確にし、財政面などの制約の中でも、同盟国などとの関係の強化などを図りつつ、地域への関与、プレゼンスの維持・強化を進めている。



3 わが国の地理的特性など
海洋国家であるわが国にとって、「開かれ安定した海洋」の秩序を強化し、海上交通および航空交通の安全を確保することが、平和と繁栄の基礎である。また、わが国は、自然災害が多発するなど安全保障上の脆弱(ぜいじゃく)性を抱えており、東日本大震災のような大規模震災が発生した場合、その影響は、国際社会にも波及し得る。今後、南海トラフ地震などへの対処に万全を期す必要性が増している。

4 わが国が取り組むべき課題
これらを踏まえると、冷戦期に懸念されていたような主要国間の大規模武力紛争の蓋然性は引き続き低いと考えられるが、様々な安全保障上の課題や不安定要因がより顕在化・先鋭化してきており、22大綱の策定以降、わが国を取り巻く安全保障環境は、一層厳しさを増している。安全保障上の課題や不安定要因は、多様かつ広範であり、一国のみでは対応が困難である。したがって、課題などへの対応に利益を共有する各国が、地域・国際社会の安定のために協調しつつ積極的に対応する必要性がさらに増大している。

新防衛大綱の内容

基本的な考え方―統合機動防衛力の構築―

新防衛大綱では、わが国の平和と安全を守る中核として、22大綱の「動的防衛力」に代えて、新たに「統合機動防衛力」を構築することとした。
そもそも「動的防衛力」は、51大綱以来の「基盤的防衛力構想」によらずに取り組む観点から、静的な抑止力のみならず動的な抑止力を重視するなど、「基盤的防衛力構想」に比べれば「運用」に焦点をあてた防衛力であった。
しかしながら、わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、平素の活動に加え、グレーゾーンの事態を含め、自衛隊の対応が求められる事態が増加するとともに長期化しつつある。このような中、自衛隊の活動量を下支えする防衛力の「質」と「量」の確保が必ずしも十分とは言えない状況となっていた。また、多様な活動を実効的に行うためには、幅広い後方支援基盤を確立することが必要不可欠であった。
新防衛大綱では、このような反省点に立って、より統合運用を徹底し、装備の運用水準を高め、その活動量をさらに増加させるとともに、各種活動を下支えする防衛力の「質」と「量」を必要かつ十分に確保し、抑止力および対処力を高めていくこととした。あわせて、後方支援基盤をこれまで以上に幅広く強化し、最も効果的に運用できる態勢を構築することとした。
防衛力の「質」と「量」を確保するための具体的方策として、統合運用の観点からの能力評価を実施した。自衛隊のオペレーションは統合運用により行われているが、防衛力整備については、陸・海・空の各自衛隊の能力評価が大勢を占めるなど、統合運用の観点を十分に反映できる手法とはなっておらず、必ずしも自衛隊全体として最適な防衛力整備が行われてきたとは言えなかった。
したがって、今回は、各種事態などに統合運用により対応するとの基本的考え方を徹底したうえで、自衛隊全体の機能・能力に着目した能力評価を実施し、総合的な観点から特に重視すべき機能・能力を導き出したことに大きな意義がある。このような能力評価の結果を踏まえて防衛力整備を進めていくことで、今まで以上に陸・海・空の枠にとらわれることなく、メリハリのきいた防衛力の効率的な整備が可能となった。
さらに、22大綱と比較して、幅広い後方支援基盤を確立することとした。たとえば災害派遣に際して、自衛隊の駐屯地・基地は重要な展開基盤となるが、これら駐屯地・基地への被害を最小限にするため、その復旧能力を含めた抗たん性1を高めておく必要がある。また、隊員の宿舎や家族支援施策も充実させなければ、事態発生時において迅速に対応できず、「即応性」を十分確保することができない。加えて、「技能」「経験」「体力」「士気」などの様々な要素を勘案しつつ、自衛隊の「精強性」を確保する必要がある。    1 基地や施設などが敵の攻撃を受けた場合、その組織的機能を維持する能力をいう。
そのため、平素から厳しい訓練・演習を行うとともに、女性自衛官や予備自衛官のさらなる活用、募集・再就職支援といった人事教育施策を総合的に推進していく必要がある。さらには、各種事態において自衛隊が的確に対処するためには、地方公共団体や民間企業との連携・協力、国民の理解と協力が必要不可欠であることから、地方コミュニティーとの積極的な連携の強化や情報発信の強化がきわめて重要である。このように、多様な活動を実効的に実施するためには、22大綱と比較して抜本的に後方支援基盤を強化していくことが不可欠であることから、新防衛大綱においては、訓練・演習、運用基盤、人事教育、衛生、防衛生産・技術基盤、装備品の効率的な取得、研究開発、地域コミュニティーとの連携、情報発信の強化、知的基盤の強化、防衛省改革の推進など、幅広い分野を防衛力の能力発揮のための基盤として強化することとしている。

