『そこが知りたい!自衛隊は何が出来るのか?』 配信開始に当って
チャンネルNippon編集局

 さんの中に自衛隊の存在を知らない方はおられないでしょう。そして自衛隊が他国の侵略から日本を防衛する任務を持っている事も知っておられるでしょう。また自衛隊がそれだけではなく、いろんな分野で活動している事も知っておられるでしょう。しかし、自衛隊が行動するには制限があって、もしかしたら皆さんの期待通りには動けないことがあるということについてはあまり理解しておられないのではないでしょうか。

自衛隊の発足
  昭和25年6月、北朝鮮が38度線を突破して南下を始め、朝鮮動乱が始まりました。 米国は介入をしましたが、日本に駐留していた米軍の投入による日本の防衛体制の弱化が危惧され、日本が独自の軍事力を持つことの検討が始まりました。
  この動向に、左翼を中心とする人たちはいち早くしかも強烈な反応を示したのです。曰く、憲法違反である。曰く、軍事力を持つから侵略される。曰く、敵が攻めてきたら上陸させればよい等々、国会や新聞紙上・デモ等を用いて与党・政府を攻撃しました。

  一方、番犬論や戸締り論と言ったキャッチフレーズ的なものもありましたが、国を武力侵略から防衛する必要性を考える大多数の支持を得て、昭和25年関連の政令で独自の警察予備隊を持つことになりました。
  その後昭和29年に防衛庁が設置され陸・海・空自衛隊が発足しました。さかのぼること2年、昭和27年サンフランシスコ条約が発効し日本は独立国として歩み始めましたが、防衛については独自で遂行する能力が無く米国と安保条約を締結し、以来米国の軍事力を基盤とする防衛態勢を確立してきたのです。

  かしその実態は、強力な反対意見を反映して、また賛成する人の中にもあった世界的な概念での軍隊を持つことへの抵抗もあって、権限・行動・装備等極めて限定されたものでした。一例をあげるならば、戦闘機の米国からの導入に当たり、増槽タンクを付けると行動範囲が広がり他国を攻撃する能力を持つようになるということから、わざわざ修理費をかけて関連装置を撤去したほどです。

  この様な経緯の中で自衛隊は装備の充実、精強な自衛隊を目指して訓練を重ね、日々の任務を遂行してきました。そして、そのために国は年々国家予算の1%弱を防衛費として計上してきたのです。
自衛隊の活動
  その間の自衛隊の活動を大ざっぱにまとめると、訓練と災害派遣そして校庭の整備や流氷観測等の省庁間協力に始まり、やがてそれに監視活動が加わり、平成3年の湾岸戦争終了後の掃海及び平成4年カンボジアでのPKO参加を皮切りに、国連協力、テロ対策、海賊対応、津波や地震等の災害援助等々国外での活動が盛んになってきています。

  海外派遣には左翼系の人たちを中心に大きな反対がありましたし、政府与党内にも反対がありました。 事案が生起する度に大議論がありましたが、自衛隊の行動に関する新しい解釈とその法制化により対応してきました。 その当然のけっかとして、行動の発動はタイミングの遅れたものになっていました。その結果国際社会の日本を見る目には厳しいものがありました。
自衛隊と法
  ここで自衛隊と法の関係について簡単に述べます。武力をもつ自衛隊が独自の判断で勝手に動いて良い訳がありません。当然法に基づいて活動することになります。
  問題はその法の性格なのですが、前述の様な経緯で存在する自衛隊は基本的には行動をしないという考えが法の上でも運用の上でもあります。
  行動を起こすには「‥が出来る」と書いてある法律の範囲で、そして厳しい手続きが必要です。 諸外国は反対に、基本的には行動をする、そしてその行動は「‥は出来ない」という法律によってコントロールされているのです。

  どちらにも長所・短所がありますが、日本の場合には2つの点で大きな意味を持ちます。
一つ目は、想定以外の事象には対処が出来ないということです。従ってあらゆる事態を想定しておかないと、後手に回って対応が出来ない場合が十分に考えられます。
 二つ目は、自衛官自身が何かあったときにまず考えることは、「どう動くか」ではなくて「動いて良いか」なのです。この差は、場合によっては結果に大きな影響を与えます。

  法の性格についてはともかくとして、日本の場合は一体全体、自衛隊は何が出来るのか、そして何が出来ないのか。
  国民は自衛隊に何を期待しているのか、自衛隊はそれに応えられるのかを明確にして、それを法律に反映しておく必要があります。

