第1回:「わが国における防衛力整備の変遷」(改定版)
わが国防衛力整備のバイブル『防衛計画の大綱』とは?(2020.5.15更新)

平成30年12月、政府は国家安全保障会議及び閣議において新たに「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱について」を決定しました。
今や我が国の安全保障、防衛力のあり方や防衛力整備においていわゆるバイブル的存在となっている「防衛計画の大綱」(防衛大綱)とはどのようなものでしょうか?その位置づけ、誕生の経緯、内容と変遷について9回にわたり特集します。

第1回
「わが国における防衛力整備の変遷」(改定版)
第2回
「51大綱以前の時代―第1次~第4次防衛力整備計画」
第3回
「昭和52年度以降に係る防衛計画の大綱について」(51大綱)
第4回
「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱について」(07大綱)
第5回
「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱について」(16大綱)
第6回
「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱について」(22大綱)
第7回
「国家安全保障戦略について」
第8回
「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について」(25大綱)
第9回
「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱について」(新大綱)
第1回 「わが国における防衛力整備の変遷」(2020.5.15更新)

〇 一般に、国家の軍事力の建設、整備に当っては、中・長期的見通しに立って継続的かつ計画的に行うことが必要です。 これは、国の防衛が国家存立の基盤であるとともに、装備品の研究開発や導入、基地などの施設整備、人の教育、部隊の訓練などには、長い年月を伴うからです。
わが国の防衛力整備においても、防衛力整備の目標、方針などを定めた閣議承認の計画などが策定され、その下で、各年度の防衛力整備が行われています。
自衛隊・防衛庁発足後、政府・防衛庁は紆余曲折を経て現在の「防衛計画の大綱」とその水準を達成するための「中期防衛力整備計画」の制度を確立しました。
以下、その変遷について概観してみます。

〇 自衛隊の発足後まもない、昭和32年5月に閣議決定された「国防の基本方針」の下、3年又は5年を対象期間とする防衛力整備計画が4次にわたって策定、閣議決定され、計画期間中の整備方針、主要整備内容、整備数量などが示されました。 第1次防衛力整備計画は、昭和33年度から同35年度までの3か年計画として、国力国情に応じた必要最小限度の自衛力を整備するためのものとして策定されました。昭和36年度以降については、第2次~第4次防衛力整備計画が、それぞれ5か年計画で策定され、そこにおいては、通常兵器による局地戦以下の侵略に有効に対処することが防衛力整備の目標とされました。


国防の基本方針
昭和32年5月20日 国防会議決定
閣 議 決 定
 国防の目的は、直接及び間接の侵略を未然に防止し、万一侵略が行われるときはこれを排除し、もって民主主義を基調とするわが国の独立と平和を守ることにある。この目的を達成するための基本方針を次のとおり定める。
(1)
国際連合の活動を支持し、国際間の協調をはかり、世界平和の実現を期する。
(2)
民生を安定し、愛国心を高揚し、国家の安全を保障するに必要な基盤を確立する。
(3)
国力国情に応じ自衛のため必要な限度において、効率的な防衛力を漸進的に整備する。
(4)
外部からの侵略に対しては、将来国際連合が有効にこれを阻止する機能を果し得るに至るまでは、米国との安全保障体制を基調としてこれに対処する。

〇 第1次~第4次防衛力整備計画の下、わが国の防衛力の基礎が築かれることとなりましたが、一方で、わが国の防衛力の充実が図られていくに伴い、「防衛力はどこまで増強されるのか」といった懸念が示されるに至りました。
このような状況において、わが国の防衛のあり方について、政府の考えをできる限り具体的に明示し、国民的合意の確立を目指すものとして、昭和51年10月、「防衛計画の大綱」(51大綱))が策定、閣議決定されました。

「防衛計画の大綱」は,従来の整備計画のように一定期間内における整備内容を主体とするのではなく,防衛力の維持及び運用も含め,今後のわが国の防衛のあり方についての指針を示し,自衛隊の管理及び運営の具体的準拠となるものです。

〇 51大綱においては、防衛力整備の基本的考え方として、わが国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、自らが力の空白となってわが国周辺地域における不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的防衛力を保有するという「基盤的防衛力構想」を取り入れるとともに、わが国が保有すべき防衛力について、防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において、均衡のとれた態勢を保有することが主眼とされました。
また、その別表においては、各自衛隊の基幹部隊、主要装備などにより保有すべき防衛力の具体的な規模が示されました。 51大綱は、その後約20年にわたり、防衛力整備の基本とされ、その間の防衛力整備においては、本大綱に示された防衛力の水準の達成を図ることが目標とされました。

〇 防衛力整備の計画の方式については、51大綱策定後しばらくの間は、各年度毎の弾力的な対処を可能にするとの考えの下、いわゆる単年度方式(昭和52年度~同54年度)が採用されました。
しかし、昭和55年度以降は、可能な範囲で将来の方向を見定めておくことは、実際の業務を進める上で必要という考えの下、防衛庁限りの計画として5か年間の「中期業務見積り」(昭和55年度~同60年度)が作成されました。
さらに、昭和61年度以降は、より適切な文民統制の充実を図る見地から、政府の責任において中期的な防衛力整備の方向を内容と経費の両面にわたって示すことが望ましいとの判断の下、政府計画として、中期防衛力整備計画(昭和61年度~平成2年度:中期防)が策定されました。

〇 その後、冷戦の終結などの国際情勢の大きな変化、軍事力の役割の多様化、科学技術の飛躍的発展、自衛隊の国際活動を含む役割に対する期待の高まり等を踏まえて、基盤的防衛力構想に対する見直し、検討が行われ、平成7年と平成16年の2回にわたり防衛計画の大綱が改訂されました。

〇 長期にわたり防計画の大綱(51大綱~16大綱)に影響を与えた基盤的防衛力をめぐる考え方の変遷を要約すれば、次の図の通りです。


〇 更に従来の「基盤的防衛力構想」によることなく「防衛力の運用」に焦点を当て特に統合運用力を重視するとともに、陸・海・空という従来の領域のみならず新たな領域を対象として実効的な防衛力の構築を図るため、平成22年・25年・30年の3回にわたり改定されました。そしてそれら大綱に基づき中期防衛力整備計画が策定されてきました。

〇 以上の各大綱における防衛力の役割の変化をまとめれば次の通りです。


〇 また、陸海空各自衛隊の保有すべき具体的防衛力の体制、規模、主要装備の枠組みを明示している別表もその都度改定されてきましたが、その比較は、次表の通りです。

     参考資料:各年度防衛白書「日本の防衛」(防衛庁、防衛省)