[ 解 説 ] 「動的防衛力」と「統合機動防衛力」の差異について

22大綱において構築していくこととされた「動的防衛力」においては、ISR(情報収集・警戒監視・偵察)活動などの常時継続的かつ戦略的な実施などによる抑止の考え方が提示された。しかしながら、純然たる平時でも有事でもない、いわばグレーゾーンの事態の増加および長期化の傾向が見られ、かつ、これらがより重大な事態に転じる可能性が懸念されるなど、わが国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増している。そのため、22大綱の考え方によっては、状況に即応する十分な抑止力を維持・構築できない可能性が生じた。それらの状況を踏まえ、新防衛大綱では、事態の状況の推移に応じて訓練・演習などを戦略的に実施し、また、安全保障環境に即した部隊配置と機動的な部隊展開を含む対処態勢を迅速に構築することにより、わが国の防衛意思と高い能力を示し、事態の深刻化を抑制することとした。これは、一層厳しさを増した安全保障環境に対応して、より烈度の高い事態に対応し得るように、ISR活動を中心とした22大綱の抑止概念に代わる新たな抑止力の考え方を示したものである。
また、22大綱策定時の防衛大臣談話においては、「装備の質と量の確保のみならず、自衛隊の活動量を増していくことを主眼」とするとされたものの、「動的防衛力」は防衛力の「質」と「量」を整備するための防衛力整備の論理を内包していない概念であったため、防衛力の「活動量」の増大のみに焦点が当たっていた。そのため、これまでよりもさらに実効性を求められる自衛隊の活動を下支えする防衛力の「質」と「量」の確保が必ずしも十分とはいえない状況と言わざるを得なかった。
新防衛大綱で示した「統合機動防衛力」は、そうした状況を踏まえ、特に現在の安全保障環境において実効的な抑止力を構築するには、活動量だけでなく防衛力の「質」と「量」の十分な確保が必要であるとの観点から、想定される各種事態について、統合運用を踏まえた能力評価をはじめて実施した。そのうえで、総合的な観点から特に重視すべき機能・能力を導き出し、海上優勢および航空優勢の確実な維持に加え、機動展開能力の整備などを重視し、必要な防衛力の「質」と「量」を確保するとともに、多様な活動を実効的に行うための幅広い後方支援基盤を強化することとしたものである。

わが国の防衛の基本方針

1 基本方針と3つのアプローチ
新防衛大綱は、わが国の防衛のための最も基本的な事項を明確にするとの観点から、わが国の防衛の基本方針を明示している。 まず、「国家安全保障戦略」を踏まえ、国際協調主義に基づく積極的平和主義の観点から、わが国自身の外交力、防衛力などを強化し、自らが果たし得る役割の拡大を図るとともに、日米同盟を基軸として、各国との協力関係を拡大・深化させ、わが国の安全およびアジア太平洋地域の平和と安定を追求しつつ、世界の平和と安定および繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していくとしている。
このような基本理念のもと、総合的な防衛体制を構築し、各種事態の抑止・対処のための体制を強化するとともに、外交政策と密接な連携を図りながら、日米同盟を強化しつつ、諸外国との二国間・多国間の安全保障協力を積極的に推進するほか、防衛力の能力発揮のための基盤の確立を図るとしている。
この際、わが国は、日本国憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にはならないとの基本方針に従い、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備するとしている。
また、核兵器の脅威に対しては、米国の拡大抑止は不可欠であり、その信頼性の維持・強化のために米国と緊密に協力していくとともに、弾道ミサイル防衛や国民保護を含むわが国自身の取組により適切に対応するとしている。加えて、核軍縮・不拡散のための取組に積極的・能動的な役割を果たしていくとしている。
そのうえで、新防衛大綱は、一層厳しさを増す安全保障環境において、わが国を防衛するための柱として、
① わが国自身の努力
② 日米同盟の強化
③ 安全保障協力の積極的な推進
の3つのアプローチを示している。それぞれについて、以下で説明する。

