第9回:『警戒監視活動』
チャンネルNippon編集局


配布資料:報道記事
記事1 「中国海洋調査船、EEZ内を航行 沖縄・尖閣諸島」(23.11.15)
日本の排他的経済水域を航行する中国海洋調査船「東方紅2号」=15日午後1時20分ごろ、沖縄・尖閣諸島大正島の北北西約48キロ(第11管区海上保安本部提供)

 15日午後1時20分ごろ、沖縄県・尖閣諸島の大正島北北西約48キロの排他的経済水域(EEZ)で、中国の海洋調査船「東方紅2号」が、事前通報のない海域で船尾からワイヤを引きながら航行しているのを海上保安庁の航空機が発見した。

 第11管区海上保安部(那覇)によると、無線で警告したところ、調査船から「調査を中止する」と回答があり、約3時間後にワイヤを撤収したという。

 尖閣諸島付近では9月から、通報海域外でワイヤを垂らし航行する中国の海洋調査船が相次いで確認されており、今回で7回目。(産経新聞)



保クン:先生、最近よくニュースで出ますが、排他的経済水域(EEZ)って何ですか?
猪狩先生:国際法上の定義は、領海に接続する水域であって、国連海洋法条約第5部に  定める特別の法制度によるものとされています。(海洋法条約第55条)
領海の外側に基線から200海里までの範囲で、沿岸国が、海底の上部水域、海底及びその下の天然資源(生物資源、非生物資源)の探査・開発・保存・管理のために主権的権利、及び経済的な目的で行われる探査・開発のためのその他の活動(海水、海流・風力からのエネルギー生産等)に関する主権的権利を行使します。
 また、沿岸国は、人工島・施設・構築物の設置及び利用に関する管轄権、海洋環境保護・保全に関する管轄権及び海洋の科学的調査を規制、許可、実施する権利を持ちます。
 なお、主権的権利、管轄権という用語について、主権が領域内のすべての人・物を統治・支配する権力であるのに対し、主権的権利と管轄権は、同水域に係る特定の事項について国内法を適用、執行する権利(国内法を制定し、違反があれば取締る)という意味で実質的な違いは有りません。


保クン:EEZで何ができて何ができないの?
猪狩先生:外国船舶、航空機等には、航行及び上空飛行の自由、海底電線及びパイプライン敷設の自由、これらの自由に関連し海洋法条約の他の規定と両立する国際的に適法な海洋利用の自由(艦隊運動、情報収集、軍事目的の調査、演習、兵器実験等)があります。
 一方、沿岸国の主権的権利を侵害する事項、例えば資源の探査はできません。外国船は沿岸国の許可を得て漁獲はできますが、船舶等の所属する国と沿岸国との漁業協定に定める条件に違反した漁獲はできません。
 また、6ヶ月前に計画を提出し許可を得た上でなければ科学調査を行うことはできません。


保クン:違反をすればどうなるの?罰則規定なんかあるのですか?
猪狩先生:わが国の場合、取締りのための国内法を整備している事項に関しては罰則があります。
 例えば、認められた漁獲の操業条件に違反した場合、当該漁船は拿捕されます。ただし担保金を払えば釈放され、事後罰金を科されます。
 また、許可なく海底の鉱物資源の掘削を行った場合、鉱業法違反で罰則があります。


さくら女史:「事前通報のない海域で船尾からワイヤを引きながら航行している」のは違反ですか?
猪狩先生:日中間で合意した海洋の科学的調査の事前通報制度について、事前通報した海域のみで調査活動を行うとの合意に違反しています。


さくら女史:日本の巡視船が中国船に警告したのはどのような根拠によるものなのですか?
猪狩先生:わが国の排他的経済水域における前に述べた権利を侵害する場合、取締りの国内法を整備していない場合でも、わが国は中止を要求し応じない場合は退去を要求する権利があります。東シナ海では境界は未確定ですが、日中間で合意した海洋の科学的調査の事前通報制度について、事前通報した海域のみで調査活動を行うとの合意に違反しているので、わが国は中止を要求し応じない場合退去を要求する権利があります。
 国内法上は海上保安庁法第2条に基づく一般的な海上における秩序維持のための活動です。


安田社長:この中国の海洋調査船は軍艦ですか、商船ですか?
猪狩先生:国家海洋局の所属であれば軍艦でも商船でもありません。非商業的目的のために運航する政府船舶です。


安田社長:軍艦と商船で国際法上の権限、責任で差があるのですか?
猪狩先生:平時についてのみですが、商船は外国領海では沿岸国の警察権行使の対象となります。
 軍艦は主権免除を有するので、いずれの水域においても外国の警察権行使の対象となりません。
 軍艦は公海における海上警察権(海賊取締り等)を行使できます。商船は海賊からの襲撃に対し自衛することはできますが、取締りを行うことはできません。


安田社長:海上自衛隊の自衛艦は軍艦ですか?また、海上保安庁の巡視船は?
猪狩先生:国際法上の軍艦として取り扱われます。海上保安庁巡視船は非商業的目的のために運航する政府船舶です。


カオルさん:中国の調査船はなぜこのように頻繁に尖閣諸島周辺に来るのですか?
猪狩先生:中国は尖閣諸島に領有権を主張しており、プレゼンスを示すこと、わが国が対応しなければ、そこで活動したとの実績を重ねて、既成事実化を図り、対外的にその主張の正当性を示すことを意図していると推定されています。