  自衛隊に対する国民の期待と自衛隊の行動が一致しなければ、どちらにとっても不幸なことでしょう。 国民にとっては長い年月多大の資源をつぎ込んできた努力が報われないことであり、自衛隊にとっては日々精進してきた結果を持って国民の負託にこたえることが出来ないからです。
海外有事のときは?
  たとえば、次のような状況が生起したとして、国民は何を期待し自衛隊は何が出来るのでしょうか。

  「ある国で政変があり対立する二つの勢力が武力行使を辞さない勢いで衝突している。 空港・国境の一部が封鎖されたという情報もある。過去の事例からして武力衝突が生起した場合、一般市民また在留外国人が巻き込まれる可能性は極めて大きい。そして関係各国は、取りあえず軍用機を派出し、自国民を当該国から救出させている。」

  この様な状況下、在留邦人はもとより一般国民も自衛隊機による救出を当然期待するでしょう。しかし、法律には自衛隊機は輸送の安全が確保されている場合に派出できるとなっており、輸送の安全が確保されていない場合には自衛隊機は派出できないのです。

  これは単なる想定ではありません。過去に幾つかの事態があったのです。そのたびに、外国の航空機に便乗出来たので大事には至りませんでしたが、協力して貰えるという保証はないのです。

  このように国民の期待と自衛隊の行動が合致しない事例が意外と身近な分野で、いろんな形で潜在しています。
  私たちは、約1年間にわたり、国民の素朴な疑問、質問に答える形で、時には関係者の証言を交え、「自衛隊は何ができるのか」を明らかにして行きます。
  そしてそれが皆さんの期待に沿うものなのかを議論して頂きたいと思います。
  信に当っては、一般市民の方が参加する次のような市民教養講座の場面を設定し、参加者と講師の質疑応答という形式で身近な興味あるテーマを月に1~2件取り上げ、「自衛隊は何が出来るのか」についてわかりやすく解説していきます。
市民教養講座講師
猪狩先生(元TVニュース解説者、60代男性)
受講者
1 安田社長(中小企業経営、50代男性)
2 さくら女史(IT企業ビジネスウーマン、40代女性)
3 Mr.フォーク(日本駐在米国商社マン、30代男性)
4 カオルさん(主婦、20代女性)
5 保クン(高校生、10代男性)
第1回:テーマ1『自衛隊の出来ること―その任務と行動』(その1)
安田社長:東北関東大震災のニュースを見ていると自衛隊って「何でも屋」と言う感じで頼りになります。地震の時の「災害派遣」や「海賊対処」「国際平和協力業務」などいろんなことをするのですね。これらはみな自衛隊法に決められているのですか?
猪狩先生:自衛隊の実施する任務(行動)は、基本的には自衛隊法に定められています。そのほか、主な任務に支障を生じない限度で実施する任務(行動)が、別の法律によって定められたところにより実施されています。それらを一覧表にすれば次のとおりです。
 第1回のテーマはテーマ『自衛隊の出来ること―その任務と行動』です。自衛隊はどのような任務を持ち、どのような根拠をもって行動できるのかをまずざっと見てみましょう。
 まず、この表を見て質問のある方はなんでも結構ですので遠慮なくどうぞ。(以下その2に続く)
自衛隊の任務の概要
区分任務内容行動名根拠条項(自衛隊法)
主たる任務直接侵略及び間接侵略から我が国を防衛すること防衛出動第76条
従たる任務必要に応じ公共の秩序維持に当たる国民保護等派遣第77条の4
治安出動第78、81条
警護出動第81条の2
海上における警備行動第82条
海賊対処行動第82条の2
弾道ミサイル等に対する破壊措置第82条の3
領空侵犯に対する措置第84条
災害派遣第83条
地震防災派遣第83条の2
原子力災害派遣第83条の3
主たる任務に支障を生じない限度で、別に法律で定めるところにより実施 ※周辺事態に際しての諸活動後方地域支援第84条の4第1項
後方地域捜索救助活動第84条の4第2項1号
船舶検査活動第84条の4第2項2号
国際緊急援助活動第84条の4第2項3号
国際平和協力業務第84条の4第2項4号
※ 既に終了した特別措置法に基づく活動(テロ対策特別措置法、補給支援特別措置法、イラク人道復興支援特別措置法に基づく活動)はここに位置付けられる。
 なお、この表で物足らない方は資料「自衛隊の行動等について」を参照して下さい。
<参 考>
いわゆる付随的な業務(自衛隊法第8章(雑則)等で規定される)
・土木工事等の受託(第100条)
・教育訓練の受託(第100条の2)
・運動競技会に対する協力(第100条の3)
・南極観測に対する支援(第100条の4)
・国賓等の輸送(第100条の5)
・不発弾等の処理(附則第4項)
(防衛白書 平成19年度版 157ページ)