2 わが国自身の努力
(1)総合的な防衛体制の構築
新防衛大綱は、一層厳しさを増す安全保障環境のもと、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備し、統合運用を基本とする柔軟かつ即応性の高い運用に努めるとしている。また、各種事態の発生に際しては、迅速・的確に意思決定を行い、地方公共団体、民間団体などとも連携を図り、事態の推移に応じ、政府一体となってシームレスに対応することとしている。
さらに、新防衛大綱は、各種災害への対応や国民の保護のための各種体制を引き続き整備するとともに、緊急事態において在外邦人などの安全確保のために万全の態勢を整えるとしている。
以上の対応を的確に行うため、関連する各種計画などの体系化を図りつつ、シミュレーションや総合的な訓練・演習を拡充し、対処態勢の実効性を高めるとしている。
(2)わが国の防衛力―統合機動防衛力の構築―
新防衛大綱は、防衛力はわが国の安全保障の最終的な担保であるとし、わが国を取り巻く安全保障環境が刻々と変化する中で、防衛力を不断に見直し、その変化に適応していかなければならないとしている。このため、想定される各種事態への対応について、統合運用の観点からの能力評価を実施し、総合的な観点から特に重視すべき機能・能力を導き出すことにより、限られた資源を重点的かつ柔軟に配分していく必要があるとしている。
また、新防衛大綱は、平素からの常時継続的な情報収集・警戒監視・偵察活動(常続監視)や事態の推移に応じた対処態勢の迅速な構築により、事態の深刻化を防止するとしている。各種事態が発生した場合には、必要な海上優勢2・航空優勢3を確保して実効的に対処し、被害を最小化することが重要であるとしている。
    2 海域において相手の海上戦力より優勢であり、相手から大きな損害を受けることなく諸作戦を遂行できる状態
    3 空域において相手の航空戦力より優勢であり、相手から大きな損害を受けることなく諸作戦を遂行できる状態
そのため、装備の運用水準を高め、その活動量を増加させ、統合運用による適切な活動を機動的かつ持続的に実施していくことに加え、防衛力をより強靭(じん)なものとするため、各種活動を下支えする防衛力の「質」および「量」を必要かつ十分に確保し、抑止力および対処力を高めていくとしている。
以上の観点から、新防衛大綱は、今後の防衛力について、特に重視すべき機能・能力についての全体最適を図るとともに、多様な活動を統合運用によりシームレスかつ状況に臨機に対応して機動的に行い得る、実効的なものとしていくことが必要であるとしている。このため、新防衛大綱は、幅広い後方支援基盤の確立に配意しつつ、高度な技術力と情報・指揮通信能力に支えられ、ハードおよびソフト両面における即応性、持続性、強靭性および連接性も重視した統合機動防衛力を構築することとしている。
この点、統合機動防衛力が重視する特性として、これまでの大綱では明示されてこなかった「強靱性」および「連接性」を新たにあげたところであるが、これは統合運用を踏まえた能力評価を実施し、総合的な観点から特に重視すべき機能・能力を検討した結果を踏まえたものである。具体的に「強靱性」とは、各種活動を下支えする防衛力の「質」と「量」の必要かつ十分な確保と、防衛力の能力発揮のための基盤の一層の強化を重視することをいう。また、「連接性」とは、平素から各種事態までシームレスに対応していくために、関係府省、地方公共団体、民間部門などとの連携および米国との協力態勢を強化していくことをいう。

3 日米同盟の強化
新防衛大綱は、日米安全保障体制はわが国自身の努力とあいまってわが国の安全保障の基軸であり、また、日米同盟は、わが国のみならず、アジア太平洋地域、さらには世界全体の安定と繁栄のための「公共財」として機能しているとの認識に立脚している。このような観点から、次の取組を重視することとしている。
(1)日米同盟の抑止力および対処力の強化
「日米防衛協力のための指針」の見直しを進め、日米防衛協力をさらに強化し、日米同盟の抑止力および対処力を強化していく。また、西太平洋での日米のプレゼンスを高め、グレーゾーンの事態における協力を含め、平素から各種事態までのシームレスな協力態勢を構築する。そのため、共同訓練・演習、共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR:Intelligence, Surveillance, and Reconnaissance)活動、米軍・自衛隊の施設・区域の共同使用の拡大を推進する。さらに、各種の運用協力および政策調整を 一層緊密に推進する。
(2)幅広い分野における協力の強化・拡大
海賊対処、能力構築支援、人道支援・災害救援、平和維持、テロ対策などにおける協力のほか、海洋・宇宙・サイバー分野における協力を強化し、国際社会の平和と安定に寄与する。また、災害対応に関し、米軍が国民の安全に大いに寄与した東日本大震災の事例を踏まえつつ、国内外における自衛隊と米軍との連携を一層強化する。さらに、情報協力および情報保全の取組、装備・技術面での協力などの幅広い分野での協力関係を不断に強化・拡大する。
(3)在日米軍駐留に関する施策の着実な実施
在日米軍の円滑かつ効果的な駐留を安定的に支えるとともに、在日米軍再編を着実に進め、米軍の抑止力を維持しつつ、地元負担を軽減していく。また、普天間飛行場の移設を含む在沖縄米軍施設・区域の整理・統合・縮小、負担の分散などにより、沖縄の負担軽減を図っていく。

          (海自と米海軍の共同訓練)

