東日本大震災における危機管理(3)
不適切な事前対策、その他
山下輝男

 今回の講座内容は、スライドの通りです。主として事故調の報告を中心にしつつ、それ以外の項目についても言及することとします。
 被害拡大を防止するための施策のうち、モニタリングによる放射線量の測定データは、住民の被曝防止と避難のために不可欠です。

 然しながら、24個のモニタリングポストの殆どが、津波で流失したり、停電で使用できなくなりました。
また初期の事故対応においてデータ活用に混乱が見られました。モニタリングデータの公表についても問題点がありました。

 100数十億の予算をかけて整備した緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムは避難に全く活用されなかった。活用されなかったことを不正確なデータだったが為にであると言い訳をしている向きも居るようだが、それでも十分に参考にはなった筈だ。

 国の避難指示は数次にわたって行われたが、SPEEDIの活用という視点が欠けていた。
国による避難指示等が避難対象区域の自治体に届かず、きめ細かさにも欠けていた。
 モニタリングポストによる放射線量の情報は極めて重要な情報であるにも拘らず、その防護対策が極めて不十分である。重要性が解っていないのではないかと疑いたくなる。

 膨大な予算をかけて開発したシステムが活用されないというのは問題だ。

 住民に対する情報発信も不十分だが、隠蔽していたのではないかと疑われても仕方ない。

 事故調の報告でも指摘されているが、住民避難に関する現実的具体的な計画もなく、訓練もなされていないのは、可笑しい。原発は安全だから必要ないなどと考えていたとしたら問題だ。

 国民に対する政府発表も頂けない。直ちに健康に影響を与えるレベルではないなどというのはよく意味が解らない。
正確ではあろうが、不信感を増幅すのみだ。
 マスコミでも散々報道されたので、今更詳しく説明する必要もなかろう。
 危機管理上の問題点は、スライドの通りです。リスクを過小評価し、有効な対策をとらないというのでは危機管理が全くなされていないということになる。あらゆるリスクを考慮して必要な対策をとるべきだ。

 何が危険なのか問題なのかを嗅ぎ分ける感覚というか嗅覚みたいなものを身につけたいものです。
 事業者が自ら安全を確保するという現在の原発保安体制には、問題があると云える。国家としてしっかり規制し監督する体制が必要である。それにしても規制関係機関が脆弱だ。

 リスク情報開示の難しさというのは、より安全性を高めるために改良を加えようとするとこれまでやってきた過去を否定することと受け取らてしまうというパラドックスが生じる。
 引き続き、その他に関連する危機管理上の論点について説明します。
最大の問題は、想定外ということが危機管理上許されるかどうかということです。
重大な影響を及ぼす可能性があるような事項について想定外だったなどという言い訳は許されないでしょう。
 原発の安全神話は相当根強いものがあったようです。危機管理を所掌する者ですらそれに捉われていたのでしょう。

 多重防護だから安全だというのであれば、本当にそのように対策処置がなされていたのかが問われねばならないでしょう。
 実際はスライドにお示ししているような状況でした。そして危険性は指摘もされていたのです。その状況を示します。
 福島原発ばかり取り上げていますが、津波対策でも同じですね。

 今般の東日本大震災を受けての、中央防災会議の新たな指針です。