カオルさん:海洋調査船はどんなことをするのですか?
猪狩先生:水温、塩分、海潮流、生物、海底地形、地質、地磁気、海水中の物質等の調査です。


記事2 「南西諸島沖に中国艦10隻」(22.4.15)
 
浮上航行する中国海軍の「キロ」級潜水艦(上)と、護衛艦に接近した中国海軍の艦載ヘリ(統幕提供)

4月10日午後8時ごろ、沖縄本島の西南西約140キロの南西諸島を東シナ海から太平洋に向けて南東進する中国海軍の「ソブレメンヌイ」級ミサイル駆逐艦など10隻の艦艇群を海自6護隊(佐世保)の護衛艦「ちょうかい」と5護隊(舞鶴)の護衛艦「すずなみ」が確認した。
  10隻は「ソブレメンヌイ」級ミサイル駆逐艦(満載排水量7940トン)2、「ジャンウェイⅡ」級フリゲート(同2250トン)1、「ジャンウェイⅠ」級フリゲート(同2250トン)2、「キロ」級潜水艦(浮上時2325トン)2、「フーチン」級補給艦(満載2万1750トン)1、「ダーラン」級潜水艦救難艦(同4200トン)1、「トゥージョン」級艦隊航洋曳船(同3600トン)1隻。
  統幕によると、「ソブレメンヌイ」級など計5隻は4月7日から同9日まで、東シナ海中部海域で艦載ヘリの飛行訓練や、11日には沖縄南方海域で洋上補給を行ったことが確認され、同8日には中国艦艇から発艦したとみられる艦載ヘリが警戒監視中の護衛艦「すずなみ」に接近、距離約90メートル、高度約30メートルを近接飛行している。

記事3「海幕長、中国ヘリの近接飛行に懸念表明」
中国艦艇の動向について13日の定例記者会見で赤星海幕長は「東シナ海、わが国周辺海域における中国海軍の動向は注意深く見守っていく必要がある。ここ数年、装備を近代化・拡充しており、運用においても技量を上げて、外洋展開の力を付けつつあると分析している。中国のヘリの近接飛行については、船の安全航行にも影響する近い距離と認識している」と述べた。(朝雲新聞)

Mr.フォーク:こういった活動を海上自衛隊の艦艇や哨戒機が監視することは国際的に問題にならないのですか。また、自衛隊は(国内法的には)何を根拠にこのような活動ができるのですか?
猪狩先生:慣習国際法で、情報収集は国際水域(領海外の水域)において認められる自由の一つであり、適切に実施すれば問題はありません。国内法の根拠は防衛省設置法第4条(所掌事務)18号の「所掌事務に必要な調査及び研究」です。


Mr.フォーク:このような異常接近の場合、現場あるいは外交ルートで相手方に抗議しているのですか。
猪狩先生:現場及び外交ルートで相手方に抗議し、再発防止を要求しています。


Mr.フォーク:一般に軍艦や軍用機について監視される側と監視する側が異常接近するような場合、国際的な安全上のルールや取り決めはあるのですか?
猪狩先生:米露、日露のように個別に海上事故防止協定(海上の上空も対象)を結んでいる場合もあります。個別の協定がない場合、国際慣習となりますが、相手に危険となる又は相手が危険を認識する距離以内に近づかないことが求められます。


Mr.フォーク:軍艦等が監視行動中に(相互)に威嚇行動など出来るのですか?また、そのような事例はありますか?その際威嚇された側は国際法上どのような対応が可能ですか?
猪狩先生:国連憲章第2条4項で、国際関係において、武力による威嚇は禁止されています。
 威嚇された側は、現場で中止を要求し抗議するとともに、外交ルートで抗議することになります。また、国際の平和と安全の維持を危うくするおそれのあるものは国連安全保障理事会に注意を喚起することになります。


記事4「中国艦艇6隻、宮古島沖の公海を通過 防衛省が動向監視」(23.11.23)
防衛省は23日、中国海軍の艦艇計6隻が22~23日、沖縄・宮古島の北東約100キロの公海を相次いで通過したと発表した。太平洋上での訓練のためとみられ、防衛省が動向を監視している。22日午前11時ごろ、中国海軍の情報収集艦1隻が東シナ海から太平洋に向けて南東に進んでいるのを海上自衛隊のP3C哨戒機が確認。その後、22日午後10時ごろに中国海軍の補給艦1隻、23日午前1時ごろには中国海軍のミサイル駆逐艦など4隻が南東に進んでいるのを海自の護衛艦が見つけた。 今年6月には、中国海軍の艦艇11隻がほぼ同じ海域を通過。太平洋上で射撃訓練や艦載ヘリの夜間発着訓練を実施している。 (朝日新聞)

安田社長:中国の軍艦が太平洋で射撃訓練や艦載ヘリの夜間発着訓練をすることは国際法上問題にはならないのですか?
猪狩先生:公海であれば公海を利用する他国の権利に、EEZであれば沿岸国の権利及びEEZを適法に利用する第三国の権利に妥当な考慮を払った上で実施すれば問題はありません。


安田社長:そのような訓練をするときはどこかに届け出たり、一般の商船向けに公表するといった義務はないのですか?
猪狩先生:射撃訓練など危険を伴うものは、航行警報を出すなどして周知する必要があります。


安田社長:たまたま訓練海域を航行していた外国商船が被害を受けた場合、抗議や損害賠償請求など出来ますか?
猪狩先生:被害発生について危険防止措置が不十分な場合、注意義務違反があれば、損害賠償請求の対象になる場合があります。事例がないので明確なことは言えません。
(了)