4 安全保障協力の積極的な推進
(1)アジア太平洋地域における協力
新防衛大綱は、アジア太平洋地域内の対立的な機運や相互の警戒感を軽減するための協調的な各種取組を多層的に推進するとし、次の取組をあげている。
○ 韓国との緊密な連携を推進し、情報保護協定や物品役務相互提供協定の締結など、今後の連携の基盤の確立に努める。
○ オーストラリアとの関係を一層深化させ、国際平和協力活動などの分野での協力を強化するとともに、共同訓練などを積極的に行い、相互運用性の向上を図る。
○ 中国との安全保障対話や交流を推進するとともに、不測の事態を防止・回避するための信頼醸成措置の構築を進めていく。中国によるわが国周辺海空域などにおける活動の急速な拡大・活発化に関しては、冷静かつ毅然として対応していく。
○ ロシアとは、信頼関係の増進のため、安全保障対話、ハイレベル交流および幅広い部隊間交流を推進するとともに、共同訓練・演習を深化させる。
○ インドとは、海洋安全保障分野をはじめとする幅広い分野において、共同訓練・演習、国際平和協力活動の共同実施などを通じて関係強化を図る。
また、新防衛大綱では、能力構築支援は今後の安全保障環境の安定化と二国間の防衛協力強化に有効な取組であるとし、ODA( Official Development Assistance)を含む外交政策との調整を十分に図りつつ推進するとともに、能力構築支援の対象国および支援内容を拡充していくとしている。
さらに、多国間安全保障協力・対話において、米国およびオーストラリアとも連携しながら、域内協力関係の構築に主体的に貢献していくとともに、多国間共同訓練・演習に積極的に参加していくとしている。
(2)国際社会との協力
グローバルな安全保障上の課題などは、一国のみで対応することがきわめて困難である。また、近年、軍事力の役割が多様化し、平和構築や信頼醸成の増進において重要な役割を果たしている。新防衛大綱は、このような認識に基づき、平素から国際社会と連携しつつ、グローバルな安全保障環境の改善のため、各種取組を推進するとしている。
具体的には、軍備管理・軍縮、不拡散、能力構築支援などに関する各種取組を継続・強化するとし、特にEU( European Union) 、NATO(North Atlantic Treaty Organization)、およびOSCE(Organization for Security and Co-operation in Europe) ならびに英国およびフランスをはじめとする欧州諸国との協力を一層強化するとしている。
また、国際平和協力活動などを積極的かつ多層的に推進するとし、特に、自衛隊の能力を活用した活動を引き続き積極的に実施することとしている。

防衛力のあり方

1 防衛力の役割
新防衛大綱では、今後のわが国の防衛力については、統合機動防衛力の考え方のもと、以下の分野において求められる役割を効果的に果たし得るものとし、その役割に十分対応できる態勢を保持するものとしている。
(1)各種事態における実効的な抑止および対処
各種兆候を早期に察知するため、わが国周辺を広域にわたり常続監視し、情報優越4を確保する。このような活動などにより、力による現状変更を許容しないとのわが国の意思を明示し、各種事態の発生を未然に防止する。
一方、グレーゾーンの事態を含む各種事態に対し、兆候段階からシームレスかつ機動的に対応し、その長期化にも持続的に対応し得る態勢を確保する。    4 情報の認知、収集、処理、伝達を迅速かつ的確に行うことについて相手方に優ること
複数の事態が連続的または同時並行的に発生する場合においても、事態に応じ、実効的な対応を行う。
特に、①周辺海空域における安全確保、②島嶼部に対する攻撃への対応、③弾道ミサイル攻撃への対応、④宇宙空間およびサイバー空間における対応および⑤大規模災害などへの対応を重視する。

          (空中給油を行う空自の航空機)

(2)アジア太平洋地域の安定化およびグローバルな安全保障環境の改善
わが国周辺において、常続監視や訓練・演習などの各種活動を適時・適切に実施し、地域の安全保障環境の安定を確保する。
また、同盟国などと連携しつつ、二国間・多国間の防衛協力・交流、共同訓練・演習、能力構築支援などを多層的に推進する。
グローバルな安全保障上の課題に適切に対応するため、軍備管理・軍縮、不拡散に関する各種取組を強化する。また、国際平和協力活動、海賊対処、能力構築支援などの各種活動を積極的に推進する。
特に、①訓練・演習の実施、②防衛協力・交流の推進、③能力構築支援の推進、④海洋安全保障の確保、⑤国際平和協力活動の実施ならびに⑥軍備管理・軍縮および不拡散の努力への協力を重視する。

