第2回:テーマ1『自衛隊の出来ること―その任務と行動』(その2)
チャンネルNippon編集局
保クン:今年宮崎県の鳥インフルエンザ流行の時、まっ白い服着て処分していたのは自衛隊がやっているとニュースで見たけど本当ですか?
猪狩先生:本年1月22日発生の鳥インフルエンザ流行に際し、自衛隊法第83条(災害派遣)に基づき、宮崎県知事の派遣要請により、陸上自衛隊第43普通科連隊(都城)、航空自衛隊第5航空団(新田原)等が1.鶏の殺処分、2.処理した鶏等の運搬及び埋却、3.鶏舎の消毒を実施しました。
 また、昨年3月頃発生の口蹄疫に際しても、宮崎県知事の派遣要請により、陸上自衛隊第43普通科連隊(都城)が埋却場所の掘削、殺処分後の死体・汚染物品の運搬及び埋却、消毒作業を実施しました。これらはいずれも自衛隊の行動のうち、「災害派遣」に含まれるものです。

カオルさん:ニュージーランド地震で派遣された「国際緊急援助隊」って自衛隊も参加できるのですか?
猪狩先生:国際緊急援助隊の派遣に関する法律により、被災国政府等から派遣の要請があった場合で、外務大臣が、特に必要があると認める場合、防衛大臣と協議を行い、それに基づいて防衛大臣が自衛隊の部隊等に活動(国際緊急援助活動)を命じることができます。自衛隊法では、第84条の4第2項第3号に規定があります。
これまでの実績として、
1.平成22年1月にハイチ地震における国際緊急援助活動として、在ハイチ被災民の米国への輸送、医療援助活動
2.平成21年10月にインドネシア・パダン沖地震における国際緊急援助活動として自衛隊部隊を派遣
3.平成17年1月にスマトラ沖大規模地震及びインド洋津波における国際緊急援助活動として、救援物資等の輸送、重機等の海上輸送、医療活動、防疫活動、予防接種等
等を実施しました。

カオルさん:ニュージーランド地震の時派遣した政府専用機って自衛隊が運航しているそうですが、根拠法規は自衛隊法ですか?
猪狩先生:防衛大臣は、自衛隊の部隊等に対し、現地で実施する救助活動、医療活動その他の災害応急対策及び災害復旧のための活動(国際緊急援助活動)のほか、当該活動を行う人員及び必要な機材・物資の輸送(国際緊急援助隊派遣法第3条第2項第2号)を命ずることができます。

さくら女史:2年位前、北朝鮮が弾道ミサイルを発射するといって自衛隊のイージス艦が出動しことがありますが、あれは海上における警備行動ですか?
猪狩先生:海上における警備行動とは違います。自衛隊法第82条の3に基づく「弾道ミサイル等に対する破壊措置」のための行動です。
 弾道ミサイル等とは、弾道ミサイルその他その落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であって航空機以外のものをいいます。
 我が国に武力攻撃として弾道ミサイル等が飛来した場合には、武力攻撃事態における防衛出動により対処します。一方、我が国に弾道ミサイル等が飛来する場合に、武力攻撃事態が認定されていないときには、1.迅速かつ適切な対処を行うこと2.文民統制を確保することを考慮し、防衛大臣が内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に対し、弾道ミサイル等を破壊する措置をとるべき旨を命じます。また第82条の3第3項では、事態が急変し、内閣総理大臣の承認を得るいとまがなく我が国に向けて弾道ミサイル等が飛来する緊急の場合における人命又は財産に対する被害を防止する必要がある場合には、防衛大臣が作成し、内閣総理大臣の承認を受けた緊急対処要領に従い、あらかじめ、自衛隊の部隊に対し弾道ミサイル等を破壊する措置をとるべき旨を命令することができます。平成21年4月の北朝鮮による発射への対応はこの第3項によるものです。

さくら女史:「国民保護等派遣」って初めて聞くけど治安出動や防衛出動とどう違うの?
猪狩先生:武力攻撃事態又は事態が緊迫し武力攻撃が予測されるに至った事態(武力攻撃予測事態)において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護すること等の重要性にかんがみ、これらの事項に関し必要な事項を定める「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(国民保護法)が制定されました。

 自衛隊が防衛出動の枠踏みで行動している場合は、防衛出動時の公共の秩序の維持のための権限(自衛隊法第92条)を根拠として、また、治安出動の枠組みで行動している場合は治安出動時の権限(自衛隊法第89条)を権限根拠として、それぞれの「行動」の一環として国民の保護のための措置を実施します。しかし、武力攻撃事態等において未だ防衛出動も治安出動も下令されていない場合(自衛隊が平素と同様、駐屯地・基地内に所在している場合)等においては自衛隊に国民保護のための措置を実施する法律上の根拠が存しないため、専ら国民の保護のための措置を実施するための実施根拠として、「国民保護等派遣」(自衛隊法第77条の4)が設けられました。
 派遣の要請手続は、自衛隊法ではなく国民保護法に規定されています。

