第11回:『弾道ミサイル等に対する破壊措置』
チャンネルNippon編集局
報道資料1  防衛相が「破壊措置命令」、北朝鮮ミサイルに備え(朝日新聞2012.3.30)

 野田政権は30日午前、安全保障会議(議長・野田佳彦首相)を開き、北朝鮮が発射予告した長距離弾道ミサイルが日本の領土・領海に落下する場合に備え、自衛隊法に基づく「弾道ミサイル破壊措置命令」を発令することを決めた。これを受け、田中直紀防衛相は自衛隊に対して破壊措置命令を出した。
 田中氏は発令後、記者団に「万全の備えをしたい。日米韓で緊密に連携して対処したい」と語った。命令期間は30日から4月16日まで。命令によると、「北朝鮮から発射された弾道ミサイルなどで、我が国の弾道ミサイル防衛(BMD)システムで日本の領域に落下すると確認されたもの」を迎撃するとしている。
 北朝鮮は今月16日、4月12~16日に「人工衛星」を搭載したロケットを打ち上げると発表。経路は沖縄県先島諸島付近の上空を通過し、フィリピン東方沖に落下すると見られる。野田政権は、故障などで日本の領土や領海に落下する可能性があると判断し、田中氏が27日に自衛隊に準備命令を出し、地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)などを配備する関係自治体と調整を進めていた。  防衛省は30日の破壊措置命令を踏まえ、イージス艦を沖縄周辺の東シナ海に2隻、日本海に1隻派遣。PAC3は沖縄本島(那覇市、南城市)と石垣、宮古両島に配備するほか、首都防衛の観点から首都圏に3カ所(朝霞、市谷、習志野)展開。陸自の救援部隊も石垣、宮古両島と与那国島に派遣する。


報道資料2  「Jアラート」で即時通報へ 発射確認後1、2秒で自治体に(産経ニュース:2012.3.26)

 北朝鮮による長距離弾道ミサイル発射実験とみられる「衛星」打ち上げ予告を受け、政府は25日、発射情報を自治体に速報する「Jアラート」(全国瞬時警報システム)の活用する方針を固めた。有事法制に基づく「国民保護」での運用は初。発射確認から1、2秒で情報を伝えることができ、前回の平成21年の弾道ミサイル発射時より国民への情報伝達は大幅に短縮される。
 21年4月に北朝鮮が弾道ミサイルを発射した際、政府は緊急情報ネットワークシステム「Em-Net(エムネット)」で発射情報を伝えた。今回はJアラートとエムネットの2段構えでの対応も検討する。
 Jアラートは、内閣官房が緊急情報を発信すると人工衛星を経由して1、2秒で自治体の専用端末に届く。端末には防災無線やコミュニティーFM放送が接続されており、音声が自動的に流れるシステムだ。エムネットより優れているのは「速報性」。内閣官房は発射情報を約1分後には確認できるが、Jアラートを使えばその数秒後には全国の自治体に情報が届く。これに対し、エムネットを利用した前回は発射情報が自治体に届くまで3分ほどを要した。


報道資料3  頼みの「Jアラート」鳴らず 「情報あったら教えてください」 混乱の沖縄・宮古島(産経ニュース2012.4.13)

 北朝鮮が人工衛星と称する長距離弾道ミサイルを発射した13日午前、ミサイルが上空付近を通過し危険物が落下する可能性があった沖縄県宮古島市で一気に緊張が走った。「Jアラートは鳴ってないですよ」「情報あったら教えてください」。情報が錯綜(さくそう)する中、市職員や連絡要員の自衛官が慌ただしく情報収集に追われた。
 宮古島市役所が突然慌ただしくなったのは、午前7時45分ごろ。「Jアラートが鳴るかもしれない」「官邸が慌ただしいという情報があるようだ」。連絡要員の自衛官や政府の職員が慌ただしく行き交う。Jアラートの端末と防災無線の置かれた部屋に下地敏彦市長も入り、職員は防災無線の前で待機した。しかしその後「官邸の動きがなくなったようだ」との情報が入り、いったんは「誤情報」との雰囲気に。ところがテレビのニュースが、「北朝鮮がミサイルを発射したと海外メディアが報道」と流し始めると、再び空気が緊迫。自衛官は携帯電話で「Jアラートは鳴ってないんですよ」「テレビのニュース見てる?」と関係各所と連絡を取り合ったが、「(Jアラートが)鳴らないと動きようがない」とテレビのニュースを食い入るように見つめた。一方で、午前8時過ぎに政府の緊急情報ネットワークシステム「Em-Net(エムネット)」から「発射は確認していない」とのFAXが流れるなど混乱は続いた。