2 自衛隊の体制整備にあたっての重視事項
(1)基本的考え方
自衛隊は、上記の防衛力の役割を実効的に果たし得る体制を保持するとの観点から、今後の防衛力整備において特に重視すべき機能・能力を明らかにするため、想定される各種事態について、統合運用の観点から能力評価を実施した。
新防衛大綱は、この能力評価の結果を踏まえ、南西地域の防衛態勢の強化をはじめ、各種事態における実効的な抑止・対処の実現の前提となる海上優勢・航空優勢の確実な維持に向けた防衛力整備を優先することとし、幅広い後方支援基盤の確立に配意しつつ、機動展開能力の整備も重視している。
一方、大規模な陸上兵力を動員した着上陸侵攻のような侵略事態への備えについては、最小限の専門的知見や技能の維持・継承に必要な範囲に限り保持し、より一層の効率化・合理化を徹底するとしている。
(2)重視すべき機能・能力
新防衛大綱は、米軍との相互運用性にも配意した統合機能の充実に留意しつつ、特に以下の機能・能力について重点的に強化するとしている。
○ 警戒監視能力
わが国周辺海空域において常続監視を広域にわたって実施するとともに、情勢の悪化に応じて態勢を柔軟に増強する。
○ 情報機能
各種事態などの兆候の早期察知などを行うための情報の収集・処理体制および収集情報の分析・共有体制を強化する。
この際、人的情報・公開情報・電波情報・画像情報などに関する収集機能と無人機による常続監視機能の拡充を図る。また、地理空間情報機能を強化し、情報収集・分析要員の統合的かつ体系的な確保・育成のための体制を確立する。


○ 輸送能力
所要の部隊を機動的に展開・移動させるため、平素から民間輸送力との連携を図りつつ、統合輸送能力を強化する。
○ 指揮統制・情報通信能力
全国の部隊を機動的・統合的に運用し得る指揮統制の体制の確立のため、陸自の各方面隊を束ねる統一司令部の新設などを実施する。また、島嶼部における基盤通信網や各自衛隊間のデータリンク機能をはじめとして、その充実・強化を図る。
○ 島嶼部に対する攻撃への対応
海上優勢・航空優勢の確実な維持のため、航空機や艦艇、ミサイルなどによる攻撃への対処能力を強化する。
島嶼への侵攻があった場合に速やかに上陸・奪回・確保するための水陸両用作戦能力を整備する。
さらに、南西地域における事態生起時に自衛隊の部隊が迅速かつ継続的に対応できるよう、後方支援能力を向上させる。
なお、太平洋側の島嶼部における防空態勢のあり方についても検討を行う。
○ 弾道ミサイル攻撃への対応
北朝鮮の弾道ミサイル能力の向上を踏まえ、わが国の弾道ミサイル対処能力の総合的な向上を図る。
また、弾道ミサイル防衛システムについては、わが国全域を防護し得る能力を強化するため、即応態勢、同時対処能力および継続的に対処できる能力を強化する。
さらに、日米間の適切な役割分担に基づき、日米同盟全体の抑止力の強化のため、わが国自身の抑止・対処能力の強化を図るよう、弾道ミサイル発射手段などに対する対応能力のあり方についても検討のうえ、必要な措置を講ずる。
○ 宇宙空間およびサイバー空間における対応
各種人工衛星を活用した情報収集能力や指揮統制・情報通信能力を強化するほか、宇宙状況監視の取組などを通じて衛星の抗たん性を高める。
サイバー空間においては、統合的な常続監視・対処能力を強化するとともに、専門的な知識・技術を持つ人材や最新の機材を継続的に強化・確保する。
○ 大規模災害などへの対応
十分な規模の部隊を迅速に輸送・展開するとともに、長期間にわたり持続可能な対処態勢を構築する。
○ 国際平和協力活動などへの対応
人員・部隊の安全確保のための防護能力を強化する。輸送・展開能力、情報通信能力、補給・衛生などの体制整備に取り組む。情報収集能力および教育・訓練・人事管理体制を強化する。

  (フィリピンにおける国際緊急援助活動の様子)

3 各自衛隊の体制
新防衛大綱は、「2 自衛隊の体制整備にあたっての重視事項」において、重視すべき機能・能力が特定されたことを踏まえ、各自衛隊の体制については、以下(1)から(3)のとおり整備することとしている。



