手記『東日本大震災ー災害救助犬出動す』(2)

NPO法人 救助犬訓練士協会(RDTA)
国内渉外担当・防災士  山田 道雄

Day 3 (3月13日) 捜索1日目

今回の出動の活動拠点(BoO:Base of Operation)は名取市の仙台空港西方にある宮城県警察学校。海岸から約8 kmの所にあり、津波の被害は全く受けていない。体育館と広いグランドがあり犬の収容、管理上も最適の場所である。

 早朝5時起床し、犬の排便、装備・携行品の点検等出動準備を完了する。山田チーム(4名3頭)と日本救助犬協会チーム(8名2頭)は岩沼地区へ、玉川チーム(4名3頭)は亘理地区へ、海自チーム(6名2頭)は仙台市南、東側地区へそれぞれ分かれて警察車両で移動する。

BoO出発準備

犬たちも準備OK

山田チーム(エロス、キュウ、マニー)は、岩沼署で管区機動隊大隊長からの指示を受け仙台空港の北方、名取川河口南岸付近の名取市閖上(ゆりあげ)地区での生存者・遺体捜索を行うことになった。出発前藤沢の本部のPCからコピーした地図を見ると、海岸線に 閖上浜という名所がある。珍しい地名からして由緒のあるところのようである。

閖上地区は名取市の東側に位置し太平洋に面した風光明媚な地区です。閖上海岸では釣りやヨット・サーフィンといった様々なレジャーを楽しむ人で賑わっており、毎週日曜日と祝祭日に開催される、 ”ゆりあげ港朝市”では、新鮮な魚介類を買い求めに市内外からの大勢の人たちで大変活気を見せるといった、名取市の観光地区でもあります。(閖上公民館ホームページから)

現場では自衛隊との協同捜索を命じられたが、施設部隊が重機で捜索通路を確保した後 普通科部隊が捜索を行う計画で35普通科連隊(守山)は12時頃到着予定とのこと。したがって、午前中は名取市消防本部の指揮下に入り、地元消防団と連携して犬1頭に2名の消防団の組み合わせで半壊状態の家屋内の捜索を実施した。

 名取市閖上地区は、その由緒ある優雅な地名とは対照的に凄惨な光景を呈していた。

 海岸線から1.5km地点の閖上大橋付近を捜索拠点とし、そこから海岸に向かうにつれ家屋の損壊状況が激しくなり、1km以内では殆どの家屋が基礎部分を残して津波で流失、頑丈な建物や障害物の所でがれきの吹き溜まり状態で集積されている。思わず広島の原爆投下直後の写真を連想させるほど。一昨年の岩手・宮城内陸地震における土石流の出動現場に較べれば、がれきの隙間はかなりあるので人の臭気を取り易く救助犬の捜索には適している。しかし、そこも前日までは水に浸っており、残存する建物も中に入って見ると、一階部分はほぼ壊滅状態で天井付近まで浸水していた痕跡があり、生体臭気の残存は難しく2階部分でなければ生存者の発見は困難と思われる。犬は結構意欲的に捜索し、時々生活空間や寝具等の生活臭に若干の表現をするが、生体に対する反応は全く示さなかった。

捜索拠点(閖上大橋)付近

捜索拠点から閖上地区入り口を望む

地元消防と協同

閖上地区入り口付近

メインストリート付近

メインストリート付近

前日までは海水に浸かっていたと言う

海岸に近づくに連れ被害は甚大に

海岸に近づくに連れ被害は甚大に

電柱は残らず倒壊、その向きが津波の襲来方向を示す

午前の捜索終了、先頭からキュウ、マニー、エロス号

捜索拠点に戻り小休止中のキュウ号

午後、陸自35普連の小隊に合流したが、この隊は急遽中隊命令で別の地区に移動する事になったため、消防と一緒に閖上地区の午前中残った部分の捜索を実施することにする。海岸に近づくに連れ被害状況も凄惨さを増し残存家屋は少なくなる。同行の消防の人の話では、同僚が津波警報による避難命令を広報車で伝達中、車ごと津波に巻き込まれたと言う。その赤色の車が運河に転落し海水に浸かっているのが見えたが、まだ遺体を収容できないでいるとの事。後で知ったが、この運河は江戸から明治にかけて北上川と阿武隈川を結び、米の運搬などに使われていたという。

 捜索の間も余震が頻発し、津波警報のため約30分捜索を中断し、避難せざるを得なかった。この日計画していた貞山運河の手前までの地区の捜索を終了し撤収の途中、住民の方2人からそれぞれ行方不明の家族の捜索の要請を受け、2ヶ所の家屋の捜索を実施する。計1時間弱を要したが生体反応はなかった。

 夕刻、中東のアルジァ・ジーラとカナダのメディアから取材を受けたが、日本のメディアは立ち入り規制をされているのか全く会わない。19時過ぎ警察学校に帰着。

歴史的な貞山運河は瓦礫の山、消防の赤い車もバスと一緒に

残存家屋が少なくなる

(残存家屋は僅か—)

海水の部分は海ではなく田んぼだった所

IRO認定犬キング号(JRDA川合氏)

IRO認定犬マニー号(村瀬裕太)

IRO認定犬キュウ号(村瀬真平)

INSARAG認定犬エロス号(村瀬英博)

観光案内板も空しく

(第2回了)