報道資料4  発射1分20秒後に爆発か エンジン欠陥か燃料漏れか(産経ニュース2012.4.15)

 北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射失敗で、韓国大手紙、朝鮮日報系のテレビ朝鮮は14日、ミサイルの最初の爆発が韓国国防省の13日の発表より早い、発射1分20秒後に高度約50キロ付近で起きたとみられることが韓国軍の軌道分析で分かったと報じた。これにより、第1段エンジンの欠陥か燃料漏れが爆発原因である可能性が高まったとしている。韓国政府関係者の話としている。
 韓国国防省は13日、ミサイルは発射2分15秒後に高度70・5キロ付近を上昇中に二つに分離し、この時最初の爆発が起きた可能性があると明らかにしていた。テレビ朝鮮によると、同省発表の最初の分離時刻より55秒前に、ミサイルと北朝鮮の管制所との交信状態が悪くなり、軌道の維持が難しくなっていたことが韓国軍の分析で判明。米韓両軍はこの時点で最初の爆発が起きたと暫定的に結論付けているという。(共同)



カオルさん:一般に自衛隊法に基づく「弾道ミサイル破壊措置命令」とはどのようなものですか?
猪狩先生:弾道ミサイルへの対処については、既に武力攻撃事態が認定され、防衛出動が下令されている場合にあっては、その枠組みで実施することとなります。弾道ミサイル等に対する破壊措置は、防衛出動が下令されていない状況下で、我が国に弾道ミサイルが飛来した場合に、シビリアン・コントロールを確保しつつ、迅速かつ適切な対処を行なうことを可能とすることを目的として規定されたものです。
 対象は、弾道ミサイルその他その落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であって航空機以外のもの(弾道ミサイル等)とされ、人工衛星の打ち上げが失敗し地上に落下する場合も該当します。
 同命令が発令される事態及び要件は、次のとおりです。
弾道ミサイル等が我が国に飛来するおそれがあり、その落下による我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため必要があると認めるとき(自衛隊法第82条の2第1項)。
態が急変し、内閣総理大臣の承認を得るいとまがなく我が国に向けて弾道ミサイル等が飛来する緊急の場合における我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため必要な場合(自衛隊法第82条の2第1項)



安田社長:今回出された命令の内容について教えて下さい。
猪狩先生:以下のとおりです。  「自衛隊は日米間で連携を図りつつ、自衛隊法第82条の3第3項の規定により、我が国に弾道ミサイルが飛来する場合における人命及び財産への被害を防止するため、我が国領域に落下することが確認された弾道ミサイル等に対する破壊措置等の必要な措置を実施する。

○命令の期間:4月16日まで
○破壊措置の対象:北朝鮮から発射されたと考えられる弾道ミサイル等で、我が国の弾道ミサイル防衛システムにより我が国領域に落下することが確認されたもの
○破壊方法:海上配備型迎撃ミサイル(SM3)または地上配備型迎撃ミサイル(PAC3)を発射し、我が国領域又は周辺の公海の上空で破壊
○行動範囲:SM3搭載護衛艦は、日本海及び東シナ海において、首都圏とミサイル予想飛翔経路下周辺を含む領域を防護できる位置
PAC3部隊は、陸上自衛隊朝霞訓練場、習志野演習場、航空自衛隊市谷基地、習志野分屯基地、那覇基地、知念分屯基地、宮古島、石垣島
○航空総隊司令官のもとに弾道ミサイル防衛(BMD)統合任務部隊を編成する。」

 以上が命令の内容ですが、ここでいう我が国の弾道ミサイルシステムについては、補講として改めて実施したいと思います。


安田社長:防衛出動とか海上における警備行動とどのように異なるのですか。
猪狩先生:自衛隊法第76条に基づく防衛出動は、我が国に対する武力攻撃が発生した場合においては、敵国の軍艦及び軍用機その他我が国に対する武力攻撃に貢献する一定の目標に対する武力行使が可能となります。武力攻撃として発射される弾道ミサイルも対象となります。
 これに対し自衛隊法第82条の2に基づく弾道ミサイル等破壊措置は前に挙げた弾道ミサイル等のみが破壊の対象です。海上における警備行動は、海上における人命財産の保護及び治安の維持のため特別の必要がある場合に命じられ、主として、我が国の領水、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚上部水域ならびに国際水域(領海の外側の水域を総称)で、国際法の範囲内で、それぞれの水域で適用される我が国の法令に基づき、我が国及び外国の商船に対し警察権を行使します。
 また、領水内で無害でない通航又は法令違反の行為を行う外国軍艦等に対し当該行為の中止及び退去の要求等を行います。今回の命令が弾道弾等の破壊のみであることに比べ、海上における警備行動は多岐にわたります。