(1)陸上自衛隊
島嶼部に対する攻撃をはじめとする各種事態に即応し、実効的かつ機動的に対処する必要がある。このため、高い機動力や警戒監視能力を備え、機動運用を基本とする作戦基本部隊(機動師団、機動旅団および機甲師団)を保持する。また、水陸両用作戦などを実施し得るよう、専門的機能を備えた機動運用部隊を保持する。良好な訓練環境を踏まえ、機動運用を基本とする作戦基本部隊の半数を北海道に保持する。
また、戦車および火砲を中心として部隊の編成・装備を見直し、効率化・合理化を徹底したうえで、地域の特性に応じて適切に配置する。
陸自の編成定数については、大規模災害などにも十分な規模で対応するために、平成25年度末の水準である約15.9万人を維持する。
(2)海上自衛隊
周辺海域の防衛や海上交通の安全を確保し得るよう、多様な任務への対応能力の向上と船体のコンパクト化を両立させた新たな護衛艦などにより48隻(12個護衛隊)から54隻(14個護衛隊)に増強された護衛艦部隊および艦載回転翼哨戒部隊を保持する。なお、イージス・システム搭載護衛艦5を2隻増勢し、8隻体制を確立する。
また、水中および洋上における情報収集・警戒監視を平素から実施するとともに、周辺海域の哨戒6および防衛を有効に行い得るよう、増強された潜水艦部隊を保持するとともに、固定翼哨戒機部隊を保持する。
    5 空目標の捜索、探知、分類識別、攻撃までの一連の動作を高性能コンピューターによって自動的に処理するイージス防空システムを備えた艦艇をいう。
    6 敵の奇襲を防ぐ、情報を収集するなどの目的を持って、ある特定の地域を計画的に見回ること
(3)航空自衛隊
わが国周辺のほぼ全空域を常時継続的に警戒監視するために、航空警戒管制部隊を保持する。警戒管制業務の防空指令所への集約化などにより、警戒群を段階的に警戒隊に移行するとともに、警戒航空部隊に1個飛行隊を新編する7
    7 14(平成26)年4月20日に警戒航空隊を改編し、E-2C早期警戒機を有する第603飛行隊を那覇基地に新編した。
戦闘機部隊について、13個目の飛行隊を新編するとともに、航空偵察部隊については廃止する。また、空中給油・輸送部隊に1個飛行隊を新編し、2個飛行隊とする。
さらに、陸自の地対空誘導弾部隊と連携し、重要地域の防空を実施するほか、イージス・システム搭載護衛艦とともに、弾道ミサイル攻撃からわが国を多層的に防護し得る機能を備えた地対空誘導弾部隊を保持する。


[ 解 説 ] 南西地域への陸上部隊の配置および機動展開能力の強化について
陸自においては、「平素からの部隊配置」、「機動展開」および「奪回」の3段階の抑止・対処の構想に基づき、次のよ うな南西防衛態勢強化のための事業を行うこととしている。
【平素からの部隊配置】
○ まず、与那国島に陸自の沿岸監視部隊を配備し、平素からの常続監視に必要な態勢を整備する。
○  また、災害対応を含む各種事態発生時の迅速な対処を可能とするため、自衛隊配備の空白地域となっている島嶼部に警備部隊などを新編することにより、南西地域の島嶼部の部隊の態勢を強化する。
【機動展開】
○  各種事態に即応し、実効的かつ機動的に対処し得るよう、これまでの師団および旅団の約半数を、高い機動力や警戒監視能力を備えた機動運用を基本とする作戦基本部隊(機動師団・機動旅団)に改編する。その際、各機動師団・機動旅団には、航空機などでの輸送に適した機動戦闘車を導入し、各種事態に即応する即応機動連隊を新編する。
【奪 回】
○  島嶼部への侵攻があった場合に速やかに上陸・奪回・確保するための本格的な水陸両用作戦を有効に実施し得るよう、連隊規模の複数の水陸両用作戦専門部隊などから構成される水陸機動団(仮称)を新編する。
こうした陸自の新たな南西防衛態勢をより実効的なものとするためには、陸自部隊の機動展開能力を高め、迅速・柔軟な全国的運用を可能とすることが不可欠である。
このため、航続距離の長いティルト・ローター機や水陸両用車、機動戦闘車といった新たな装備を導入するほか、陸自の各方面隊を束ねる統一司令部(「陸上総隊(仮称)」)を新編するとともに、各方面総監部の指揮・管理機能の効率化・合理化などの事業も行いつつ、統合機動防衛力を実現するため「即応機動する陸上防衛力」を構築することとしている。

護衛艦および潜水艦の増勢について
新防衛大綱においては、常続監視や対潜戦などの各種作戦を効果的に遂行し、周辺海域の防衛や、海上交通の安全を確保し得るように海上優勢を確実に維持することとしている。
このため、海自の艦艇部隊について、護衛艦部隊を54隻体制に増勢するとともに、潜水艦部隊を現状の16隻体制から、22大綱に引き続き22隻体制に増勢することとしている。
この隻数の増加にともない、護衛隊および潜水隊の総数は、現状の体制からそれぞれ1個隊増加し、護衛隊が14個隊体制、潜水隊が6個隊体制となる予定である。
また、護衛艦部隊の増勢にあたっては、経費状況も考慮しつつ、必要な機能を確保するとの観点から、「新たな護衛艦」を導入することとしている。この新たな護衛艦は、取り外し可能な装備の搭載により、従来は掃海艦艇が担っていた対機雷戦機能を備えるなど、多様な任務に対応できる艦とする予定である。また、たとえば、船体のソーナーを装備せず、えい航式ソーナーを活用するなど、装備・機能を厳選することにより、既存の汎用護衛艦と比べて船体のコンパクト化を図る予定であり、その詳細については、今後、新中期防期間の後半の調達開始を目指し、防衛省として検討を深めていく。