保クン:ハイチの大地震の後自衛隊の部隊が派遣されて復興のため学校なんか作っていますが、これは国際平和協力業務ですか?
猪狩先生:そうです。「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」に規定する業務として「紛争によって被害を受けた施設又は設備であって被災民の生活上必要なものの復旧又は整備のための措置」(第3条第3号カ)があります。これについては地震被害への対処は該当しませんが、このカの措置に類するものとして政令で定める業務(同号レ)を実施することとしており、「ハイチ国際平和協力隊の設置等に関する政令」第2条により、「ハイチ地震によって被害を受けた施設又は設備であってその被災者の生活上必要なものの復旧又は整備のための措置」(同条第1号)を実施するとしています。

 学校の復旧・整備はこの一環と考えられます。また、当該活動は、国連安全保障理事会が決議第1908号により、緊急の復旧、復興、安定化に向けた努力を支援するため、国連PKOである国際連合ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)の増員を決定し、これを受けて国連が加盟国に対し新たな要員の派遣を要請したことに応じたものです※。

Mr.フォーク:インド洋の給油活動が途中で中断された後再開されましたが、日本の国内法的な根拠はどのように変わったのですか?
猪狩先生:中断前の給油活動は、テロ対策特措法に基づく活動です。同法は、平成13年9月11日に米国において発生した同時多発テロに関連して措置をとる米軍等に支援を行うことを目的として策定されました。同法に定める活動は、1.協力支援活動(諸外国の軍隊等に対する物品及び役務の提供、便宜の供与その他の措置)、2.捜索救助活動(諸外国の軍隊等の活動に際して行われた戦闘行為によって遭難した戦闘参加者の捜索救助を行う活動)、3.被災民救援活動(テロ攻撃に関連し、国連総会等の決議又は国連等の要請に基づき、被害を受け又は受けるおそれのある住民などの救援のための生活関連物資の輸送、医療等)でした。給油活動は、1.の協力支援活動の一環として実施されました。

 平成19年7月の参議院選挙で与党(自民党・公明党)が大敗し、テロ対策特措法は期限を延長できず同年11月1日失効し、海上自衛隊の活動は中断しました。そこで補給活動継続のため、活動内容を補給活動に限定し、活動領域も海上阻止活動に対する補給活動に必要なものに限定するなどした新たな法案が提出され、「テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法」(補給支援特措法)として衆議院の再議決を経て成立しました。同法に基づく補給支援活動は、テロリスト、武器等の移動を阻止及び抑止するため船舶に対する検査、確認その他の必要な措置をとる活動に係る任務に従事する諸外国の艦船に対する艦船若しくは艦船に搭載するヘリコプターの燃料油の給油又は給水に限定されました。
※ 田村重信他編「日本の防衛法制」内外出版501頁

Mr.フォーク:リビアで在留外国人が国外脱出していますが、このような場合に自衛隊が在留邦人を国内まで輸送することが出来ますか?
猪狩先生:自衛隊法第84条の3に基づき、外国における災害、騒乱その他の緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人について、外務大臣から依頼を受けて、自衛隊の政府専用機等を用いて、邦人を輸送することができます。この場合、防衛大臣と外務大臣の協議で、輸送の安全が確保されていると認められていることが前提となります。リビアについては、上記の要件を満たせば、邦人の輸送を実施することができます。

安田社長:離島や僻地にはよく自衛隊が作った公道がありますが、これは何を根拠として作ったのですか?
猪狩先生:該当するとすれば、自衛隊法第100条に基づき、防衛大臣は、自衛隊の訓練の目的に適合する場合に、国、地方公共団体等の土木工事等の事業の委託を受け、これを実施することができます。防衛大臣の指定する者(方面総監等)は、事業を受託し及び実施することができます。

安田社長:周辺事態に際しての諸活動って聞きなれない言葉ですが、最近出来たのですか?簡単に説明して下さい。
猪狩先生:平成9年9月の「日米防衛協力のための指針」の策定に伴い、同指針の実効性を確保するための法整備として、平成11年5月に「周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」(周辺事態安全確保法)が成立しました。また、翌12年12月に「周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律」(船舶検査活動法)が成立しました。「周辺事態」とは、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等、我が国の周辺地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態をいいます。例えば、日本周辺地域において日本の平和と安全に重要な影響を与えるような実力の行使を伴う紛争が発生する場合、国内の政治体制の混乱等により大量の避難民が発生している状況、特定の国の行動により国際の平和及び安全の維持又は回復のために経済制裁が課されたような状況であって、それらが日本の平和と安全に重要な影響を与える場合等も考えられるとされています※。
 それでは、自衛隊の行動の総論はこれくらいにして、次回からは各論として、行動(任務)の個々についてテーマを決めて勉強していきます。(第2回了)