保クン:イージス艦は領海、領空外において弾道ミサイルと確定しない物体を破壊(撃墜)して国際法上問題にならないのですか。
猪狩先生:我が国の領域に落下し人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体を破壊するものであり、当然の権利であって、むしろそのような結果を起こした発射国側に国際責任が生じます。また、破壊措置は我が国領域又は国際水域の上空で行うものであり他国の主権を侵害することにもなりません。


カオルさん:PAC-3は全て自衛隊の基地内に配備されるのですか。そうではない場合、基地外に配備したり、迎撃ミサイルを発射する事は法的に問題にならないのですか。
猪狩先生:自衛隊法第86条で、弾道ミサイル破壊措置を命じられた部隊が行動する場合、当該部隊は関係都道府県知事、市町村長等と相互に緊密に連絡し、協力するものとされています。
 また、自衛隊法施行令第104条の2で、法82条の2第3項の規定による場合は、内閣総理大臣の承認を得て作成した緊急対処要領において、当該部隊の行動範囲、関係行政機関との協力に関する事項を定めており、その趣旨で関係自治体と緊密な連絡及び協力のもとで行っています。


安田社長:今回の政府の措置と国民保護法の関係についてはどのようになっているのですか。
猪狩先生:国民保護法は、武力攻撃事態において、武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護する等のため、国民の避難に関する措置、武力攻撃災害(空襲による火災等)への対処を定めたものです。これは緊急対処事態(武力攻撃の手段に準じる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生又は発生する明白な危険が切迫する事態)にも準用されます。したがって破壊措置命令とは直接の関係はありません。


カオルさん:今回の北朝鮮の「衛星打ち上げ」が何故国連安保理決議に違反するのですか。
猪狩先生:政府の見解では北朝鮮に弾道ミサイル技術を用いたいかなる発射も実施しないことを要求するとした国連安保理決議1718,1874号に違反するとされています。(玄葉外務大臣記者会見24.3.16)


保クン:「Jアラート」(全国瞬時警報システム)とか、「エムネット」(緊急情報ネットワークシステム)とは。また、その法的根拠は何ですか。
猪狩先生:全国瞬時警報システム(Jアラート)は津波警報、緊急地震速報、弾道ミサイル情報等といった対処に時間的余裕のない事態に関する緊急情報を、消防庁から人工衛星を用いて送信し、市区町村の同報系防災行政無線を自動的に起動させることにより、住民に瞬時に伝達するシステムです。
 また、緊急情報ネットワークシステム(通称:Em-Net(エムネット))は内閣官房が整備を進めている、行政専用回線を利用した国(総理大臣官邸)と地方公共団体間で緊急情報を双方向通信するためのシステムです。提供されているのは日本全国の地方公共団体(一部では未導入)、指定行政機関及び指定公共機関(公共交通機関、報道機関等)で一般向けへの提供は行われていません。
 なお、消防庁が作成した全国瞬時警報システム業務規程(平成22年12月15日制定)の第4条では、消防庁は、人口衛星及び地上回線を経由して情報を送信する事項の一つに弾道ミサイル情報を緊急地震速報等とともに挙げています。また第9条登録済情報受信機関である地方公共団体は同報系防災行政無線等の自動起動機を用いた起動を行うものとしています。同規程は消防庁国民保護・国民保護運用課のホームページで閲覧可能です。


安田社長:今回の「Jアラート」とか、「弾道ミサイル破壊措置」とか断片的な情報が突然入ってきて一般国民は混乱しています。そもそも弾道ミサイルにより攻撃されると言った、我が国有事の国とか自衛隊の体制はどうなっているのですか。
猪狩先生:武力攻撃事態以外での弾道ミサイルについては前に述べたとおりです。我が国有事については、武力攻撃が発生又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められる場合は国会の承認を得て内閣総理大臣が防衛出動を命じることが出来ます。また特に緊急の必要がある場合は防衛出動を命じた後に直ちに国会の承認を求めます。
 武力攻撃としての弾道ミサイル攻撃に対し、上記手続きで防衛出動を発令できる時間的余裕がある場合はそれによります。


Mr.フォーク:今回の事案で米軍との共同対処については法制上どのような位置づけになるのでしょうか。
猪狩先生:日米安保体制のもと、日米両国が平素から、軍事情報も含め相互に必要な情報交換を行うことは当然のことであって、何ら問題はありません。(11.3.18 日米防衛協力指針特別 野呂田防衛庁長官答弁)(了)