防空・警戒監視態勢の強化について
空自においては、南西地域における防衛態勢の充実のため、那覇基地のF-15戦闘機部隊を1個飛行隊から2個飛行隊に増勢することとしているほか、周辺諸国の航空戦力の近代化に対応し、将来にわたって任務に適切に対応するため、既存のF-15戦闘機の近代化改修やF-2戦闘機の能力向上改修を行うとともに、平成24年度から取得を開始したF-35A戦闘機を引き続き整備することとしている。また、戦闘機部隊の運用態勢、南西地域の地理的特性などを踏まえ、戦闘機部隊などがわが国周辺空域などで各種作戦を持続的に遂行できるよう、必要となる空中給油・輸送機を新たに整備することとしている。
さらに、地対空誘導弾ペトリオットのさらなる能力向上を図り、巡航ミサイルや航空機への対処と弾道ミサイル防衛の双方に対応可能な新たな能力向上型迎撃ミサイル(PAC-3 MSE Missile Segment Enhancement)を導入することとしている。
このような取組に加え、南西地域をはじめとするわが国周辺海空域において、周辺諸国の軍事的活動が活発化していることなどを踏まえ、平素から隙のない警戒監視態勢を確保するため、移動式警戒管制レーダーの展開基盤を南西地域の島嶼部に整備するとともに、現有のE-767早期警戒管制機の改善などを実施する。
14(平成26)年4月には、多くの島嶼を抱えるわが国の周辺空域の警戒監視にとって、固定式警戒管制レーダーを補完する警戒航空部隊の果たす役割が重要であることを踏まえ、那覇基地にE-2C早期警戒機からなる第603飛行隊を新編し、南西地域の警戒監視体制の一層の拡充が図られたところである。さらに、今後については、各種事態に対してその兆候段階から長期化した場合にも対応し得る警戒監視態勢を保持する必要があることから、新たな早期警戒(管制)機を整備していく。

防衛力の能力発揮のための基盤

防衛力に求められる多様な活動を適時・適切に行うためには、単に主要な編成、装備などを整備するだけでは十分ではなく、防衛力が最大限効果的に機能するよう、これを下支えする種々の基盤もあわせて強化することが必要不可欠である。新防衛大綱は、このような認識を示したうえで、次の取組を重視するとしている。
1 訓練・演習
平素から、訓練・演習を通じ、各種計画を不断に検証し、見直すとともに、戦術技量の向上のため訓練・演習の充実・強化に努める。その際、北海道の良好な訓練環境を一層活用するとともに、関係機関や民間部門とも連携し、より実践的な訓練・演習を体系的かつ計画的に実施する。
また、南西地域において、地元との関係に留意しつつ、米軍施設・区域の自衛隊による共同使用を進めることなどにより、良好な訓練環境を確保する。
2 運用基盤
部隊などが迅速に展開し、各種事態に効果的に対応し得るよう、駐屯地・基地などの復旧能力を含む抗たん性を高める。また、各自衛隊の施設整備に努めるとともに、各種事態に際しての迅速な参集のため、必要な宿舎の整備を進め、即応性を確保する。
また、民間空港・港湾についても、事態に応じて早期に自衛隊などの運用基盤として使用し得るよう、平素からの体制のあり方も含め検討を行う。さらに、任務に従事する隊員や留守家族の不安を軽減するよう、各種家族支援施策を実施する。
加えて、装備品の運用基盤の充実・強化(必要な弾薬の確保・備蓄、装備品の維持整備)を図る。
3 人事教育
技能、経験、体力、士気などの様々な要素を勘案しつつ、精強性を確保し、厳しい財政事情のもとで人材を有効に活用する観点から、人事制度改革に関する施策を行う。このため、各自衛隊の任務や特性を踏まえつつ、適正な階級構成および年齢構成を確保するための施策を実施する。
女性自衛官のさらなる活用や再任用を含む人材を有効に活用するための施策および栄典・礼遇に関する施策を推進する。また、統合運用体制を強化するため、教育・訓練の充実、統幕・関係府省などでの勤務などを通じ、各種事態などに柔軟に即応できる人材を確保する。
募集環境の悪化を踏まえ、自衛隊が就職対象として広く意識されるよう、多様な募集施策を推進する。さらに、一般の公務員より若年で退職を余儀なくされる自衛官の生活基盤を確保することは国の責務であることを踏まえ、地方公共団体や関係機関との連携強化などにより再就職支援を推進する。また、持続的な部隊運用を支えるため、専門的技能を要するものを含む幅広い分野で予備自衛官の活用を進めるとともに、予備自衛官などの充足向上などのための施策を実施する。
4 衛生
自衛隊病院の拠点化・高機能化などを進め、防衛医科大学校病院などの運営改善を含め効率的かつ質の高い医療体制を確立する。また、医官・看護師・救急救命士などの確保・育成を一層重視する。さらに、第一線の救護能力の向上や迅速な後送態勢の整備を図る。
5 防衛生産・技術基盤
わが国の防衛生産・技術基盤の維持・強化を早急に図るため、わが国の防衛生産・技術基盤全体の将来ビジョンを示す戦略を策定するとともに、装備品の民間転用などを推進する。
また、防衛装備品の活用などによる平和貢献・国際協力に一層積極的に関与するとともに、防衛装備品などの共同開発・生産などに参画することが求められている。こうした状況を踏まえ、武器などの海外移転に関し、新たな安全保障環境に適合する明確な原則を定める。その際、武器輸出三原則等がこれまで果たしてきた役割にも十分配意したうえで、移転を禁止する場合の明確化、移転を認め得る場合の限定および厳格審査、目的外使用および第三国移転にかかる適正管理の確保などに留意する8
    8 14(平成26)年4月1日、防衛装備移転三原則を閣議決定した。
6 装備品の効率的な取得
装備品の効果的・効率的な取得のため、プロジェクト・マネージャーの仕組みを制度化し、技術的視点も含め、ライフサイクルを通じたプロジェクト管理を強化する。また、さらなる長期契約の導入の可否などを検討し、ライフサイクルを通じての費用対効果の向上を図る。
民間能力の有効活用などによる補給態勢の改革により、即応性・対処能力の向上を目指すとともに、取得プロセスの透明化および契約制度の適正化を不断に追求する。


