日米共同訓練(海上自衛隊)

日米共同訓練については、海上自衛隊が最も長い歴史を持っています。
昭和53年に「日米防衛協力に関する指針」、いわゆるガイドラインが日米の間で締結されるまでは日米共同訓練と言えば海上自衛隊と米海軍が実施してきた掃海特別訓練と対潜特別訓練だけでした。

最初に実施されたのは掃海特別訓練で、昭和30年に始められ、平成22年4月1日現在、86回を数えます。
掃海特別訓練が最も早く始められたのは戦後日本の周辺の海の状況が深く関わっていると考えられます。
大東亜戦争中、米国は対日飢餓作戦の一環として日本の港湾や内航航路帯に約1万1千個の機雷を敷設しました。このため、日本の船の運航はほとんど途絶してしまいました。

戦争が終わり、日本を復興させるためには機雷を取り除き、航路の安全を確保する必要がありました。
海上自衛隊(当時は海上警備隊)は昭和27年に海上保安庁から「ちよづる」型掃海船、「うきしま」型掃海船などの所管替えを受け、航路啓開の業務を引き継ぎました。
昭和30年、海上自衛隊は日米艦艇貸与協定に基づき相次いで掃海艇を受領し、4月25日には佐世保港外で初の日米共同(掃海)訓練を実施しています。
昭和60年に93.3パーセントの機雷を除去し、残りは海底に埋没したり、経年変化で船舶に危害を及ぼすことはないとの判断から航路啓開業務は同年、終了しました。

このように掃海特別訓練をはじめ、日頃の訓練の積み重ねで培われた掃海の技量によって我が国周辺の航路の安全が確保されるようになったのです。
また、平成2年に発生した湾岸戦争ではイランがペルシャ湾に約1,200個の機雷を敷設しました。

ペルシャ湾における航行船舶の安全を確保するため、平成3年、自衛隊創設以来初めての海外における実任務として掃海部隊がペルシャ湾に派遣されました。掃海部隊は188日に及び過酷な環境の中で任務を実施し、34個の機雷を処分しましたが、その中にはもっとも困難な海域での掃海も含まれています。
このように海上自衛隊掃海部隊の実力は各国海軍の中で高く評価されてきました。これは掃海部隊の常日頃の修練の賜物ですが、掃海特別訓練も実力の向上に預かって大きかったと言って良いのではないでしょうか。


(『防衛白書』昭和63年度版から)

対潜特別訓練は、昭和32年に始められ、平成22年4月1日現在で118回実施されています。
その背景には、大東亜戦争の苦い経験があるように思われます。
大東亜戦争中に失われた日本の商船は810万トンに上りますが、その約60パーセントにあたる490万トンが米国の潜水艦によって沈められたのです。
商船が失われることにより、石油、鉄鉱石、パルプなどの重要な資源の90パーセント以上が日本に到着することはなく、砂糖、生ゴムはほとんど零という状態に追い込まれ、産業、生活に甚大な影響が及びました。

このため、戦後の日本を復興させ、発展させるためには海洋の自由な利用が不可欠であることから、再び日本の海上輸送が潜水艦によって脅威を受けることのないよう海上自衛隊は潜水艦に対する作戦能力を向上、維持させることが必要でした。
このためには米海軍からできるだけ多くのことを学び、また訓練の実施にあたっては支援を得る必要がありました。

リムパックはRim of the Pacific Exerciseの略であるRIMPACからきています。
Rim of the Pacific Exerciseは「環太平洋共同訓練」と訳されますが、この略語のRIMPACからリムパックと呼ばれることが多いようです。
リムパックは、1971年にアメリカ海軍をホストとして、アメリカ、カナダ、オーストラリア及びニュージーランドの4カ国が参加をして始まり、2年ごとに行われてきました。

79年の実施の後、翌80年に引き続いて実施され、このときから日本も参加するようになり、ヘリコプター搭載護衛艦「ひえい」とミサイル搭載護衛艦「あまつかぜ」、対潜哨戒機P2J8機が参加しています。
86年にはいわゆる88艦隊が参加し、また、潜水艦も加わるようになりました。

