手記『東日本大震災ー災害救助犬出動す』(3)

NPO法人 救助犬訓練士協会(RDTA)
国内渉外担当・防災士  山田 道雄

Day 4 (3月14日) 捜索2日目

警察車両の都合で朝の出発が遅くなり、昨日と同じ現場に入ったのは9時過ぎになった。前日の運河の先の海側地区を消防本部の指示に基づき、消防団数名、警察学校学生数名との組み合わせで捜索を開始する。我々の活動拠点(BoO)となっている宮城県警察学校の生徒たちも、出動実習を兼ね今日からは捜索活動に参加するようである。

捜索準備

捜索準備

消防との打ち合わせ

警察学校と協同、捜索開始

今日の現場は前日よりも海に近く、そのため被害は甚大で、残存家屋は数軒のみで電柱が一様に根元からなぎ倒され、津波の襲来方向をはっきりと示している。あちこちで陸上自衛隊がご遺体の収容作業を実施しているが、現場の状況からは生存者の期待は殆ど絶望的である。

 午前中、約7メーターの津波襲来との警報が発令された。陸自の無線機からのまた聞き情報によれば、上空のヘリが観測し津波は名取地区に向かっているという。直ぐ捜索を中断して付近にあった3階建てのビルの屋上に退避した。全壊している銀行の支店の隣にある頑丈そうなビルで、1階部分は津波で壊滅しているが、2階以上は被害を免れ居住者はおそらく屋上から救出されたものと思われる。もし、津波がくればこのビルの屋上は観測には絶好のロケーションだと不謹慎なことを考えた。

ビル屋上(市街中心部)から名取川河口、
閖上漁港(東方)を望む

同じく名取川(北方)を望む

同じく閖上大橋(北西方)を望む

同じく閖上公民館(西方)を望む

誰かの叫び声がして海の方を見ると、男女二人連れが海側から運河を越えてのんびりとこちらに歩いて来る。「津波が来るぞ!急いでこのビルに避難せよ!」警察学校の学生が肉声で数回呼びかけるとようやく気付いたらしく、こちらに向かって必死で走り始めた。40代の夫婦で話によると、地震発生時家には2人の息子がいて大津波警報が出されてもかなり楽観していたらしく、20分くらいで津波が来て逃げ遅れてしまったと言う。息子の一人は1.5km以上流されて歩道橋付近で何かに掴まり助かったが、もう一人は未だ行方不明との事。住家のあった所まで行ったが、跡形もなく何の手がかりもなかったと言う。ふと見ると、父親の手には折れた釣竿が・・おそらく形見代わりに持ってきたのだろう。一瞬の間に家も家族も流され、その事実を我々に冷静に語る夫婦の気丈さに驚き、東北人魂を見る思い。しかし、被災後丸2日間という時の流れでは、あまりのショックで自分の置かれている境遇を正しく認識できていないのかも知れない。退避後約1時間経つても状況に変化がないので、ビルを出て作業を再開した。

午後も運河から海側の地区の捜索を実施したが、すでに陸自の35普連が捜索済みだと判明し途中で捜索を中止する。よく見ると家屋の玄関付近に「35 i」と書いた札が張ってあるが、これでは警察、消防の隊員は35普通科連隊が捜索済みだとは分らないだろう。因みに消防の現地指揮本部では我々が現地に入る最初の捜索部隊という認識だった。現場における警察、消防、自衛隊の指揮関係もあいまいだが、共通のマーキング(状況表示要領)もないようである。3年前受けた災害救助犬出動認定試験(MRT:Mission Readiness Test)では国際捜索救助諮問グループ(INSARAG)のガイドラインに規定するマーキングの読み取りの出題が必ずある。捜索救助部隊は作業終了後その場所の目立つ所にカラースプレー等で大きくマーキングを行う。それを見ると、捜索部隊名、要救助者数、救助された人数、死者の人数、危険箇所の有無等が直ぐ分る仕組みになっている。

INSARAG(インサラッグ)  INSARAG(国際捜索・救助諮問グループ)は、国際捜索・救助チームが、被災国政府を支援し、他国の捜索・救助チームと協調・連携を図ることによって、効果的な活動が可能となるような体制作りを行うことを目的として組織された非公式な協議機関です。事務局は、ジュネーブを本拠地とする国連人道問題調整事務所(UNOCHA)にあります。

捜索するエロス号・村瀬理事長

捜索するキュウ号・村瀬真平

捜索するマニー号

捜索するエロス号・村瀬理事長

夕刻、公民館の前進本部で警察車両の到着を待っている間、伊・英国のメディアと日本の共同通信の取材を受けた。英国のTVクリューは、14時50分近くの地震発生時刻で止まったままの時計が掛っている公民館の2階バルコニーから凄惨な光景を撮っている。 彼らは一様に捜索の成果を聞くが、前日同様この日も生存者の発見には至らなかった。

任務終了

任務終了

被災時刻を示す公民館の時計

取材を受ける山田リーダー

警察学校帰着後、以後の行動について宮城県警本部と調整。震災発生後72時間を経過し地震に加え大津波の2重災害を受けた現場の状況からは今後生存者の発見は殆ど期待できなくなる。一方、静岡、山梨、長野等東海・甲信越地方で地震が群発している状況下、藤沢の本部に帰還し新たな災害に備えるべきとRDTA、海自救助犬部隊の捜索は打ち切りで合意した。

 これに伴い海自森田リーダーに調整してもらい、明日の午後(時間未定)、霞目飛行場発厚木着のMH便が設定されることになった。玉川チームの報告によると、亘理町荒浜地区で海自チームと捜索中、2階に要介護で不自由な老夫婦を発見,機動隊員と協力しておばあさんを救出。更に津波警報下、動けないおじいさんを森田リーダーがレンジャー仕込みのロープ一本で背負い、機動隊員と協力して屋根伝いに救出したとの事。

 また、今朝警察学校の宿舎から出動した韓国救助犬の1頭が右足に裂傷を負い、脳外科医でもある玉川リーダーが応急手術(8針縫合)を行い、韓国チームに感謝される。

この日、携帯ラジオは福島第1原発3号機の水素爆発を伝えた。

玉川チームの活動

亘理警察署でRDTA・玉川チーム

亘理警察署で海上自衛隊呉・森田チーム

荒浜地区の惨状

荒浜地区午後の捜索

荒浜地区午後の捜索

荒浜地区の被災状況

(第3回了)