7 研究開発
厳しい財政事情のもと、自衛隊の運用にかかるニーズに合致した研究開発の優先的な実施を担保するため、研究開発の開始にあたり、防衛力整備上の優先順位との整合性を確保する。
また、新たな脅威に対応し、戦略的に重要な分野において技術的優位性を確保し得るよう、最新の科学技術動向、戦闘様相の変化、費用対効果、国際共同研究開発の可能性も踏まえつつ、中長期的な視点に基づく研究開発を推進する。
さらに、安全保障分野にも有効に活用し得るよう、先端技術などの流出を防ぐための技術管理機能を強化しつつ、大学・研究機関との連携の充実などにより、デュアルユース技術の積極的な活用に努める。
以上の目的を達成するための防衛省の研究開発態勢について検討する。
8 地域コミュニティーとの連携
各種事態において自衛隊が的確に対処するため、地方公共団体、警察・消防機関などの関係機関との連携を一層強化する。このため、防衛施設周辺対策事業を引き続き推進するとともに、平素から地方公共団体や地元住民に対し積極的な広報などを行い、その理解および協力の獲得に努める。
部隊の改編などにあたっては、地域の特性に配慮する。同時に、駐屯地などの運営にあたっては、地元経済への寄与に配慮する。
9 情報発信の強化
自衛隊の任務の効果的な遂行に必要な国内外の理解を得るため、戦略的な広報活動を強化し、多様な情報媒体を活用して情報発信の充実に努める。
10 知的基盤の強化
国民の安全保障・危機管理に対する理解を促進するため、教育機関などにおける安全保障教育の推進に取り組む。また、防衛研究所を中心とする研究体制の強化とともに、政府内の他の研究教育機関や国内外の大学、シンクタンクなどとの各種連携を推進する。
11 防衛省改革の推進
文官と自衛官の一体感の醸成、防衛力整備の全体最適化、統合運用機能の強化、政策立案・情報発信機能の強化などの実現のため、防衛省の業務・組織を不断に見直し、改革を推進する。

留意事項

新防衛大綱に定める防衛力のあり方は、おおむね10年程度の期間を念頭に置いたものである。各種施策、計画の実施過程を通じ、国家安全保障会議で定期的に体系的な評価を行うとともに、統合運用を踏まえた能力評価に基づく検証も実施しつつ、円滑・迅速・的確な防衛力の移行を推進するとしている。 評価・検証の中で、情勢に重要な変化が見込まれる場合には、その時点における安全保障環境などを勘案し検討を行い、所要の修正を行うこととしている。
また、格段に厳しさを増す財政事情を勘案し、防衛力整備の一層の効率化・合理化を図り、経費抑制に努めるとともに、国の他の諸施策との調和を図りつつ、防衛力全体として円滑に十全な機能を果たし得るようにするとしている。

参考資料:平成26年度防衛白書「日本の防衛」(防衛省)