90年から韓国が参加するなど参加国が次第に増加し、2010年のリムパックでは当初からの参加国であるアメリカ、カナダ、オーストラリア、80年から参加の日本に加え、韓国、チリ、ペルー、コロンビア、シンガポール、インドネシア、マレーシア、タイ、フランス、オランダが参加しています。
今年のリムパック参加艦艇はカナダ海軍100周年記念観艦式参加と別の側面があるので、特に多いのではないかと思われますが、その前の08年でも8カ国から参加しています。

このため、元々参加国海軍の共同作戦能力向上を目的としたリムパックも参加国の増加に伴う、やや儀礼的な親善の場となってきているとの指摘もあります。
海上自衛隊は最初の参加から15回にわたって参加してきており、今年はミサイル護衛艦「あたご」、護衛艦「あけぼの」、潜水艦「もちしお」及びP3C3機が参加しています。


海上自衛隊演習は海上自衛隊が年に1回行うもっとも規模の大きな演習で、1年間の訓練の総決算と言っても良いかもしれません。
日米共同作戦能力向上のため、昭和58年から海上自衛隊演習に米海軍が参加するようになり、協同訓練の一つとなりました。


平成21年度の海上自衛隊演習の一コマ
(海上自衛隊提供)

海上自衛隊演習で米海軍の補給艦に近接する護衛艦(海上自衛隊提供)

新しく始まった共同訓練を紹介しておきたいと思います。
指揮所演習は、日米共同作戦を行ううえで欠くことのできない幕僚業務の能力を向上させるために昭和63年から始められ、アメリカのニューポートにある海軍大学校で日本からは海上幕僚監部などから、また米海軍からは在日米海軍司令部、第7艦隊から人員が参加しています。これまでに22回が行われてきました。

衛生特別訓練は、米海軍横須賀基地内において、海上自衛隊及び在日米軍双方に多数の負傷者が発生した場合に日米の関係部隊がどのように連携するのかその要領と負傷者をどのように収容し、治療するかの能力を向上させることを目的として平成8年から行われ、これまでに13回が行われてきました。
訓練は米海軍横須賀基地で行われ、海上自衛隊からは横須賀地方隊などから隊員約170名、米海軍からは米海軍横須賀病院などから約70名が参加しています。

基地警備特別訓練は、平成14年から実施されるようになり、平常時に海上自衛隊が共同使用している区域内に生起した不法な行為等に対する対処要領及び米海軍との間の情報交換等の連携要領を演練する目的で、米海軍横須賀基地及び横須賀港内で実施されています。
参加部隊は海上自衛隊からは横須賀地方総監部等からと米海軍からは横須賀基地憲兵隊などから参加しています。
基地警備特別訓練は、これまでに8回が行われました。
この訓練は、2000年10月にイエメンのアデン港でアメリカ駆逐艦「コール」が国際テロ組織アルカイダによる自爆攻撃を受け、米兵17人が死亡した事件が背景にあるように思われます。


LCAC(海上自衛隊提供)

共同訓練の一コマ(海上自衛隊提供)

共同訓練に一コマ(海上自衛隊提供)

共同訓練の一コマ(海上自衛隊提供)

輸送特別訓練は、日米の輸送部隊における連携要領を演練し、海上輸送に関する技量の向上を図ることを目的として、海上自衛隊からはLCAC(輸送艦に搭載されているホバークラフトのことで、海上自衛隊では輸送用エア・クッション艇と呼ばれています。

Landing Craft Air Cushionの略です)2基を搭載する「おおすみ」型輸送艦をもって編成されている第1輸送隊渡米海軍の揚陸艦が参加し、平成15年から始められ、相模湾、佐世保港あるいは九州の西側の海域でこれまでに5回が行われています。

訓練の内容は。LCACの運航訓練、戦術運動(艦艇が洋上において様々に陣形を変化させるための運動を言います)、艦艇等相互研修などです。